第8話 都でのお土産探し
スキル鑑定師によって、自分の能力が「毒捌き」というスキルであることを知ったナカムラ。
魚だけでなく、爬虫類や虫、獣にも応用できる可能性がある――その言葉は胸に深く刻まれた。
(いずれは、村から出て、他の地域も見てみたい)
そんな期待を胸に抱きつつも
(まずは、お世話になった村の事を考えるべきだろう)
ひとまず胸に仕舞い、せっかく都に来られたので、お土産を買って帰ることになった。というのも、商人は気のいい性格のようで
「いやぁ、面白いものが見れました。いい機会なので、都を回っていかれたらどうです?出発は明日の予定なんで……」
せっかくなのでお言葉に甘え、商店街を廻ってみる。露店が並ぶ通りを歩くナカムラとコリー。香辛料の香り、焼き菓子の甘い匂い、人々の喧騒が入り混じる。都会の活気にコリーは目を輝かせていた。
「わあぁ、すごい人ですね~」
ナカムラは微笑みながらも、目を光らせて村へのお土産を探す。村ではあまり手に入らない香辛料や、村人たちの好みに合いそうな雑貨や保存食を選ぶ。
そのとき、ふとコリーの視線を感じた。彼女は露天商のアクセサリーを、興味津々に見つめている。
「ナカムラさん、これ、きれいですねぇ~」
露天商の男が微笑みながら、指輪について語る。
「いやぁ、お目が高い。うちの装飾品はどれも貴重な品ばかり!その指輪は、持ち主の眠っている力を引き出すと言われているんですよ!」
ナカムラは一瞬考えた。村に戻れば、こんな華やかなものを手に入れる機会は滅多にないだろう。
「そうか、それならこれを買ってやろう」
ナカムラは指輪を手に取り、コリーに差し出した。
「え~、いいんですかぁ?」
「せっかくだからな。日頃の礼だ」
コリーは顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうに指輪を受け取った。
「ありがとうございます~」
ナカムラは軽く笑い、肩をすくめる。
その後、二人は買い物を終え、都の喧騒を抜けて宿に戻る。
夜、コリーは寝る前にそっと指輪を手に取り、微笑んでいた。
(この指輪の意味って、分かってるのかなぁ……)
指輪の輝きと、ナカムラの優しい笑顔が、コリーの胸に小さなときめきを生んでいた。ナカムラはその隣で、窓から遠くの夜空を眺めながら思う。
(コリーか。小さい村の娘だと思っていたが、こうして一緒に旅をすると、色々と考えさせられるな)
村に戻れば、干物や食堂の仕事が待っている。だが、スキルを得た自分にできることはまだまだ多い。
(まずは村を見届けてから、次のステップだな……)
二人の間に小さな静寂が訪れる。
指輪の光と夜空の星が、これからの冒険の始まりを静かに照らしていた。