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おっさん異世界でフグをさばいていたら伝説になる  作者: 北真っ暗
2つ目の伝説

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第73話 試験開始

 冒険者養成コースを実施するにあたり、まず最初にやらなければならないことがあった。

――告知だ。

 バラバラに志願者が来てしまえば、面談の段取りも、育成コースそのものの開始も乱れてしまう。

 開始日を決め、そこに一度集めてから選抜し、同じタイミングで講義を始めるのがもっとも効率が良い。


「まずは募集からだな。人が来なけりゃ何も始まらんし」

 ナカムラはギルド長と話し合った内容を思い返しながら、告知文の最終確認をしていた。

 都だけでなく、近隣の村々にも情報を届けるため、これまでの冒険で関わりのあった者たちにも協力してもらうこととなった。

 どの程度の人数が集まるかは未知数。

 だが、やってみなければわからない。


 こうして、《冒険者養成コース 第一期生募集》の紙が、ギルド掲示板に貼り出された。


 掲示板の前では、職員たちがひそひそと声を交わしている。

「……本当に始めるんですねぇ、養成コース」

「ただでさえ新人の面倒を見るのは大変なのに、教官までやるとは……」

「でもまあ、あの三人ならどうにかしてくれそうですよね」

 そんな声を背に、ナカムラは受付横で腕を組んでいた。

 今日からが本当のスタートだと思うと、自然と気持ちが引き締まる。


「ナカムラさ〜ん、準備はいいですかぁ?」

 朝の光とともに現れたのは、ひょいと手を振るコリーだった。

 背には木箱がくくりつけられている。食材かと思いきや、彼女は胸を張って言った。

「これ、訓練用の道具なんです! 昨日のうちに作っておきましたぁ」

「おお……やる気満々だな」

「もちろんですよぉ。後輩ができるって思うと、張り切っちゃいますもん!」

 少し遅れて、リンが姿を見せた。

 両腕には布袋がいくつも抱えられている。

「……全部、石。投げる。避ける。訓練、できる」

「お、おう……容赦ないな」


 三人がそろったところで、ギルド長が書類束を抱えて現れた。

「お、全員いるな。では今日の面談者の書類だ」

 手渡された厚い紙束には、今回の募集に応募した者たちの情報が詰まっている。

「人数は……?」

「十名だ。年齢も経歴もバラバラだが、まずはこれくらいが妥当だろう」

 十名と聞いて、ナカムラは胸の中で小さく息をついた。

 最初にしてはちょうど良い。

 多すぎれば手が回らないし、少なすぎても意味がない。

「これから面談を行い、伸びしろがある者を採用する。どうしても難しい者は……落とす」

 ギルド長は言葉を選びながらも、はっきりと告げた。

「ナカムラ、お前も立ち会ってくれ」

「了解です。行ってくる」


 コリーとリンは準備を続けながら手を振って送り出した。

 面談が始まると、ギルドの空気は一変した。

 応募者たちはどこか緊張しており、それがナカムラにも伝わってくる。

 数人の面談を終えたところで、ひと息つくこととなった。


「ふぅ……なかなか疲れますねぇ」

「慣れない仕事だとそうなるさ」

 ギルド長は書類を整えながら問いかけてくる。

「ここまでの参加者を見てどう思った?」

「冒険者を志しているだけあって、技術か知識か、何かしら持ってはいますね。ただ……やっぱり現役の冒険者とは雰囲気が違うというか……」

「ほう」

「“危険に飛び込む覚悟” を持つ者と、まだ持てていない者の差というか……」

ギルド長は深く頷いた。

「その違いが分かるなら問題ない。まさにそこを埋めるために、この育成コースがあるのだからな」


 都育ちで狩猟経験の少ない者。

 剣術の心得はあるが実戦経験のない者。

 働き口を探してきた村人。

 戦士の家系で育った者。

 背景がバラバラであれば、スタートラインも違う。

 その差をどう縮めるか――それが課題となる。


「まずは、生きて帰ることができる者を育てるところから、か」

 ナカムラは自分に言い聞かせるように呟き、次の応募者を迎え入れた。

 それぞれが語る夢や不安。

 家族のため、名誉のため、自分の限界に挑むため――

 動機は様々だが、どの声にも共通しているのは、“前に進みたい”という意志だった。

 面談室の外では、コリーとリンが結果を待ちながら人の出入りを眺めていた。


「ん~、結構時間かかりますねぇ」

「長い。全員、合格でいい」

「ダメですよ、ついてこれない人がいたら、私たちが怖い人になっちゃいますからぁ」

「そう……」

 リンは首をかしげた。

 面談は夕方が近づくころようやく終わった。

 応募者たちは、緊張の面持ちでギルド前に集められている。

 いよいよ、審査結果が張り出されるのだ。

 職員が紙を持って姿を現す。

 その瞬間、空気が張り詰めた。

 番号を書かれた参加者だけが、冒険者養成コースの受講資格を得る。

 職員が掲示板に紙を貼り付けると、応募者たちは一斉に駆け寄った。


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