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天才教師が魔法世界で救世主になる物語  作者: 松風京四郎
第一章 魔法世界の救世主編
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天才教師は異世界に行く

天才とはあまりいいものではない。

俗世間では、基本的に頭の良い人は優遇され、頭の悪い人は邪険な扱いを受けることが多い。

しかし、優遇される人は秀才止まりだ。天才とは他人とは異なる、ある一線を超えた人のことを言う。そうした人間を見た時、普遍の人々は、忌み、畏れ、排除しようとする。

天才の考えを理解できないために。

いや、理解しようとしないために。

そんな風に排除された天才がここにも一人。

名は才賀学知(さいががくと)

黒髪で中肉中背の身長175センチ、至って普通の体を持ったこの男は、今年で32歳になる。

職業は某超有名進学校の教師だ。

体格とは裏腹に、この男の歴史は壮絶なものである。

人が普遍的に話し出す時期より3ヶ月も早く言葉を話し出した、学知少年は周りの子供だけでなく、大人も驚愕させていた。

幼稚園を卒業するまでに漢検と英検の3級、つまり中学校卒業レベルの資格を取り、小学校低学年のうちに高校数学をマスター、高学年で大学レベルの歴史分野を完璧に暗記と小学校のうちに、ありとあらゆる分野の極めてしまった。

こうなると中学校に入ってからが大変だ。基本的に飛び級制度のない日本では、学知の知識量に対応できず、退屈でしかない。

だから学知は考えた。基本科目以外にも知れることはたくさんある。

例えば、調理術。あらゆる料理本を漁り、自分で試行錯誤しながら、プロ顔負けの料理を出せるまでになった。

例えば、農業。数多くの種を集め、自宅の庭に植え、超一級品の作物を育てあげた。

このように基本科目だけでなく、専門科目も極めて、東京大学に首席で合格する。

合格した後も、やることは大して変わらない。様々な知識を講義や留学で得ていくだけだ。

そう、この男はただただ知識が欲しいだけなのだ。それが人智を超えており、異常に見えているだけなのだ。

いや、実際は異常なのだが。

そうして、ありとあらゆる知識を貪った天才、才賀学知はやることがなくなってしまった。

そこで、この男はまた考えた。

知れないのであれば、教えれば良いのだと。そこで彼は教師になった。

超有名大学を首席で卒業した彼を欲する高校は幾らでもいた。

余裕で就職を果たし、一年目にして担任を持った。

そこで、彼は悲哀を感じることになった。進学校であったとしても、知識を自分ほど欲するものは現れなかった。

彼は孤独を感じ続けていた。これまでも、これからも。

そして、何年か経ち現在に至る。




「あぁ、退屈だ」

スマホを片手に愚痴をこぼす天才教師、才賀学知は帰路についていた。

季節は3月末。新入生の準備を終え、5時を回った頃だが、それでもまだ明るい。

「何か新しいニュースはないのか」

歩きスマホをしながら、一人再び愚痴をこぼす。新しい情報を得たいものとしては、日々アップデートされるスマホは手放せない。

愚痴を垂れ流ししながら、家に到着した。

某有名高校の教師をしているだけあり、収入はそれなりにある。

そのため、住んでいる家もそれなりのタワーマンションの上階だ。

部屋に入ると、そこは異様な雰囲気を醸し出していた。

百科事典に専門書、哲学書に雑誌まで、ありとあらゆる蔵書に溢れている。

キッチンやベランダなどの最低限のスペース以外は、DIYで本棚を設置し、無理やりに本を置いている。

これが、知識モンスターの仰天住居である。

学校での活動で疲れていたため、さっと料理を仕上げ、食事を済ますと、すぐに風呂を焚いて、入浴する。

風呂から上がると、テレビやパソコンでニュースを確認し、就寝に至る。

寝る直前、彼はこんなことを考えた。

「今の生徒達はつまらない。必要なことだけを知ろうとして、何も不必要なことをしようとしない。知るということを純粋に楽しめていない。これなら、正直教師になった意味がない。お金を得るだけの作業だ。あぁ、本当につまらない。純粋に知識を欲するものはどこかにいないのか」

そして目を閉じ、神に祈った。

「神よ。もしいるのなら、俺を必要とする者のところへ連れて行ってくれ」

そう願うと、眠りに落ちた。




翌朝、目が覚め、カーテンを開ける。

その勢いで、マンション一階の郵便受けに朝刊を取りに行く。いつもの日課だ。

小さくため息をつきながら玄関を開ける。

扉を開けて、すぐあるエレベーターのボタンを押そうと……………あれっ?

ボタンどころかエレベーターも階段も無い。というより、景色が全く違う。

存在するのは住宅街ではなく、荒れ果てた荒野とボロボロの民家?と言っていいか微妙な建物だけだ。

「ここ、どこ?」

この日、あるマンションの一室が突然消滅したニュースは、日本全国に広まった。

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