氷里、異世界召喚のスタート!
続き
俺は異世界に召喚されることを知らなかったが為に、宇宙空間的な場所に半日程何もないまま閉じ込められていた。
あれは地獄だった。鉄の処女なんかに負けないくらいの立派な拷問だと思う。
っても鉄の処女って実在するか分からないんだっけ?
まあ、それは置いておこう。
俺はこの異世界・・・の手前の謎の空間に閉じ込められてから3時間は経過していたと思う。遠くに見える星みたいな光は、どれも遠くてほんとに星なのか確認することさえできなかった。
実はもう死んでて、ここは天国なのでは?と言う考えが一番しっくりくる気がした。
死んだら意識はどこへ行くのだろう。
それとも消えて無くなるのだろうか。
そんなことを昔から考えたり、考えた人の本を読んだりもした。要は、そう言った事柄に関心があったんだ。別の言い方なら、厨二病、弱く言えば死ぬのが怖かった。恐怖していた。必ず訪れるだろう『死』それ自体に恐れをなして逃げ出そうとしていた。
だって死んだら何も残らないかもしれないんだよ?そんなの嫌だ。死んだら楽になる?楽どころかそれすら感じることができないんだぞ?
まあ、今は考えてられてるから、もしかしたらまだ生きてて瀕死状態だからなのかもしれないけど。
今の俺には何も出来ないよな。考えたところで答えはでないし。夢の中なら物を思い浮かべたらなんでも出てくるんじゃないか?そうだな、試してみる価値はある。
・・・・・・・・・
いざ、何かを思い浮かべようとしても何も思いつかない。考えて、と言われた時ほど考えられないようなものだ。
・・・・・・・・・
ほんとに何も思い浮かばない上に、寝るという行為ができないせいで、頭が常に働いてる状態だった。
よってぼーっとしてても暇、だけどそれ以外やることがない。完全に積んでいた。そんな状態を半日ほど過ごした。
半日と言っても、十二時間じゃなくて、六時間程のことだ。
俺は昔、美乃里のバレンタインのお返しに、クッキーを作った時のことで『半日生地を寝かせます』とレシピに書かれていたのでそのまま十二時間だと思って置いておいたら母親にめっちゃバカにされた。
なんて言うエピソードがあったお陰で、半日って言葉の意味を覚えた程だ。まあ、正確に言うと半日って言うのは場合によって時間が異なるらしいが、俺には関係ない。何たってどこかも分からない場所にいる癖に、時計のひとつもないのだ。宇宙飛行士でも時計ぐらいは近くにあるだろう。
では、ここでもう一度あの言葉を言おう。
『俺は一体これからどうなるんだー!?』
そう叫んだような気になって見た瞬間、体に異様な程の重力を感じた。すると同時に、瞳に向かって無数の光が飛び込んできた。
「ちょ、眩しすぎだろ!おー、声出た」
いろいろ感動していると、目が光に慣れてきていろいろと見えるようになった。
ここは・・・
俺の部屋!?
でも明る過ぎだし、そんなはずないし・・・あれ、どうなってんだ?寝ぼけてただけ?いやいや、そんなはずはない。だって、さっきまで変なとこにいたし、夢とは思えないボリュームのある空間だった。
夢だったらリアリティーが足りてないのはいつものことだが、さっきのは目を瞑れば思い出す程度にはリアリティーあったしな。
結局どういうことなんだ?
そうだ!美乃里!美乃里はどうした?
