表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なりきり閻魔ちゃんの冥界ライフ ー私の人生、死んでからが本番ですー   作者: バラモンジン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/67

49. 三庁舎合同夏祭り

 閻魔庁の喫茶室の奥で、梅子と橘、大伴の現世組三人が、額を寄せ合っている。

 夏祭り実行委員の役員会だ。三人で内容をある程度詰めたら、実行委員を集めて、準備の役割分担、当日の仕事を割り振る。

 こんな時にも、橘と大伴は優秀で、梅子はひたすら感心している。


「あんまり盛りだくさんにしたくないんだよね、年々エスカレートしていくのが常だから。飲食は無し。できれば全員参加型がいいと思うんだ。となるとミニ運動会的なものかな」

 大伴は、実行委員会の時限定で、口調が砕ける。梅子もその方が接しやすくて助かる。

「そもそも運動会を知らないでしょうから、単純で、勝ち負けがはっきり目に見えるものがいいですね」

「そうね、最初は、チームごとに人を一か所に集めるというだけでも難しいと思うの。日本人が子供の頃から体に叩き込まれてきた集団活動は、一朝一夕じゃあ身に付かないから、二つの競技で精一杯ね」

 海外留学経験もあるという橘は、日本の狭い学校社会しか知らない梅子にとって、思い込みを打ち砕いてくれるありがたい存在だ。



 委員会を数回招集して、いよいよ地獄の釜の蓋が開いた。


 結果は、大盛況だった。

 宋帝王、五官王、閻魔王の三庁舎をそれぞれ二つのチームに分けたので、庁舎同士の競い合いの他に、庁舎内でも対抗することになったので、熱も入った。

 閻魔様の分身も、宋帝王も、五官王も、そろってこっそり見に来ていたので、気づいた官吏たちは、いいところを見せようと、殊更張り切りだした。

 地獄から散策に来ていた獄卒たちが、通りすがりに応援やヤジを飛ばし、その騒々しさのせいでほかの庁舎からも見物人が訪れた。ちゃっかり混じって競技に参加している者もいた。


 委員会の面々は、入り乱れる官吏や獄卒をなんとかさばいて、競技を進めた。

 終わった時には疲労困憊ひろうこんぱいだった。


「これ、明日もあるんですよね」

 梅子が力なく言うと、

「たぶん、話を聞きつけた見物人が増えるでしょうから、もっと大変だと思うわ」

 橘さんも、ぐったりだ。

「企画した甲斐がありましたね。明日は二回目だから、委員の要領も良くなってるんじゃないかな」

 大伴だけは、疲れ知らずで前向きだ。

「なんでそんなに元気なんですか」

 梅子が問うと、

「実は、守護霊に少しだけ体力を分けてもらってるんだ。閻魔様の許可も得ているから、公式のドーピングです。こんな時こそ有効に使わなきゃ、生前の自分が浮かばれませんからね」

 大伴はそう言って朗らかに笑った後、右手の親指と人差し指をキュッと近づけた。たぶん、不満そうな顔をした守護霊の頭の輪っかを、軽く締めたのだろう。笑顔も少し悪そうなものに変わっていた。


 翌日も、前日以上の盛り上がりを見せ、三庁舎合同の夏祭りは終わった。

 後日、他の庁舎からは、来年は混ぜてほしいという申し出があったが、規模が大きすぎると収拾がつかないので、ノウハウだけ伝えて、別口の開催とすることで納得してもらった。


 梅子と橘は、寮の食堂でのんびりと夕食後のお茶を飲みながら、互いをねぎらった。

「疲れましたね」

「学生時代のノリだわ。勢いが大事」

「でも、たまにあるイベントっていいですね。私は、主催する側になったことがなかったので、なにもかも新鮮でした」

「次の藪入り、旧正月も、派手じゃなくていいから、何かできるといいわね」


 そんなふうに夏祭りの余韻に浸っていると、

「こんばんわ~、ひっさしぶり、あ、たったの二日ぶりか、元気?」

と、妙なテンションの鬼塚がやってきた。

 

 夕食のトレーを横に置いて、

「まず、これを見てくれる?」

と、テーブルの上でスケッチブックを開いた。


「わあ、リアル奪衣婆さん。そっくり、そのまま」

 鬼塚がページをめくる。

「そう! こんな顔して着物を剥ぎ取ってた。腕の筋肉すごいよね」

「木の上の着物の具合を検分する奪衣婆さん、歴戦の何かみたいに腕組みしてかっこいい」

 次々とめくられるページに、梅子が感動のコメントを投げる。


「さて、ここからちょっと、テイストが変わるよ」

 鬼塚がページをめくった。

「うわあ、デフォルメして、ブサ可愛くなってる。なんでこの顔で可愛いんだろう」

「おそらく、頭身ね。可愛いキャラクターは、キティちゃんをはじめとして、たいてい2頭身。ミッフィーは耳があるせいか2.5頭身て言われてるわね」

「確かに、奪衣婆さんのあばらが浮いた体が小さい。着物をぶん投げる腕も短くてかわいい」

 梅子の賞賛は止まらない。


 鬼塚は二日間みっちりスケッチをして、それを梅子にべた褒めされて、これ以上ない休暇となったのだった。



 こうして、参加した全員の満足の内に、地獄の釜の蓋は閉じたのだが、後日、閻魔様から、

「我も競技に参加したかった。次はなんとかしろ」

という難題を持ち掛けられた。

 梅子はすかさず大伴にその旨を伝え、責任を彼に押し付けたのだった。



読んでいただき、ありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