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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
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体力的農作業

昼食を取り、体力を取り戻した5人と共に、再び外へ出る。

「よし、ここでいいだろう」

自宅から数メートルのところに立ち、5人に呼びかける。

「…何…する?」

パトラがそう尋ねる。何とも蠱惑的(こわくてき)でちょっと、やましい気持ちになりそうだ。

「今から、農業を始めようと思う」

「…農業…?」

パトラをはじめとした皆が、知らないご様子だ。

「簡単に言うと、こういった食べられる植物を育てるって事だな」

そう言って、自宅のベランダに置いてあったバジルを見せる。

「それ、食べられるの?」

ヴィーヌが聞いてくる。

「ああ。これ以外にも食べられるものはいっぱいある。それを大量に育てる事で食糧難を回避するって訳だ」

「へぇー」

ヴィーヌが納得したように答えた。

「それで、だ。今から、お前らには、農業用の土を作るのを手伝ってもらおうと思う」

「…土って…作れ…る…の?」

ティカが尋ねる。

「いや、正確には土そのものを作るってより、農業用の土壌を作るって言った方がいいな。ただ種を地面に植えたところで何も育たないから、育てるのに適した土を作らないといけないんだ」

ベランダに置いていた、肥料の袋を持ってくる。

「よいしょっと。これを使うんだ」

「…何…これ?」

「これは肥料って言って、土に混ぜる事で、その土壌が肥えるようになるんだ。そうする事で、植物を育てやすくなる」

「…なる…」

こいつ今、略語を使わなかっただろうか? いや、使っただろう。

反語で答える。

(こいつらの日本語が、たった一日でここまでくるとは、スーパーコンピュータ並みではないだろうか?)

内心そう思いながら、おもむろにスコップを持つ。

「よし、とりあえず地面を掘り起こして、柔らかくするぞ」

地面をスコップでえぐる。

皆、作業を始めると思いきや、訝しげな表情を浮かべている。

「おい、どうした? お前らも早く手伝え」

ロイが口を開く。

「さっき…みたいに…魔法を使えば…いいんじゃないか?」

呆れた表情を浮かべて答える。

「あのなあ、お前らあんまり、魔法に頼りすぎるな。確かに魔法を使ったら早く終わるかもしれないが、その分体力を削る。そんな事続けてたら、いつか食料と体力の需要と供給が取れなくなるぞ」

「…わっ、分かった…」

俺の説得に皆、納得したようだ。

手にスコップを携え、思い思いに地面を掘り起こしていった。




俺の指示に従って、体力労働を続け、およそ50メートル四方の農業用のスペースを作った。

体力労働と言っても、魔法を使用するよりは随分と消費はましだ。

限りある肥料を、畑全体に混ぜていき、さっき作った井戸から水を汲み、畑全体に行き届かせる。

そんな、古き日本の原風景のような行為を繰り返し、俺お手製の畑が完成した。

「早速、種まきだ。俺の指示通り、植えろよ」

「オッケー」

ヴィーヌの返事と共に、作業を再開する。

植える種は、二十日大根などのすぐ育つようなものから、米などの長期間かかるものまで様々だ。

自宅栽培が趣味の俺は大量の作物を持っていたため、ここまでの種類の種を揃えることができた。

植物同士の相性を考え、少しずつ植えていく。

それに倣って、5人も種を植えていく。

ティカが作業をしながら、尋ねてくる。

「…これって…いつ…食べられる?」

「そうだな、早いやつでも、二十日ぐらいはかかるな」

「……にじゅう…に…ち…?」

(そうか。こいつらはまだ数字や数学といった概念が、理解できていない。すっかり、忘れていた。日本語の文字や数字といった概念は、早く宣教しなければ)

「まあ、しばらくの間は食えないな」

「…ざん…ねん…」

ティカは心底、悲しそうな顔を浮かべる。

(そんな顔をせんでくれ。俺のロリコンと父性愛が目覚めてしまう)

くだらない葛藤をしながら、農作業は終わりを迎えた。

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