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暴走電化エデン!   作者: 友利色良
第二章 アミューズメントスター編
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第二話 プロローグ 根っこが真っ直ぐに腐っている男、西条 公彦


 外は、もう西陽が差していた。

 六月上旬の夕暮れ時。ボクの眼鏡がその陽射しを、七色にして受け止めている。

 春はさっさとどこかに行っちゃって、夏が来日コンニチハして来てるのを全身で感じるほど、蒸し暑さがにじり寄って来てる。


 それはそれは、さっきからずっと。


 じめっ! そして、ねっちょり! とした空気がボクの全身をめるから、うっとおしい季節感がひとしお。

 

 こんな日はダラダラと労働してちゃあいけない。

 早々に仕事を終えて帰宅する。

 それが有意義ハレルヤってものさ。

 だけども。


 そんな有意義を理解しない人達がいる。


「んなアホな……もうおらへん」


 室内からボクの後を追って出て来た関西人あおもりが絶句した。

 あまりに見事なボクの身の伏せ方に驚嘆して、言葉を失ったらしい。


西条アイツはあまり速く走れんはずだ!」


 と、村井部長が喧々(けんけん)と、いつもながらの怒号を発すると。


「本当にこんな時だけは素早いんだよなぁ……。西条は……」


 そう大南さんが関心して、川藻のような髪に覆われた頭を掻く。

 そんな二人の上司おじさん達は、ちょっぴりまなこの血の気を多くしている。

 ボクとは全く情報処理かんがえかたが違う、二人の上司。

 普段からいかめしい顔が、さらに苦渋くじゅうの濃縮還元さながらの仏頂面ぶっちょうづらだ。

 

 ハァ、やれやれ。

 気難しさが、顔に満ち過ぎだよ。

 

 まぁこの人達はいつもこうだね。

 

 頭痛や吐き気をもよおす、まるで低気圧のような無理難題の事件や事故を運んでくる。


 そんな災難に愛されているのは、会社かこの上司おじさん達か分からないが、全くもってやれやれだ。

 

 だいたい特殊派遣課に左遷させられるような失態はしていないはずなんだけど。


 ボクがやった事といえば、まず社命で遊園地テーマパーク向けのロボットを開発。

 そのロボットを販売したら、知能おつむがウイルスに侵されました。


 するとその後、突然、人事部長と常務のお偉方が、セットで開発部までやって来て。

『これらを開発した奴は誰だ!』と訊いてきてだ、その問いかけに。


『それはボク達ですが』と、答えると。


『お前達か! なら責任をとれ! 出向して回収してこい!』と、命令を下され、即席で設立したこの特殊派遣課に、そんな勢いのまま異動の辞令を渡された。


 あまりにも理不尽ジャイアンと言えよう。

 普段から率先して仕事をサボる、会社内では自然愛オーガニックな生き方を心得ている、このボクが一体何をしたって言うのか。


 まぁ、ウイルスに簡単に侵入される人工知能えーあいを開発した点については、ほんのわずかばかり非があるかもしれないけど。

 

「アイツの事だから、どこかで俺達の事を見てるはずだ」


 隠れているボクから1メートルも離れていない所でふと、脳筋ゴリゴリな水島君が、恐ろしい直感を働かせた。

 

 うん。正解だ水島君。立派、立派。


「よほど行きたくないんやろな。まぁ、アイツと俺はどんだけ危険なロボット達がおるか知ってるからな……」


 やや顔を青ざめさせて青森が呟く。

 ボクと一緒に開発したのだから、とても厄介な現状になっているかを、青森も予測できているのだ。

 だったら青森もボクと同様に、巻き込まれる前に逃げ出せばいいのに、と思う。

 

 行雲流水ハクナマタタな生き方でよいのだよ。


 そんな水島君と青森の発言を、静かに聞いていた後輩、次ちゃんが。


「あの、そんなにも恐ろしいのがいるんですか?」


 と、またタラちゃんみたいに訊く。その返答として青森は黙って頷いた。


「今日、遭遇したロボットよりも厄介ですか?」

 

 さらなる次ちゃんの問いかけに「今日のヤツらとは比べもんにならん……」と、青森が自前のマッシュルーム頭をフリフリと振る。


 そんな青森と次ちゃんの会話を、聞いてか聞かずか、大南さんが。


「分かった、西条! 今回のケースは事故だと断定する。お前やウチの社員に非はない。だから、無事に解決できたら特別に報酬を出す!」


 と、とんでもない事を言い出した。


 特別報酬……。

 絶対に普段は言わない文言だ。


「ちょっと……大南さん」


 村井部長が隣で静止しようとすると、大南さんはなおも続けて。


「百万……と言いたいところだが……」


 川面で踊る藻のような髪をなびかせて、考え深そうに大南さんは被りをを振る。

 

 な〜んだ……。

 この言い方は理由や理屈を付けて、金額をドンドンすり減らしていくパターンだね。


 冗談じゃない。


 あの人工惑星に出荷した『アイツら』が暴れているんだとしたら、間違いなく殺される。

 

 誰がそんな死地へ行くものか。


 死んだら何もできない。

 命があるからお金が使えるんだよ。

 課金や投げ銭、投資に暴飲暴食。


 全ては生きているから行える、ボク御業パルプンテ


 人として生まれただけで、丸儲け。

 誰が手放すものか。


「三百万だ! 特別報酬として用意する! 会社が反対するなら俺、個人から出してやる!」


 一切の妥協もなく大南さんがそう言った時。

 ボクの体は、ボクを裏切った。


 三百万円。

 

 予測と想像を超えた命の競売に、体が勝手にその金額に釣られて反応した。


 瓦礫となった車の下に瓦礫の一部と化して、うまく隠れていたのに、やにわに立ち上がってしまった。


「お前……あの一瞬で、ようそんなとこに隠れられたな……」


 ボクのあまりに見事な擬態に、青森が感心してマッシュルームの髪をき上げる。


 その青森と次ちゃんをかき分けて、後方にいた大南さんがボクへと一歩近づく。

 そして怪しげに微笑を浮べて。


 「協力感謝する」

 

 そう、ぬんめりと言った。


 大南さんのその言い方に、ボクは心から思った。

 あぁ、本当に馬鹿な選択だ。

 




 

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