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モブ生徒と先生

作者: ふみ

ぐだぐだです。ごめんなさい。




「…き、松崎!」

「‥‥っうわ!」


ぱっ、と顔を上げると、目の前には

眉を八の字にして困ったように笑っている河野先生がいた。


「お前なー、そんな堂々と寝んなよなー」

「す、みません。」


季節はもう夏を感じさせるほどの暑さで

窓際のあたしの席は、5時間目になると

ただの眠気を誘うだけの場所になってしまう。

(てゆうか、河野先生でよかった)


物理の山本先生だったら

確実に罰として先生の助手!とかなんとか言って

ずっとこき使われるだろうし。

(あの先生テンション高いから面倒そうだし)


英語の松本先生だったら

その時間、ずーっと問題集中攻撃されそうだし。

(あたし、英語嫌いなんだよね)


現社の森本先生だったら

間違いなく放課後居残りだし。

(あの先生、若干苦手なんだよね)


河野先生は、うん。優しいし。

ルックスもいいから女の子からの支持も厚い。

人気あるからこそ、あんまり関わりたくない人種ではあるけど。


チャイムが鳴って、号令の後

もう1度睡眠に入ろうとしていたあたしに

河野先生の声が教卓から聞こえた。


「松崎!今日の放課後俺の手伝いね」

「てつだい、ですか?」


うん、お手伝い。と笑顔で頷いて

終わったら図書室なー、といいながら

教室を出た河野先生。


「げ、図書室って」


絶対本の整理とか本の整理とか

‥…本の整理とかでしょ、


めんどくさいなー、と思いつつ

また机に頭を伏せようとするも、

次の時間が古典だったことを思い出して

ばっ、と顔を上げる。


「お、今日は起きてるんだね、」

「欠点、嫌なんで。」


ふにゃ、ていう効果音が1番に合う

古典の大野先生。

この前のテストで9点という驚きの点数を取って以来

名前を覚えられてしまったらしく。


「ま、平常点ないと卒業できないもんね!」

なんて嫌味を言う大野先生を見ると

やっぱりこの学校にはろくな先生がいないな。

と、ため息が出る(河野先生を省くとね)


大野先生に1時間丸々集中攻撃を受けたあたしは

放課後になると、図書室へと

おもい足を進めていた。


がらっ、とドアを開けると

大きなダンボールを持った河野先生がすでに来ていた。


「お、ちゃんと来たんだ。えらいえらいっ。」

「まあ、暇なんで」


ぽすっ、とダンボールを机の上に置いて、あたしを見つめる。


先生は無意識かもしれないけど、

綺麗に整った顔で見つめらたら、どうしても顔が火照ってしまう。


「あの、なんですか?」

「あ、ごめんごめん」


ふ、と思い出したように目をそらされた。

何に対してのごめんなのだろうか。


「じゃあー、これ並べてもらってもいい?」

はいっ、と分厚い本を何冊か渡された。


本を並べていると、後ろに気配を感じて、後ろを向こうとすると

ふわっ、といいにおいがして

暖かい温度が背中全体に伝わる。


「‥‥‥ごめん、」


耳元に河野先生の低い声が広がる。

突然すぎて状況が理解できない。

さっきからなにがごめんなんですか先生。

「とりあえず、離してくださ、い。」

遠慮がちに口に出した言葉は、思いの外しっかりとした意思を持っていた。


すっ、と河野先生が離れたかと思うと、肩をつかまれて前を向かされた。

上を見上げると、少し照れた表情の河野先生。


「松崎って、植村と付き合ってんの?」


なにを考えているのかわからない表情でわたしに問いかける。

とりあえず顔近すぎです先生。


「え、植村ですか?」


そりゃ、確かに同じクラスの植村とは仲がいい。

でも植村には好きな人もいるし仲良いって言っても家が近くて一緒に帰るレベルだし、ってかなんで河野先生そんなこと聞いてくるの。


「お前ら、仲良いだろ?」

「なんですか、植村なんかやらかしたんですか?」


なるほど。植村が何かとんでもないことをやらかして、でも口を割らないもんだから仲良さげな私になにか知らないか聞こうとしたわけだ。

なんだ、最初から言ってくれればいいものを。


「遠まわしに言っても伝わんないわけか、」

「‥‥‥はい?」


間抜けな声と同時に、唇に広がる甘い食感。

ぐいぐいと肩を押してみるけど、まったく効果なし。ていうか先生なにしてるんですか!


強引に櫻井先生の舌が入ってきたところで

やばい、と感じて精一杯の抵抗を見せた。


「好き」

「えっ」


突然の河野先生の告白らしき言葉に思考が止まる。

こんな平凡な生徒Cくらいなレベルの私のことをなんで河野先生が?わけがわからん。


「と、とりあえずお断りします。」

初めての告白を丁寧にお断りする。

申し訳ないけど、河野先生のことを異性として見たことは一度たりともないし、ていうか学校の人気者である河野先生とお付き合いだなんて、今でも数少ない女の子のお友達をなくしかねない。


「だよなーお前全然俺のこと意識してないもんなー」

いつものように眉を八の字にして、困ったように笑う。

あ、いつもの河野先生だ。よかった。

これで今まで通り平穏な学校生活を送れる。

「じゃあ、本の整理終わらせちゃいましょっか!」

気持ちを切り替えて元気に本棚へ移動しようとした私の腕を、河野先生はしっかり握って離さない。


「あの、河野先生?」

「今までは意識してなかったけど、今日から意識、できるだろ?」

頭上には余裕な笑みを浮かべる河野先生。




戻ってこい、平穏無事な学校生活。








シリーズ化するかも

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