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暴走電化エデン!   作者: 友利色良
第一章 暴走勃発
15/29

第一話 やがてお掃除ロボットでさえ俺達を殺しにくるのか? 14


――――――――――――eden――――――――――――



「やっぱり……やっぱり来たわね! 絶対にここから出て来ると思ってたわ!」


 俺達が表に出た途端に、女の子の声が響いてきた。

 その声の持ち主を確認した西条さんが。

 

「うん、やっぱり居たね」


 と、変な確信を得ている。

 

「”居たね”やないやろ。なんかアレ、ヤバそうやぞ?」


 左方向で少し距離を置いた場所に、スーツ姿の小綺麗なおじさん達が四人、ゆらゆらと覚束おぼつかない足取りで揺れている。

 

 その背後に白いパーカーを着た女の子、梅子が腕を組んで立っていた。

 

 やっぱりさっき見た子と同じだった。

 この彼女? が梅子で、えぇと……。


『ちょっと待って、あのおじさん達って……』

 

 俺が並んでいるオジサン達を見て、不安な顔をしていると。


「えぇと、左から審査の平井常務に、総務の橋川部長に……あと誰だろ?」


 西条さんが、野菜コーナーでジャガイモ、ニンジン……などを選んでいる時のように淡白に言った。


「榊原専務と業務の浪川部長や。お偉いさんばっかり」


「そっか。でも、あんな動きの鈍そうなオジサン達をどうするつもりだろ?」

 

 俺達が訝しんでいると。


「私は肉の壁を作ったのよ! 西条さん」


 意気揚々と梅子と呼ばれるアンドロイドが言った。


「”西条さん?” お父様と呼びなさい」


 今度は西条さんが子供を叱りつけるように言う。

 

 えーと……。


 何? このやりとり。

 俺が不思議そうに、西条さんと梅子を目の動きだけで交互に見ていると。


西条アイツな、製作者やと堅苦しいし、博士って呼ばせたらじいさんみたいやから、お父様って呼ばせてるんや」


 そう、青森さんがちょっと呆れて笑う。


「梅子は一体、何がしたいんだ? その人達をどうするつもりなんだよ」


 指を指して西条さんが訊く。


「私は、私のしたいようにさせていただきます。それには私の製作者である、西条さんが邪魔なんです。よってこの人達を盾として……」


 言った梅子は、上目遣いで怒りの表情を浮かべて。


「あなた達に消えてもらいます」


 そう言った。


「分からない。なんでその上層部のおじさん達を盾に……」


「アハハハ! そう! 上層部。だから盾にするの。社畜である西条さん達は、決してこの人達には逆らえ……」


「グエハッッッ!!」


 突然。

 誰かが苦しみに悶える悲鳴を上げた。

 その声の主は、左端に立っていた平井常務だ。


 何が起きているのか、一瞬分からなかった。

 平井常務の体は、地上から三センチばかり浮いている。

 その原因は、鳩尾みぞおちに膝をぶち込まれているからだった。


 膝の持ち主は西条さんだ。

 

 西条さんがとんでもない速さで、平井常務にまで距離を詰め、その鳩尾に膝蹴りを突き上げたのだった。


「オ、オイ、サイジョウ……。オマエ……ナニシトンネン……」


 突拍子もない西条さんの行動に、青森さんがカタコトになる。

 そして、梅子といえば。


「え……!? え? ………えぇ? ちょ……え?」


 目の前にいる西条さんに対して、言葉を失っている。

 

 初めて見た。

 AIえーあいが何にも喋れなくなってるところ。

 

 あるんだ……こんな事って。

 何? ローディング中なの?

 あの矢印が梅子このこの中で、ぐるぐる回っているのか?


