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雪が降る日に

作者: TAKA丸
掲載日:2006/01/25

「お兄ちゃん見て! 雪が降って来たよ」

「ああ……そうだね、雪だね」

 僕の腰の辺りで妹が無邪気に笑う。

 今年でいくつになるんだっけ……?

 いつまで経っても子供なんだなと僕も一緒に笑った。

 はしゃぐ妹が見上げる鉛色の空からは、絶え間無く白い雪が降り続いている。

「寒くないか?」

「全然。 お兄ちゃんは寒い?」

「いや、僕も全然寒くないよ」

「良かった。 じゃあ、たくさん遊べるね」

「……そうだね」

 家の庭に立つ僕達の足元には、どんどん雪が積もって行く。

 ついさっきまで見えていた芝生も、今は白く塗り潰されて見えなくなっている。

「雪ダルマ作れるかなあ?」

「どうだろう? もう少し積もらないと無理かな?」

「そっかあ〜……もっといっぱい降るといいね」

「……そうだね」

 でも妹は雪が積もるのを待ち切れないらしく、小さな手で、その手に見合った小さな雪玉を作り始めた。

「よいしょ……よいしょ……」

 その雪玉を今度は転がし始める。

 そうして徐々に雪を付け、玉を大きくしようというのだろう。

 けれど雪が少ないせいなのか、雪玉はなかなか大きくなってくれそうもない。

 その内に、妹が恨めしそうな顔で僕を見つめている事に気付いた。

「……お兄ちゃんが手伝ってくれないから、おっきくならない」

「僕のせいなのか?」

「そうだよお! 早く手伝ってよお!」

 妹は昔から言い出したら聞かない性格だ。

 そのせいで、どれだけ大変な思いをしたか解らない……。

「早くぅ!」

「解った解った……」

 僕は妹の手伝いをする事にした。

 でも、こうなる事は最初から解っていたんだ。

 だって、いつも最後は僕が折れて、妹の望みを叶えてあげる事になるんだから。

「このくらいでいいかなあ?」

「いいんじゃないかな? 結構大きくなったし」

 暫くして、僕の身長と同じくらいの雪ダルマが完成した。

 でも、まだ雪玉を積み上げただけの、ただの雪の塊だ。

「顔と……腕と……あれ? お兄ちゃん、足はどうしようか?」

「普通、雪ダルマに足は付いてないんじゃなかったかな?」

「あ、そっか。 じゃあ、まずは目を付けてあげようっと」

 僕は、ただ妹が喜ぶ顔が見たかった。

 だから、いつでも妹の言う事を聞いてあげたんだ。

 お父さんやお母さんが妹を叱った時も、僕はいつでも妹を庇ってあげた。

 イヤと言うほど殴られたけど、妹を護ってあげられた事で僕は満足だった。

 どんなに痛い思いをしても、それは僕の中で誇りになった。

『お兄ちゃん大丈夫? ……ごめんね……』

 心配そうに僕を見つめる妹が愛しかった……。

『お父さんもお母さんも嫌い。 お兄ちゃんだけ、いてくれればいい……』

 僕の可愛い妹……誰にも僕の妹を傷付けさせたりしない……。 

 僕がずっと護ってあげるんだ……。

「お兄ちゃん、目はここでいい?」

「あははは。 それじゃ雪ダルマの胸に目が付いちゃうぞ」

「もっと上〜? 届かないよ……この台、低いんだもん」

「ほら、だっこしてあげるよ。 これなら届くだろ?」

 僕は妹が台代わりにしていた物を蹴飛ばすと、妹を抱き上げて目を付けさせた。

「うん、優しい顔に出来たね」

「お兄ちゃんみたいな顔だね」

「そうかい? ありがとう」

 似てるのかな? やっぱり。

 それはそうか、親子だもんね……。

「次は手を付けてあげようっと」

「気を付けてやるんだよ? ポイントはさっき教えた場所だからね」

「うん。 優しい手にするんだ〜、お兄ちゃんの手みたいに」

「そう、頑張ってね……」

 妹が雪ダルマを完成に近付ける毎に、白かった雪ダルマが赤く色を変えて行く……。

「お父さんもお母さんも、こうして遊んであげるのは久し振りでしょ? しっかり最後まで遊んであげてね……」

 僕はさっき蹴飛ばした、妹が台代わりに乗っていたお父さんを見た。

 そして視線を妹に戻すと、丁度お母さんの腕が綺麗に切り取れたところだった。

 妹の誇らしげな顔を見て、僕は満足だった……。

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― 新着の感想 ―
[一言] びっくりしました・・・。 微笑ましい兄弟の展開から、 台にしてたのが殺した父親で、 おっかさんも腕を切り取られてるって・・・。 鳥肌が立ちました。凄い・・・。
2009/08/23 21:17 退会済み
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