「みぃーのぉーりぃー!みーーーーーのーーーーーりーーーーー!」
まだ目が慣れない中とりあえず幼馴染み名前を息が切れる寸前まで叫んだ。
なぜ息が切れる寸前までだったのかって?それは、今の状態が見えるようになったからだ。
「はへぇ?」
間抜けな声を出してからもう一度冷静に周囲を確認する。
完全に俺の部屋らしき場所が今いる場所で、美乃里の進化版?みたいな成長しすぎた美乃里みたいな人がいて。でも、おばさんとかじゃなくて、適度に成長していてもう時期社会人!みたいな感じだ。
逆に、その隣には、成長し切れてないスーパーロリっ子がいた。まじでロリっ子だわ。うん、誰がなんと文句言おうと、あれはロリっ子だ。
だけど変だな、俺の部屋のはずなのに美乃里の進化版みたいな人と謎のロリっ子が居るなんて変すぎるぞ。
俺が金持ちの家に生まれてて、これがメイドです。とか、そう言うのならまだギリギリ分かったんだけど、俺の家は生憎だが一般家庭で、家族の女と言えば母親と妹くらいだ。
それに妹は双子で、二人とも俺とはちっぽけも似てない。何の変哲もないない、五人家族だ。
ならこの二人は誰だろうか、実際俺が知らないので家族揃って知らない可能性の方が高い。
なら誰かって?分かるだろ?俺も知らないよ!
とりあえず誰でもいいからこの状況説明してよー!
て言うか、寝起きの悪いことで有名な俺も寝起きで覚醒できたってのはなかなかすごいことだな。ほんとに寝てたならね。
つか、美乃里の進化版さんめっさ可愛いやん。
まあ、オリジナルといい勝負かな?オリジナル美乃里は優しくて可愛くて頭も良くて・・・しいて欠点を上げるなら運動音痴なところかな?
でも、それ以外なら美乃里はなかなかのハイスペックなので、いい奥さんになってくれそうだ。あのまま俺になついた状態で成長してくれないかなぁ。
あとそれから、それから「えっと、氷里?今思ってたことは全部こっちに聞こえてるからね?あとそれから、私達のこと少しは気にしてね?途中から完全に思考モード入ってたよ」
エ、イマナンデスト・・・
聞きたくないことが聞こえてきたような。
思ってることがどうのこうのはこの際どうでもいい。
「え、どうでもいいことなの?」
それよりも、あの美乃里(進化版)が発した言葉だ。
思考モードとか言ってなかったか?
「言ったわよ」
うん、肯定が入ったことだし、これは事実だろう。
だが!俺の知ってる限り、思考モードとかダサいネーミングつけるやつは一人しかいない。
そう、美乃里だけだ。
「もしかして、この美乃里(進化版)みたいな女の人が美乃里なのかぁ!?」
「うん、そうだよ?私が美乃里」
そういいながら進化版は胸に手を当てて仰け反るようにわざとらしく胸を見せつけてきた。
と言うか、胸デカ過ぎる!当ててる手がすごい手前にきてるから、これはデカ過ぎてキモい!
「キモいって、うぅ・・・言い過ぎでしょ」
やべぇ、何か知らないが思ってることが筒抜けになってるんだった。
「みのりん、君の脳みそはデカ乳じゃないとダメなのかい?幻想魔法まで使って恥だぞ。ただでさえ君の乳はデカイというのに・・・」
「ちょ、それは言わない約束。待ってこれには深いわけが!」
冷たい目線を送っていた俺に気づいたのか、弁解するかのように言い訳してくる。
「深いわけなんて関係ーあるかー!本当の大きさに直せー!俺はな、偽物とぺちゃんこだけは許せないんだー!」
「んな、心読まれるからってそれを口に出さなくても。分かった、もう分かったから、駄々こねないで。今戻すから。」
そして、言い終えてからブツブツと呟くと美乃里の胸から風船みたいにプシューと音を立てて胸が縮んだ。
縮んだんだが、はっきり言って丁度いいくらいの巨乳に変化した。
いや、ちょうど良すぎて文句ないんだけど。
「それにしてもその胸のサイズは反則的じゃね!?」
「そうじゃろ、みのりんの胸は反則じゃ!」
「てか待て」
「なんじゃ?」
「今の状況はどうなってんのーーーーーーーー!!!」
氷里、異世界召喚の始まりだった。