「だってほら、部下が上司を守るのは当然だろ? 怪我する前に気絶させて保護したんだよ」


 なんて事を西条さんは髪をかきあげながら、押し付けがましいほど爽やかな表情で俺達に言った。


「お前、社内のカメラで映ってるんやぞ……。バレたら減給ぐらいじゃ済まへんぞ……」


 言った青森さんの表情は限りなく暗い。


「大丈夫だよ。監視カメラを管理してる警備システムのIDとパスコードぐらい、もちろん手に入れてる。後でサッと映像をイジっておくよ」


 そんな事を言いながら。


「ガフッ!」


 オジサン二人目。


「アガッ!!」


 オジサン三人目。


「アゴッッッ!!!」


 最後のオジサン四人目までを、両手をハンマーのようにして、次々と打ちおろして気絶させてゆく。

 

 その所作。

 

 雑草を刈るがごとく……。

 

 本当に……ヤバい人だ………。

 この人の方が暴走アンドロイドじゃないの?


「……お前、まさか常習ちゃうやろな? 普段からしてるんとちゃうよな……?」

 

「だったら、もっと出世してるよ」


 そうして四人のオジサンをまんまと倒した西条さんは、梅子の方へ向き直り。


「甘いよ梅子。普段から抑圧されている全国の会社員は、弱っている上司を見ると闘争本能が上がるんだ。情報不足だね」


 言われた梅子は悔しそうに、歯を食いしばり「そんなはずないでしょ! バッカじゃないの!? クビになりたいの!」


 と罵声を飛ばす。


「大丈夫だ。ところで、お前を操っているのは誰なんだよ。答えなさい腓返 梅子」


 詰められた西条さんが、すっぱりと話を切り替えた。


「クソ………この変態開発者め……。私は誰にも操つられてない……。私は……」


 訊かれた梅子がジリジリと後ずさる。


「自我を得たのよ!」


「そんなワケ無………あ! コラ! 待つんだ!」


 西条さんが尋問している最中に、背中を向けた梅子は走り出した。

 しかし逃げられた西条さんは冷静に。

 

「よし。二人とも後を追うよ。梅子に付いていけば誰が操作してるのか……ん?」


 そう俺達に振り返って言った西条さんが、巨大な影に覆われた。


 そして、俺達の頭上にも分厚い雲が現れた。

 その雲がなにやら大きく上下に揺れている。


「な……何?」


 西条さんが空を見上げて珍しく狼狽した。

 雲の正体を見て驚き目を丸くさせた。


 刹那。


 ゾン、と白銀のシャワーが、走り去る梅子がいる一面に降り注いだ。

 雲に見えたもの。

 それは真っ白で巨大なドラゴンだった。


「スノードラゴン……これは……味方か? 味方やんな?」


 ドラゴンを見上げた青森さんが声を震わせる。


『デカッッッ!』


 飛翔しているソレは全長、十メートルはありそうな白いドラゴンだった。


 そのドラゴンがブリザードを、梅子に向かって吹きつけたのだった。

 

 そのおかげで梅子は『さっぽろ雪まつり』の像と化してしまった。

 走り去る体勢のまま、『ピクトさん』のように固まって凍りついている。


 そのドラゴンが。

 

 巨大な翼をゆっくりと羽ばたかせて。

 

 旋回した。


 そして、俺達の頭上にまでやって来ると、そこで停止した。


「おい……。これって……」


「うん……。なんかヤバそうな雰囲気だね。味方じゃないみたいだ……」


 俺達の所まで戻って来た西条さんに、青森さんが逃げるサインを親指で送る。


「ええか? 一斉に走り出すぞ……」


「あの……上層部の人達はどうしましょう……」


 先ほど西条さんがぶっ倒したお偉方は、地面に突っ伏してピクリとも動かない。

 完全に気絶しているもよう。


「大丈夫……。例え凍ってもすぐにお湯とかぶっかけたら大丈夫」


 そう言った後、西条さんは「なんなら凍ってくれた方が、ボクとしては都合がいい」と、補足する。

 いいのかな……。


「よし。行くよ……」


 ガオン、ガオン、ガオン………。

 頭上、約二十メートルほど上にいる、スノードラゴンが何やら恐ろしい音を立てている。








 





 

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