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おっさん異世界でフグをさばいていたら伝説になる  作者: 北真っ暗
1つ目の伝説

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第23話 目まぐるしい日々

 都で開かれた料理大会から、いくらかの時が過ぎた。

 王家特別賞――その響きは、想像以上に人々の心を揺さぶったらしい。

 冒険者ギルドの入口には、以前までは考えられなかったような看板が立てられていた。


『王家にも認められた腕、料理大会受賞者の特別メニュー』


 文字は派手に彩られ、通りを歩く人々の目を引いている。

 当のナカムラ本人は、その看板を横目に見て、深いため息をついた。

(あれはヤラセだった、なんて言えないからなぁ)

 大会での裏事情――毒持ちの魔獣を引かされる不正や、王家特別賞の意図。

 すべてを語るわけにはいかず、結果だけが独り歩きした。

 そのせいで、都の人々の間では「食べられない食材すら料理する料理人」として彼の名が広まってしまったのである。


 名が広まれば、当然のように依頼も舞い込む。

「ナカムラさん、これをご覧ください」

 受付嬢が持ってきた紙には、見慣れぬ文言が並んでいた。


『毒性生物の構造研究のための協力依頼』


『市場で売り物にならず廃棄していた毒の肉を、活用するための指導をしてほしい。』


 そんな依頼ばかりが並んでいた。


「学者連中の依頼か。それに商人まで」


「はい。大会での一件以来、『食べられないと言われてきたものを食べ物に変える男』として有名に……」


 受付嬢は少し苦笑しながら言った。

 

「まったく、勝手に持ち上げやがって……。どうしたもんかね」

 毒のある魔獣の肉を調理可能にしたことは、確かに都にとって革命的だった。

 飢饉の時に役立つかもしれないし、新しい交易品の目玉になる可能性だってある。


 ただその一方で、困ったこともあった。


 かつては即座に埋まっていた「ドクウナギ捕獲依頼」。

 今では、掲示板の片隅にひっそりと貼られているだけになってしまった。


「同行者もいなければ、護衛業務だけでなく、自分の力で捕獲しないといけなくなったしなぁ。」

 ナカムラがそう呟くと、隣にいた冒険者仲間が苦笑した。

「だってよ、あの依頼は、受ける側からすれば、賄いと治癒スキル、護衛のみってのが魅力だったからな、ドクウナギを獲ってこいじゃ、他の依頼を受けるやつも多いだろうよ」


 仕方なく、他の依頼で自分や他の冒険者が湿地に行く際に罠を仕掛け、ついでに数日後に回収する――そんな工夫で在庫を確保していた。


「まぁ、目新しくもなくなってきたしな、他の食材を探しにいく頃合いかもしれない」


「おっ、そん時は一緒するから言ってくれな、一番に食えるかもしれない」


と笑いながら、肩を叩いて出ていった。


 たしかに、最近、ナカムラのもとには湿地以外の依頼も舞い込んでいた。

 密林や山脈の同行依頼が名指しで来ており、もう少し落ち着いてからで頼むと、断っている状況だ。しかし心の奥底では、興味を抑えきれていなかった。

 

 そうして日々を過ごすうちに、ナカムラはギルドの中でも顔馴染みを増やしていった。

 依頼内容についての相談や、都内での噂話、最近の流行など……。

 最初はよそ者だった彼も、今では自然と輪の中に入ることができるようになっていた。


「ナカムラ、また例の看板の前で観光客が立ち止まってたぞ!」

「やめろよ……あれのせいで変に注目されてるんだ」


 そんな軽口を叩き合える仲間が増えたのも、名が知られた功績だろう。


一方のコリーも、ギルド内で人気を集めていた。


 彼女の治癒スキルも向上しているようで、浅い傷口や捻挫程度なら、その場である程度治癒できるようになっていた。


「コリーさん、お願い!」


 若い女性冒険者が駆け寄り、手首にできた切り傷を差し出す。


 コリーが小さく祈るように触れると、ゆっくりと皮膚が閉じ、赤みが残る程度となった。


「ありがとう……! こんなに安く治してもらえるなんて助かるわ」


若い女性冒険者の中では、傷があまりつくと結婚の時に困るので傷口が残らないようにしたいという願望があった。しかし都の治癒院に行くと、高額の請求をされるため、冒険者仲間価格で依頼できるコリーの存在は、貴重だった。


 男性冒険者たちはどうかといえば――


「傷跡が残った方が武勇伝になるからな!」

「女にモテるには、ちょっとくらい傷が必要なんだよ」


 と、薬草で済ませてしまう者が多かった。


 その様子にナカムラは笑いをこらえながら言った。


「……まあ、どっちが得かは本人次第だな」


 コリーは少し不思議そうに首をかしげる。


そろそろ、新しい土地、新しい挑戦をする時期かもしれない。そんな予感が胸の奥で膨らみはじめていたのだった。

ご愛読ありがとうございます。3連休の皆様、明日から無理せずやっていきましょう。お仕事だった方、お疲れ様でした。

この物語を始めて、3日間が過ぎました。たくさんの人に読んでもらえて嬉しいです。

連休も終わり、投稿の頻度が下がっていくと思いますが、2~3日に1回は投稿したいと思っています。よろしければ皆さんのお声も聞かせてください。

感想、質問などお待ちしております。

今後ともよろしくお願いします。

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