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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
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魔物調理と大宴会

ジャイアントボアとの激闘を繰り広げ、見事勝利を収めた俺達は、30分程休憩した後、帰路についていた。

「ルース、大丈夫なのか?」

そう尋ねるのには訳があった。

魔法を使う予定はなかったはずなのに、結果的に使わせた挙句、ボロボロの体で猪の巨躯を持ち上げさせていたからだ。

「ああ、大丈夫だ。このくらい、持っているうちにも入らない」

そう言う、ルースの顔は本当にいつもと変わらない様子だ。

自分の体の数倍はある猪を肩に携え、引きずりながら、俺と話している。

全くとんでもない身体能力の持ち主だ。

「ルース達は、この魔物をどうやって食ってるんだ?」

ふと疑問に思ったことを尋ねる。

「5人で丸かぶりだな」

「こいつ生で食えんのか?」

「雷で十分黒焦げになってるから、火は入ってると思うぞ」

「それ、もう食い物じゃない」

彼らのスケールのでかさとあまりにも酷い結末に、呆れて物も言えない。

「ってことは、お前らこいつを下ろしたことないんだな?」

「下ろすとは、なんだ?」

「生物を開いて、食べやすいように切り分けるってことだ」

「ああ、そんなことはやったことない」

「しょうがないか。一朝一夕でできるとは思えないが、やってみるだけやってみるか」

そんな話をしているうちに、俺達は集落に戻っていた。

集落を照らす月の光は、夜の闇が一層際立たせていた。




「ただいまー」

「帰宅したぞ」

すでに今日の作業を終えたヴィーヌ達が家でくつろいでいた。

俺らの声に反応して、玄関まで迎えに来る。

「よく帰ったね」

ヴィーヌが暖かな声で労いをいれてくれる。

「ガクト、腹減った」

のんきにそう言ってきたのは、赤髪のティカだ。

パトラはといえば、一瞬の目配せをすると、ソファーの上で伸びをしている。

全ての立ち居振る舞いが、何かいやらしい。

「ガン、ガン」

「おい。やめろ、やめろ」

振り向くと、ルースがどでかい猪を無理やり室内に持ち込もうとしている。

「だめ、なのか?」

「当たり前だ。家を壊す気か」

「ふふふ、何か楽しそうね」

俺達の茶番を笑顔を浮かべて、見届けるヴィーヌの姿に少しときめきそうになる。

「ガクト、早く食べたい」

ティカが急かしてくる。

「分かった、分かったから」

その場で流れている雰囲気は、まさに家族のそれであった。




家の外でロープを使い、猪を吊るす。

自宅にあった包丁で、吊るしたジャイアントボアに切れ目を入れていく。

俺の調理姿が気になったのか、5人共外に来て、俺を見守っている。

あんまり注目されると、緊張してしまうのだが。

「プシュー」

先程、傷を与えていた首に刃を入れると、血がドバドバと出てきた。

あれだけ、血を出したにも関わらず、まだ残っているなんて想定外だ。

「うわー」

パトラがその光景に明らかに引いている。

ルースはティカの目を巨大な手で押さえている。

「ルース、見えないじゃない。早く手をどけて」

ティカが駄々をこねる。

「お前が見るものじゃない」

本能的な倫理観に(さいな)まれたのか、ルースはその手を全く動かそうとしない。

俺的にもその行動は助かる。

ロイはあまりにもグロい様子を察知したのか、早い段階で部屋に戻っている。

「硬いが、ここを切れば」

「ガリッ!」

不快な音が流れると同時、猪の頭が地面に落下した。

「うわっ!」

思わず、その光景に声を上げてしまった。

これは色んな意味で、18禁だ。子供が見るものではない。

俺と同じく、皆引いた様子だ。

一人を除いては。

「うわっ、凄いね。頭落ちちゃった」

ヴィーヌはなぜか嬉しそうに、そう言った。

こいつはもしかして、ドSなのか。はたまた、サイコパスなのか。

今の俺には知る由もない。




何とか、食べられそうな部位を切り分け、取り出すことができた。

すぐ調理する分は、火で炙り、残り物は乾燥させて、長期保存させる。

それで数日の間は持つだろう。

「ほら、そろそろいいだろう」

駄々をこねていたティカに、焼いた肉を渡す。

「はふっ」

渡した肉にかぶりついた。

「美味しい。いつものと違う」

嬉しそうに食べてくれるなら、俺も苦労した価値がある。

「うん、美味しい!」

「確かに美味しいね」

「うまいな」

「美味しい」

皆、笑みを浮かべて食べていた。

「よし、俺も食うか」

異世界の食べ物で、しかもあんな化け物の肉だからか、躊躇していたのだが、意を決して一口食べる。

「う、う、美味いーーー!」

国産の和牛ほどジューシーであるが、くどくなく、噛み応えもある。

現世界で食べても、十分通用する味だ。

「ガクト、本当に美味しいよ。こんなのは食べたことない」

ヴィーヌが笑顔を浮かべて答える。

「まあ、確かに美味いが、これをさらにさ美味くしてるのは、皆でワイワイ言いながら、食べてるからだと思うぞ」

安っぽいセリフかもしれないが、今の俺は心底そう思える。

「確かにそうかもね。私とガクトとロイとティカとルースとパトラ。この六人が揃って初めて美味しくなるのかもしれないね」

口角を上げて、笑みを浮かべている姿は本当に似合っている。

彼らと笑いあいながら、食事を楽しむ日々が、いつまでも続くといいのだが…。

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