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おっさん異世界でフグをさばいていたら伝説になる  作者: 北真っ暗
1つ目の伝説

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第40話 山脈と老練の冒険者

 新しい家を手に入れた3人は、気になっていたエリアである山脈へと挑戦することになった。

 初めて訪れる山脈は、その下部から上部まで、さまざまな環境が連なっていた。


 下部にあたる森林地帯は果実や木の実が多く、食材目当ての冒険者も少なくない。しかし、危険生物も多く、大型の節足動物や、熊、オオカミなどが潜んでいる。


 中部は岩山地帯となり、大小さまざまな洞窟が形成され、希少な鉱石が発掘される地域である。

 そのため、武器や装飾品を求める者には需要が高いが、コウモリや岩ムカデなど毒を持つ生物も生息している。


 さらに上部の山頂に至る道は過酷で、天候が激しく変化し、未知の生物の噂が絶えない場所でもあった。


 まずは、森林地帯に足を踏み入れることにした。冒険者ギルドに同行依頼を出したところ、案内役として名乗りをあげたのは、白髪で髭をたくわえた老戦士ゲイルだった。後ろで結わえた髪に、ウールのチュニックとズボン、毛皮を羽織り、腰には片刃の斧をぶら下げている。その装備は一見地味で、都を歩く格好とほとんど変わらなかった。


「森林地帯を歩くのは、実家の庭の手入れをするのと変わらん。岩山地帯まで行くならピッケルくらいは持っていくがな」


 不敵な笑みを浮かべ、ゲイルはそう言った。コリーと俺、リンはキャンプ用の装備を持ってきていたが、彼は自然に完全に馴染んでいるようだった。


 都を出て数日後、ようやく森林地帯に到着した。途中の野宿では、俺たちがテントを設営している間に、ゲイルは落ちている枝や葉を組み合わせ、瞬く間にシェルターを作り上げた。


「先に火を起こしておくから、ゆっくりやってくれて構わん」


 言葉少なに火を灯す彼を見て、どれほど長く自然の中で生活してきたのだろうと感心するばかりだった。


 森林地帯では、ゲイルの案内で手に入る特産品を教わった。果実を目当てに歩くコリーは、ブドウやモモの実を手に取るたびに嬉しそうに頬を緩め、つまんでは喜びを表現していた。リンは密林とは異なる木々の環境を興味深そうに観察し、樹上から周囲を確認する。


 「この植物を覚えておけ、除虫花だ。花だけだとすぐ無くなる。茎にも若干効果はあるから、両方混ぜて使うんだ」


 ゲイルから受け取った鉄網の小さな籠には、花と茎が入っていた。新天地に来るなら、案内役を雇う価値は確かにあると、あらためて実感した。


 教えを受けていた最中、リンが木から飛び降りてきた。


「あっち、大きい獣、来る」


 指差す方向には、黒色の大型獣クログマがゆっくりとこちらに歩み寄っていた。この森林地帯で最大級の生物だ。偶然の遭遇とはいえ、向こうの出方によっては対処が必要だ。リンが腰のナイフに手をかけようとした瞬間、ゲイルが制止した。


「嬢ちゃん、やめとけ。山脈ではなんでもかんでも相手してたら、こっちが疲れるだけじゃぞ。それと耳を塞いでおけ、いいな」


 言われた通り、俺たちは耳を塞ぎ、ゲイルの動きを観察した。彼はクロクマに近づき、深く息を吸い込む。


「―――――――――――ッ」


 その瞬間、樹木が揺れるほどの轟音の叫び声が響き渡った。耳を塞いでも全身が震えるほどの威力で、クログマは後ろを向き、一目散に走り去った。


「はっはっは、話せば分かるやつじゃった」


 リンは驚きのあまり、俺の後ろに隠れてしまったが、ゲイルは笑みを浮かべながら言う。

「若いのは殺し過ぎるやつもいるからな。命のやり取りだけが冒険者の仕事じゃないことを知っておけ」


 その教えは重くも、自然との付き合い方を学ぶ貴重な一幕となった。木の実や果実、珍しい植物などが収穫できた一向は帰路につく。

 その後ろ姿は、次の冒険への期待と、未知への好奇心が込められていた。


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