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食堂から部屋に帰る途中、窓から外を見たが未だに橋は上がったままだった。まだ連絡がつかないのだろうか。

僕は部屋の前で星咲と別れると、部屋に入りソファに腰掛けた。

しかし、特にやることもない。スマホは相変わらず圏外だし。こんなことなら星咲か図書室から本でも借りてくればよかった。

なんとなくボーッと壁に視線を向けていたら、いつの間にか寝入ってしまった。うたた寝って気持ちいいんだよね。

そんなうたた寝も自室のドアを荒々しく開ける音で破られた。

バタンッという音にビックリしてドアの方を見ると星咲が立っていた。

「天堂君、きみのお説は正しかったかもしれないよ」

「??」

イマイチ星咲が何を言いたいのかが飲み込めない。

「何言ってるんだ?星咲?」

「『誰か』が殺された」




現場は彩乃さんの部屋。

部屋の中央に、かつて人間だったモノが横たわっている。白いワンピースを着て、腕にはインディアン系のバングルをはめている。綺麗な指先の一つにだけ、絆創膏が巻かれている。

どれも記憶にある彩乃さんと一致する。しかし、この屍体には、首から上がないのだ。

頭があった位置の無残な切り口からは、赤い、紐のような何かがはみ出していた。

それを取り囲むように綾田さん、新見さん、望月さん、慎也さん、小道さん、僕、星咲が立っている。あれ?相川さんの姿が見えないな。

「彩乃さん……!!」

望月さんが屍体の横に膝をついてうなだれた。恋人がこんな姿になったら誰でもそうなるよな。

「ひでぇなこりゃ。一体何で……」

「お前か。お前がやったんだろ小僧!」

慎也さんは望月さんの胸ぐらを掴むと壁に押し付けた。

「俺の!俺の可愛い彩乃を!!」

慎也さんは腕を振り上げる。その腕を後ろから掴んだ人物がいる。小道さんだ。

「旦那様。落ち着いてください」

小道さんの言葉を聞くと、慎也さんは望月さんから手を離し、両手で自身の顔を覆った。

「あぁ……彩乃……」

「旦那様。お部屋に戻ってお休みを。皆様も一度談話室にお集まりください。わたくしは警察に連絡したのち参ります」

小道さんはそこにいたみんなに一礼すると、慎也さんの肩を抱くようにして部屋を出て行った。さすが執事ともなると冷静だな。

「ここにいても何にもならないから、談話室にいこう」

星咲は屍体の周りをぐるっと一周してから部屋を出た。その後に僕が続き、望月さん、綾田さん、新見さんも後から来た。

「しかし、なんだってあの死体には首がないんだ?なんで首をきったんだ?」

新見さんが歩きながら誰に問うともなく言う。

「俺の見た感じだと、あれは医学とか小慣れたヤツがやった感じじゃないね」

綾田さんと新見さんの会話を聞いてまた屍体を思い出したのか、望月さんが真っ青な顔をしている。

談話室について、それぞれ適当な椅子に座ったが、空気は重苦しい。当たり前だ。人が死んだんだ。しかも、状況的に殺人……。

ん?まてよ?橋はまだ上がったままだ。つまり、誰もこっちから向こうに出れないし入れない。ということは、犯人はこの中にいる?!いや、それは正確じゃないか。ここには慎也さんも小道さんもいない。あれ?そういえば。

「なぁ星咲、まだ相川さんを一度も見ないんだけど、どっかで会ったか?」

「そういえば見当たらないね」

星咲は腕を組んで何かを考えはじめた。

「誰かメイドの相川さんを見かけましたか?」

僕は他の三人にも質問を投げたが、みんな首を横に振った。あれだけパンチ効いたメイドさんなんて、目立つはずなんだけどな……。警察に連絡したりとかしてるんだろうか。

と、談話室のドアが開いて、小道さんが入ってきた。

「皆様にお知らせしなくてはならない事がございます。一つは、電話が通じないという事、もう一つは、どうやら犯人は身内にいるという事です」

「どういう事ですか?」

望月さんがハッと顔を上げた。

「電話線が切断されてしまったようでございます。もちろん、犯人がやった事と考えられます。そして、その犯人というのが、どうやらメイドの相川六実である可能性が、出てまいりました」

「六実さんが?あの人はあの通りアバンギャルドな人だけど、悪い人だとは思えないし、第一動機がわからない」

星咲は小道さんの事を真っ直ぐに見ながら言った。

「しかし、相川六実の姿が見えない以上、逃亡しようと姿を隠したとしか思えません」

そう言いながら小道さんは一つの鍵をポケットこら出した。

「電話が通じない以上、いつになるかわかりませんが警察が来、現場現場をする時のためにお嬢様の部屋には鍵をかけました。現場を保存するためです。どなた様もお近づきにならぬようお願いいたします」

小道さんは鍵をポケットにしまうと、

「わたくしはこれから連絡をとる手段を探します。皆様にお力を借りるかもしれませんが、どうかよろしくお願いいたします」

一礼をすると、小道さんは談話室を出て行った。なんだかこなれているというか、そつがないというか。あれくらい落ち着いて行動ができないと執事は務まらないのだろうか。

と、コーヒーのいい香りが鼻をついた。

見るとお盆に人数分のカップを乗せて星咲が立っていた。

「慌てても仕方ない。コーヒーでも飲んで、これからの事を考えよう」

星咲は手際よくコーヒーを配った。

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