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暴走電化エデン!(改稿中)  作者: 友利色良
第一章 暴走勃発
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第一話 やがてお掃除ロボットでさえ俺達を殺しに来るのか? 5


『ってか、青森さん大丈夫か?』

 

 捕獲したリュウグウノツカイが、もしかして大暴れするかも、と考えたがリュウグウノツカイはシャットダウンされ、完全に機能を停止してワイヤーに絡まったまま横たわっていた。


「おぉ、帰ってきたか。ホンマにようやった!」

 

 そうたたえてくれた青森さんに続いて。


「かなり危ない作業だったが、いい物を見せてもらった。ただ、急がせてすまないが、君達はすぐに消えた方がよさそうだ。そろそろ騒ぎが拡大しているかもしれん。警察がもし来たらうまく言っておくから」


 梶さんもそう言ってくれた。


「ありがとうございます。申し訳ありません。お言葉に甘えさせていただきます。次秀、フルハーネスの推奨とブレーキを同時に押してくれるか」


「え、はい」


 言われて押すと、俺を受け止めたエアバッグが縮こまってぷかぷかと戻ってきた。

 縮むと携帯用のカッパより小さなサイズになるんだ。


「では、失礼いたします。ご迷惑おかけしました」


 荷物をまとめて青森さんと俺は速やかに屋上から立ち去った。

 


ーーーーーーーーーー◇eden◇ーーーーーーーーーーー


 

 地下の駐車場まで降りた俺達は、回収したリュウグウノツカイや、俺が着ていたフルボディハーネス、そしてウインチを社用車であるプロボックスに急いで片付ける。


「早く片付けて、車の中から会社に連絡するか……ら」


 青森さんが俺の後方を見て言葉を止めた。

 突然、その男は俺の背後に現れた。

 名前の入ってない作業服風の紺色のブルゾンを着た、五十歳ぐらいの男だった。

 背丈は百七十センチぐらいか。目の縁にはっきりと隈がある、やつれ切った顔をしている。

 走ってきたのか、それとも病気なのか、両肩を上下させて息を切らしている。

 いつ倒れておかしくない。

 ただ、どこにでもいそうなこの男性には、奇妙な存在感を示していた。

 それは言わば巨大な岩が道をふさいでいるかのように、そう俺には感じた。

 そんな男が青森さんと俺を、何も言わずにただ黙って見つめる。

 そして、天井のある一点に視線を移す。

 青森さんが俺を柔らかく退かせながら男に近付いた。

 その青森さんの所作が男に対して、底の知れない危険を感じ取ったのが分かった。


「あの、何でしょうか?」


 青森さんが発したのは営業の口調ではなかった。

 この男、何者。

 そんな疑心暗鬼が伝わってくる、一音、一音をはっきりとさせた発音で、明らかに警戒していた。


「君たちはエデンの社員、その特殊派遣の方だね」


「はい、そうですけど……」


「今、上で機械生物を取り押さえていたな」


 男の言葉に青森さんが、警戒した表情から柔和にゅうわな表情に一変させて微笑みながら。


「あ、今先ほどの事はデモンストレーションでして、このビルにセキュリティを使用する上で、機械生物を放ちまして……」


 事情を理解しているせいもあるが、矢継ぎ早に釈明をするその話し方が、俺には言い訳に聞こえた。

 青森さんはこの男をクレーマーか、またはエデンが失脚をすればなんらかのメリットが得られる者か、そう感じているらしい。

 ここで会社の弱みを見せてはならないと。


「いや、誤解しないでくれ、決して糾弾などしない」


 言いながら男は視線を天井付近へと散らす。

 何が気になっているのか?

 その視線を追うとその先に。


『監視カメラ……?』


 見られたらマズい事でもあるのか、男は俺達の元に来た時から監視カメラを気にしていた。

 追われているのか?

 だがもしこの男が犯罪者だったら、逆に監視カメラから目をらすはず。

 見つかると危険と感じる者は、監視カメラから逃れようとして、見ない見えない素振りをすると、以前、犯罪心理を書き記した本で見た。

 

「時間が無い。申し訳ないが用件だけを済ませてもらう。これをあなた方に預かって欲しい」


 そう言って男は、ポケットから何かを取り出した。

 それは一通の封筒だった。


「何ですか?」


「危険な物じゃない。気に入らなければ後で捨ててくれればいい」


「はぁ?」


 意味が分からない事を言う男に、青森さんが口を開いてあきれた。

 そんな青森さんに一歩近づいた男が。

 

「さっき機械生物が勝手に動いて、意思をもったように何かしゃべったりしなかったか?」


 と、口元をほとんど動かさず腹話術のように声を発した。


「!!」


『この人、リュウグウノツカイに起きた事を知ってる。もしかしてこの人が操縦者オペレーターか?』


「……あんた、お客さんやないな。それにメディア、マスコミでもない。もちろん警察でもない。オッサン、何者や?場合によっては……」


 青森さんが男に手を伸ばす。

 その手に男が持っていた封筒を無理矢理に握らせた。


「すまない! 君たちにそれを託す。そいつが無ければ君たちエデン……いや、この国は無事では済まなくなる」


「何言うてるかさっぱり……あ! ちょっと!」


 言うだけ言って男が逃げた。


「青森さん! 追います!」


 事情が分からないなんだか危うい事に、会社と俺達が巻き込まれるなんて冗談じゃない。

 そう振り返った俺に。


「待て! 次秀! 追うな!」


「はい?」


 青森さんは呼び止めた。


「あのオッサン、監視カメラをずっと気にしとった。つまり姿をさらすのはかなり危険やったみたいや。そんな危ない橋渡ってまで俺達に接触してコレを渡したんや。今、追いかけたらもっとヤバい事に巻き込まれる……気がする。だからほっとけ。これは帰って部長に報告して部長の目の前で開く」

 

 そう封筒を目の高さまで上げた青森さんの胸元で、携帯の着信音が鳴った。


「今度は何や……」

 

 今の一瞬で疲れた青森さんは、項垂うなだれながら携帯を取り出して。


「ちょうどよかった。村井部長からや」


 と、含み笑いをした。


「はい、青森です……はい。リュウグウは回収しました。次秀が活躍でです……え……。はい?……なんですかそれ……」


「どうしたんです?」


「分かりました! すぐに戻ります!」


 慌てて電話を切った青森さんの表情は暗く青い。


「次秀……今回みたいに回収したロボットや販売ルートに乗せる事が出来へんかった、そんないわく付きのロボットがどこに行くか知ってるか?」


「いえ……」


「会社の敷地の最南端にある倉庫や。俺達はパンドラの墓場って呼んでるとこやねんけど……」


「……そこがどうかしたんですか?」


「……破られたらしい。中に入れてあった大量のロボット達も、忽然と姿を消したそうや」


「え!?」


 驚いてはみた。

 しかし、事の重大さにまだピンとこない俺は青森さんの次の言葉を待つ。


「今のあのオッサンがなんか絡んで……いや、分からんな。とりあえず次秀、すぐ会社に戻るぞ」

 

 


 

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