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おっさん異世界でフグをさばいていたら伝説になる  作者: 北真っ暗
1つ目の伝説

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第48話 新たな展開へ

 甲冑ムカデとの戦闘を終え、洞窟を出た四人はその場で戦利品を山分けした。燃えたり傷ついた部位もあったが、それでもなお残った外皮は分配できるだけの量があった。硬質で紅く輝く甲殻を人数分に分配していく。


「鉱石もなるべく持ち帰ろう、結構掘ったしな」

 ナカムラの提案に、コリーが元気よく返事をした。

「はいっ! 紅鉱石、まだまだ掘れるかもって思ってましたけど……もうこれだけで十分ですね!」


 ゲイルは荷を背負い直し、ひとつ大きく息を吐いた。

「久々に骨の折れる仕事だったが、悪くない依頼だった。こういうのならまた呼んでくれ」

 それだけ言うと、彼は軽く手を振り、街道の分岐で別れた。これもひとえにゲイルのおかげだろう、とナカムラたちも深く頭を下げて見送った。


都に戻ると、まずは冒険者ギルドへと向かう。鉱石や戦利品の換金をするためだ。受付で案内された場所で石を広げると、鑑定士がひとつひとつ丁寧に確認していく。

「黄色鉱石と紅鉱石ですね。大きめの石も含まれていますので、高値で取引できますね。総額にすると……」

 提示された金額は、ナカムラの予想をやや上回っていた。

 ただし、甲冑ムカデの外皮を見せた時、鑑定士は顔をしかめ、首を横に振った。


「これは……確かに希少です。買い取ることも出来ますが、鍛冶屋に一度持ち込んでみたらどうでしょう?」

「鍛冶屋か……」

 ナカムラが呟くと、コリーがぱっと顔を輝かせた。

「知ってます! 前に街を散策していた時、評判のいい鍛冶屋さんを見つけたんです!」


 かくして三人は、都でも腕利きと評判の鍛冶屋を訪ねることにした。

鍛冶屋の店先には、見本としていくつもの鎧や剣が並べられていた。煤けた鉄の匂いと、奥から響く槌音が職人の居場所であることを伝えてくる。


「おぉ……!」

 甲冑ムカデの外皮を見た途端、店主は目を見開き、声を上げた。

「美しいな、紅鉱石を取り込んだからなのか、紅色の輝きが強い。斧を弾いたって?なるほど、触ってわかる。これは並みの武具では太刀打ちできん硬さだ」

 店主は外皮を手に取り、光にかざし、表面を爪で叩いて音を確かめる。


価値について問うてみると

「身なりからして冒険者だろう?なら、買い取りに出すよりも、この素材を使って防具を作った方がいい。金に換えるのは一瞬だが、命を守るものにするのは一生の価値がある」

「防具……」

 ナカムラは自分の身なりを見下ろした。今の皮鎧はそこそこ実用的だが、大型の獣の一撃や、今回のムカデの顎には耐えられないだろう。


 店主は笑みを浮かべ、続けた。

「全部を鎧にするのは無理だが、今の装備を補強する形なら十分だ。軽くて頑丈、下手な鉄金属よりも上質だ。三人分、きっちり仕立ててやる」


 ナカムラとコリー、リンは顔を見合わせ、すぐに頷き合った。

「お願いします」


加工にはしばらく時間がかかるとのことで、外皮を預けた三人は街へ戻った。鉱石の換金で得た金額もかなりのものだ。生活費にも余裕ができ、少なくとも当面は困らない。

「ふふっ、やりましたね! これでちょっといいお茶も買えるかも!」

 コリーが嬉しそうに笑い、リンは静かに頷いた。


 ナカムラは二人のやり取りを見ながら、ふと初めて都に来た日のことを思い出していた。あの時は右も左も分からず、ただコリーと共に歩いていた。今ではギルドで名を知られ、こうして成果を分け合える仲間がいる。随分と遠くまで来たものだ。


 それからしばらく経ったある日。

 ナカムラは週に一度開かれる毒魚食堂の出張所で、いつものように調理をしていた。いつもように解体し、毒のある部位を取り除き、調理に励む。食堂は今日も盛況で、顔馴染みの客たちの笑い声が絶えない。

 その最中、冒険者ギルドの職員が店先に現れた。息を切らし、真剣な面持ちでナカムラの名を呼ぶ。


「ナカムラさん! 至急お伝えせねばならぬことがございます」

 何事かと顔を上げると、職員は周囲に聞かれぬよう、そのまま別室に案内され、依頼主の名前を聞かされる。


「個人依頼です。依頼主は王太子殿下から」

 ナカムラは、詳細を聞くため王太子と直接話す事になった。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


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