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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
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青空教室

宴会を終えて、戦いの疲れを思い出したのか、倒れこむように眠りについた。

翌日、強烈な筋肉痛を感じながら目を覚ますと、いつものように強烈な直射日光が……当たらなかった。

現世界に置いてきぼりになっていた屋根のせいで、こちらの世界に来て毎日、不快な日光に叩き起こされていた。

それが今日は、影に隠れて何も照らしてくることはない。

「そうか…こいつらが」

昨日の宴会の喧騒で全く気づかなかったが、俺とルース以外の4人で、屋根を完成させてくれていたのだろう。

出来はまだ詰めが甘い感じではあるが、建築技術の発達していないこの世界では、よく頑張った方だろう。

「さあ、今日もやるか」

グーンと伸びをしながら、一言ボソッと呟く。

外に出て火の確認をした後、朝食の準備に取り掛かる。

昨日捕獲したジャイアントボアの肉は、まだまだ大量に残ってはいるが、野菜や果物などの生鮮食品は、底をつきそうになっている。

クーラーボックスに入れていた氷も、ほとんど溶けてしまっている。

冷蔵庫の代わりを成す物は、ほとんど無くなってしまった。

「冷やせる物は、やっぱり魔法で手にするしかないか」

唇を噛みながら、独り言を言う。

成長期である彼らには、栄養のバランスが取れた食事を摂ってもらいたい。

そのためにも、菜園に早く役に立ってもらわなくてはいけない。

「トントン、トントン」

軽快なリズムを刻みながら、包丁で残りの野菜を刻み始める。

今日のメニューは、簡易的なスープだ。猪の骨を煮出し、出てきた出汁を使ったスープだ。

「うーん、ガクト、おはよう」

眠気を纏いながら、ヴィーヌが包丁の音に気づいて起きてきた。

「おはよう」

微笑を浮かべて、首をヴィーヌの方に振り向きながら、答える。

「あら、美味しそうね」

鍋を覗き込みながら、ヴィーヌが答えた。

「そうだろう、猪の骨を煮出して作ったんだ」

「へぇー。骨から」

「あっ、そうだ。うちの屋根直してくれて、ありがとな」

「ううん。いつも色々やってるくれるから、気にしないで。私達なりのお礼だから」

二人の会話に反応したのか、ロイ達が続々と目を覚まし始める。

さあ、今日も騒がしい一日の始まりだ。




午前中の間、畑の管理などのやるべきことを一通り済まし、午後になった今は、全員で家の外に出ていた。

と言っても、家の扉を出て数十歩程の、家の裏なのだが。

「よーし、今から俺はお前達に授業を行う」

高らかに宣言したのだが、理解が追いついていない彼らはポカーンとしている。

俺だけが一人で張り切っている感じで、かなり恥ずかしいのだが。

「ガクト、『授業』って何?」

ヴィーヌが質問してくる。

「うーん、指導する側の人が、生徒に向かって、物事を教えるってことだ」

ルースも尋ねてくる。

「『生徒』とは?」

「教えられる側の人間のことだ」

「で、何で今やらなくちゃいけないの?」

パトラが目に見えて退屈そうに、そう答えてきた。

「これからのためだ。お前らが最低限知っておいてくれないと困ることがいっぱいある。それが理解できるまでは、農作業とかの間を縫ってやっていくからな」

パトラとティカは特に嫌がっている感じであるが、他の皆は納得している様子だ。

「これはなあ、お前達のためでもあるんだぞ」

「何のため?」

ティカが聞いてくる。

「お前らの魔法は、知識として理解していることでできる。だから俺がお前らに教えて、理解すればするほど、魔法の幅が広がっていく。これはお前らにとっても重要なことだろ」

「たっ、確かに」

「そうなら、仕方ないかもね」

正論に感化されたのか、彼女達も渋々納得したようだ。

5人を地べたに置いたシートに座らせ、簡易的なテーブルを設置して待機させる。

「それでは改めて授業を始める。起立!」

もちろん、誰も立ち上がらない。

「ほら、立って」

皆に指示して、立たせる。

「礼!」

もちろん、誰も頭を下げない。

「頭を下げて」

皆に指示して、頭を下げさせる。

「着席!」

もちろん、誰も座らない。

「ほら、元の位置に座って」

皆に指示して、座らせる。

いきなり、出鼻をくじかれた。最初からグダグダだ。

「ガクト!」

「授業中は、先生と呼ぶこと」

質問してきたヴィーヌに注意を入れる。

「せ、先生、さっきの何?」

「授業を行う前の礼儀だ。神聖なものだから、しっかりとやれよ」

「は、はあ」

溜息と疑問が重なり合いながら、最初の授業が始まった。

それらを見守る太陽は、青空の中で煌々と輝きを放っていた。

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