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私の愛した小さなあなた  作者: 香田紗季


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1 プロローグ 新女王即位の儀

読みに来てくださってありがとうございます。

よろしくお願いいたします。

1が短いので、この後2をすぐにアップする予定です。


 大国の狭間にある小さな王国フㇽラージュは、周辺国が民主化していく中で、唯一立憲君主制を維持し続けてきた。もちろん、国民の支持があるからこその王政である。


 そのフㇽラージュ王国で今日、新しい女王が即位する。儀式のクライマックスは、宣誓だ。儀式の最後に、新王は玉座に埋め込まれた巨大なサファイアに手を置き、国民のために働くことを列席者全員の前で誓う。


 そのサファイアの巨大さ、色の美しさから「国宝」とされていると思っている他国の人間が多いが、実はこのサファイアの本領は宝石としての価値とは違うところにある。国王が誤った道に進み始めると色を失い、どうしようもない悪政を敷く前に王が国民を裏切っていると知らせることができるのだ。


 もちろん、己の悪行を隠すためにサファイアの破壊や撤去を試みた王もいた。だが、そのような王や王の意を受けてサファイアに害をなそうとする者は、サファイアに触れることさえできなかった。それどころか、玉座に近づくこともできなくなってしまった。盗難被害にあわなかったのも、同様の仕組みが働いたからだ。


 今日、新たに即位する女王エレオノールは、緊張した面持ちで玉座に近づいた。埋め込まれたサファイアに触れたことで、観衆から安堵のため息が漏れる。新女王がサファイアに認められたのだ。一部の観衆から、わーっという歓声が上がり始める。新王はサファイアに触れながら宣誓した。


「フㇽラージュ王国の民のために働くと、サファイアに誓う!」


 次の瞬間、エレオノール女王の周囲は暗転した。誰もいない、真っ暗な空間。エレオノール女王は宰相や補佐官の名を呼んだが、人の気配がしない。サファイアから手を離すこともできない。


(こんなことは、聞いていないわ!)


 やがて、光もないのにサファイアが自ら青く輝き始めた。その光に取り込まれると、体がほのかに温かくなった。即位式典のために連日遅くまで仕事をしていたエレオノール女王はその温かな空気に包まれ、沸き起こる眠気に耐え切れず、目を閉じた。目を閉じたのに、なぜか幻影が見えた。


「新女王エレオノール。この国を守るために、過去に起きたことをあなたにも経験してもらいます。これを知ったうえで国を統治する覚悟がないならば、そなかたら王冠を返しなさい」

「誰?」


 サファイアが意志を持って明滅している。


「私は、この国が中興したときの歴史を知る者。さあ、歴史を見てきなさい」


読んでくださってありがとうございました。

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