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恋と戦争と、俺とキミ  作者: 桐生みかね
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恋文

恋文……って今もある文化なのかな?


このお話は敵対するふたつの国の軍人同士が、唯一交流を許された『中立地帯』という施設を舞台に愛をはぐぐんでいくというものです。


『戦場のロミオとジュリエット』とかタイトル付けかけて、そんな大したモノじゃないのでやめました(笑)


絵本や童話を読む気持ちで読んでくれたら幸いです


風音マリナかざねまりなは16歳の少女で、軍人だ。


このA国において、この歳で兵士として戦場を駆ける少年少女は決して珍しくない。


幼いといって差し支えない年齢ながら、毎日過酷な訓練に身を置き、戦場で戦った経験もある。


修羅場といえる状況も、いくつも越えてきた。


だが現在、少女はとてつもない危機に陥っている。



………なんと異性から、それも敵国たるB国の男性から恋文を貰ってしまったのだ。



ここに至るまでの経緯は実に簡単だ。


現状、マリナの暮らすA国と手紙の差出人が暮らすB国は戦争状態にあり、二国間の物資の運搬や人の交流などは『戦場』でなければ、国境の中心にある『中立地帯』という施設を通してしかできない事になっている。


マリナは今日、訓練後の自由時間に『中立地帯』へと足を歩込んだ。


B国に暮らす祖父母と面会するためだ。


数十年続く戦争状態にあるA国とB国は、元々は同じ国だった。


そのため、肉親の一部と引き離され敵国同士となってしまった者達は多い。


『中立地帯』とはそもそも、そういったA国とB国で離れ離れになってしまった知人や家族、友人とわずかな時間でも会う事のできる場所としてできた施設だ。


もっともマリナの世代にもなると親も友人もA国内にしかおらず、B国に暮らす知人は祖父母だけだ。


祖父母と小一時間ほど話、お互いに物資の交換をし別れる。


毎週この曜日に行う習慣で、もはや当たり前となってしまった行為。


しかし、今日だけはいつもと違った。


祖父母に別れを告げ、そっと『中立地帯』を後にしようとしたマリナは係員に呼び止められた。


なんでも、B国からマリナ宛ての手紙を受け取っているとの事。


そう、その手紙がくだんの『恋文』だ。


内容は以下の通りである。



『突然のお手紙、申し訳ありません。


私はB国の国軍に所属する兵士です。


と、いうと警戒されるかもしれませんが、これは軍事的な意味合いの文ではなく、ごく個人的な感情によって書かれたものです。


率直に言います。


ずっと、あなたに恋していました。


一度も話した事のない、しかも敵国の私からこのような手紙を渡されても、あなたを混乱させてしまうだけだと分かっています。


ただ、どうしてもこの気持ちが抑えきれず筆をとった次第です。


特に交際などを望んでいるわけではありません。


不快であれば文を破り捨てていただいても結構です。


ですが、許されるならば、返事をいただけたらと思います。


もう少し、あなたの事が知りたいのです。


ご迷惑でなければで構いません。


ですが、もしよろしければ『中立地帯』に私宛の手紙を預けておいてください。



藤堂アキト』



「……はぁ」


どうしよう、というのが正直なところだ。


ところどころ荒っぽく文脈が怪しいが、それでいてマリナへの礼節を保とうとしているのが良く伝わるその文には激しい感情をなんとか理性で押し殺しているような印象を感じる。


送り主……藤堂アキトなる人物は、破り捨てても構わないと言っているがとてもそんな事はできそうにない。


だが、かと言って返事を書くのもためらわれる。


マリナはアキトの事を知らない。


外見も何もだ。


それに敵国の軍人であるらしい。


交際だとか恋だとか、そんなもの以前に彼とコンタクトを取る事自体が自国への反逆に当たったりはしないだろうか?


仮に反逆などではないとしても、いずれ戦場で殺し合う事になる可能性は高い。


そんな相手と交友を深めても、後で辛くなるだけではないか?


そう思うと、容易に返事は書けなかった。


どうすればいいのだろう。



とりあえず、友人に意見を求めよう。


返事を書かないならそれでいいし、書くにしても急かされているわけではない。


そりゃ、向こうの事を思うとできるだけ早く返事を書きたいが、一日二日くらいは悩ませてくれてもいいだろう。


文章も考えないといけない。


だから、今日はとにかく帰ろう。


そうしてマリナは、大事にその手紙を抱いて帰路についた。




ありがとうございました。


残念ながら投稿は不定期で、しかも他の小説と並行して行いますので、なかなか次話が投稿できないかもしれませんが応援よろしくお願いします。

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