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暴走電化エデン!   作者: 友利色良
第一章 暴走勃発
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それでもボクは安定していたい


「おま……! ふざけるな! さっさと出せ!!」


 ドンドンドン! 

 

 ドアが割れそうな音を響かせる。

 そのドア向こうでは、ものすご〜く必死な形相でドアをドラムのごとく叩いている青森の姿があるんだろうね。


 その顔と姿が目に浮かぶよ。地獄の亡者って感じなんだろう。


 だけどね……ボクは……危険な事に巻き込まれたくないんだ。

 

 ゴメンヨ青森。


 心の中で形だけ謝るから……。

 どうか許して欲しい……。

 不憫な青森よ……。


 よし、さてと。


 これでずっと観察したかった事を今ようやく出来る。

 こんな状況でしか確認が出来ない事。

 

 その内容は。

 人が死に値する身の危険を感じた時、あるいは死の宣告をされた時、それらを受託するのに5段階の心境の変化が起こるという。


 それは、否認・怒り・取引・抑うつ・受容という過程だそうだ。


 いつか読んだ本にそう書いてあったんだよね。

 

 この過程については諸説……というか、そんなモン誰にでも当てはまるわけないだろ! って意見も多々ある。


 実際、ボクも疑ってはいるけど、青森の今の抗議は ”否認と怒り” にまず間違いない。


 青森はもう過程を二つもなぞっているんだ。

 やはりそうなのか。

 あと三つの過程をこのままきっちりと青森は追うのか?

 実に興味深いね。

 絶好のいい機会だ。

 これはこれは検証のやりがいが……。


「ちょっと! 西条さん困りますよ!」


「ん?」


 振り返るとホテルの偉そうな人、支配人が結構な剣幕でボクを凝視している。


「はい?」


「『はい?』じゃないですよ。ちゃんと、キッチリ対処して下さい。大怪我でもしたらどうするんです」

 

 一瞬、キョトンとしてしまった。

 青森やボクがどうなろうと、この人達は助かるってのに……。

 ちょっと言ってる意味が分からない。


「えぇと……アイツがもし怪我をしたら何か困るんですか?」


 あれ?

 訊いたら今度は支配人の方がキョトンとしてるよ。

 どういうワケか、ボクは昔からこんなシーンに度々出くわす。

 その都度、人格破綻者とか言われるんだけど。

 

 まぁ、気にしてないんだけどもね。


「いや……困るんですかって……困りますよねぇ? それとも仕事仲間をたった1人で危険な状況へほっぽり出すのは、よほどの解決策がおありなんでしょうか。この階にはまだ他のお客様もいらっしゃいますので、今からなさる妙案を是非ともご教示いただきたい」


 顔をズイ、と近づけてきて訊いてきた。

 なんだかその言い方が、映画や海外ドラマに出てくる嫌味たっぷりなイギリス人の言い回しに聞こえた。


 あ、そうか。それでわかった。

 これ嫌味で言ってんのか。

 この後予想できそうな問題(例えば青森が瀕死に陥るとか、他の客のとこへケルベロスが出向いて怪我を負わせるとかだ)などノープランで青森を閉じ込めたと思ってるんだ。

 

 うん。するどいね。

 今のとこプランなんて全くない。

 だってちょっとした検証をしたいが為に、青森を閉じ込めたんだもんねぇ。


 仕方ない少し考えるか。

 ふむ。

 この支配人さんの懸念を含め、この後にボクの身に起きそうなイヤな出来事がふたつは起こりそうだね。


 まずひとつめ。

 

 青森がもしケルベロスを大人しくさせる事が出来たとする。

 そうなると戻って来た時、烈火の如くボクを怒るだろう。

 そうして会社にも連絡が行きボクはなんらかの処分を下される。


 これがまずひとつ。

 そして今言った支配人さんいわく。

 自分が助かりたいもしくは楽をしたいが為に、ボクが勢いに任せてふざけた行動を取っている。

 そう支配人さんは考えていて、この後、いてはこのホテルの評判に差し支える。


 これもおそらく会社へ厳重な抗議をされてだ、先の青森とダブルでボクはなんらかの処分を下される。


 この二つを解決するに、えぇと……。


「……お考えが変わられましたか?」


 支配人がそう訊いてきた。

 まぁ、よくよくこの人もこの人でボクの事をだ、ケルベロスに対するにえにしようって腹なんだろう。

 

 ふざけちゃいけない。

 ボクは残念ながら会社の責任をそこまで背負ったりしていない。


 よし。

 分かった。

 やってやろうじゃないか。

 



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