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さまよい続けた私は、いよいよ歩けないという状況になっていた。
「こーなるんだったら、逃げてくるんじゃなかったー」
今更泣いても、返事するのはフクロウかコウモリぐらい。
そう思っていた時、明りがフラフラと揺れながらこっちに近づいているのを見つけた。
「ホーイ、ホーイ。やろうじゃないか。ホーイ、ホーイ。こっちへ来いよ」
何かを歌いながら、ゆっくりとした足取りだ。
隠れないといけないと本能的に覚った私だったが、運悪く、足元の枝を折ってしまった。
ポキンという音は、森の中で、広くはっきりと響いた。
「誰かいるのかぁい?」
静かにしていると、こちらへその明りが近づいてくる。
「攻撃はしないでっ」
私はその明りへ向かって叫んだ。
ゆっくりと両手をあげて明りを持っている人に、合図を言いながら姿を見せる。
「おや、綺麗なお嬢様じゃないか」
その澄んだ声に反するように、魔物がそこに立っていた。