エピローグ『記録映像ファイルNo.07 ―玄関の荷物―』
> [記録映像:07 / 再生開始]
タイムスタンプ:23:58
撮影場所:○○市○丁目 アパート102号室 玄関前
カメラは静かに玄関を映している。
夜の湿った空気が、玄関の隙間から忍び込むように揺れ、
外の街灯がぼんやりとドアの取っ手を照らしていた。
床には、段ボール箱がひとつ。
白いガムテープで封がされ、手書きの文字がある。
> 「配達:自分宛」
……“自分宛”という文字。
だが、送り主の欄にはこう書かれていた。
> 「差出人:□□(自分の名前)」
まるで鏡のように、送り手と受け手が一致している。
カメラが微かに揺れる。
中の人物――彼は、息を呑みながらその箱を見つめていた。
そして、震える手で封を剥がす。
ガムテープがはがれる音。
中には、黒いスマートフォンがひとつだけ入っていた。
画面には自動再生されるように、
一つの動画ファイルが開く。
> [ファイル名:No.06_rec_end.mp4]
画面の中では、“彼”が映っていた。
同じ顔。だが、表情が違う。
目の奥に、どこか別の意識が潜んでいる。
「……これを見ているってことは、もう全部、終わったんだな」
映像の中の“彼”は淡々と話す。
だが、背後の壁には何かが映り込んでいた。
──覗き窓の向こうで、誰かがこちらを見ている。
「次は“お前”の番だ。玄関の向こうに、俺がいる。
開けるかどうかは……“お前”が決めろ」
動画が終わる。
外のチャイムが、鳴った。
> ピンポーン……。
男は静かにドアの前に立ち尽くす。
足跡は二つ。
一つは自分の。
もう一つは──いつの間にか背後に現れた、もうひとりの自分のもの。
画面がノイズで歪む。
次の瞬間、映像は闇に沈んだ。
> [記録映像:07 / 終了]
ファイルはロックされています。再生不可。
---
― END ―




