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暴走電化エデン!   作者: 友利色良
第一章 暴走勃発
12/29

第一話 やがてお掃除ロボットでさえ俺達を殺しに来るのか? 11


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜summary!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ーーーこれまでの暴走電化エデンは……ーーー



 会社内なのに俺……拉致されてる……。

 江戸川電機産業(株)に勤める二階堂 次秀は朝、出社と同時に拉致された。

 辿り着いた先は、ブラックな課と名高く変人社員の集まりと社内でも有名な特殊派遣課だった。

 

 以前に話があった人事異動をためらっていたら、どうやら実力行使に出たらしく、今日一日働く事となった。

 

 そしていきなり特派の業務で出向。

 先輩にあたる青森と二人で業務にあたる事となった。

 向かった先は虎ノ門ヒルズ。

 そこで暴走した挙げ句、しおれた鯉のぼりみたくなっている機械生物、リュウグウノツカイを捕獲せよとの事。


 なんとか命からがらリュウグウノツカイを捕獲した二階堂達であったが、ビルの駐車場で怪しい男に声を掛けられて一通の封筒をその手に押し付けられた。

 そんな一連の出来事を、部長である村井に報告しようとしていた青森の携帯に、一本の電話が鳴った。


 その相手は村井、その人であった。

 掛ける手間が省けたと思った青森だったが、村井の口から驚愕の事実が知らされる。


 暴走して回収騒ぎを起こしたロボット達が収められている、通称、墓場倉庫が破られ、収納されていたロボットの全てが忽然と消え去った!


 突然の出来事に何が何やら二人は分からないまま、青森と二階堂は急ぎ社へ戻る。

 そんな帰りの車中で、あの男から渡された封筒の中身を改めると、そこにはレンタルルームの鍵が一式。

 ルームの中に何が入っているのか気にしていた二人に、今度は西条からの伝言があった。


 そこには。


”会社へ近づいたら絶対に声を出さない!喋らない事!”


 とだけ書かれてあった。

 

 全く意味が分からない二人は、西条が待つ特派のオフィスへ戻る。

 オフィスへ辿り着くと、絶命しかけているハムスターのごとく、備品室で隠れていた西条に備品室内へと引きずられた二人は現在の状況を知らされる。

  

 墓場倉庫から現れた、催眠術をかける機能を持つアンドロイド、腓返こむらがえり 梅子うめこが、自分達の命を狙って社員達をけしかけていると。


 そう西条から説明を受けた矢先に。

 同僚の水島と御堂が現れた。

 水島と御堂の二人は、見事に催眠術をかけられており、その場にいた青森、西条、二階堂を襲いかかった。

 

 水島に吹き飛ばされ意識を失ったはずの西条は、気絶したままこの事態を収めてしまった。

 しかし、当の西条にはやり遂げた記憶が無く……。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜NOW!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ーーーそして現在……!ーーー

 




ーーーーーーーーーーー◇ eden ◇ ーーーーーーーーーー



「何、馬鹿な事言ってんだよ。そんな事が起こるわけないだろ」


「ホンマやっちゅうねん! お前がやったんや!」


 椅子の上で気絶していた西条さんは、約三分後に意識を取り戻した。

 西条さんが一席に座りその周りを、俺達が取り囲んでいる。

 そんな西条さんに今しがた起きた事を、青森さんが伝えているが、頑なに否定している。


「黄色い頭した鬼狩りじゃあるまいし、話を盛り過ぎだって」


 ”鬼狩り”のワードで、西条さんが手刀で首を斬る仕草をする。


「一ミリも盛ってへんわい。いや、もうええわ……助かったんやし」


 頑とした西条さんの姿勢を崩せそうにもない。

 その様子に諦めた青森さんは「しかし……」と、話を仕切り直す。

 

「誰が一体、俺らにこんな真似したんや」


「そりゃ俺達が共倒れしてるとこを見て笑っていられそうな奴だろ?」


 共倒れ……。

 なんだろう。何か引っかかる言葉だ。


「誰やそれ」


「全く……。誰だか分からんが、こんな回りくどい事をしなくても西条ぐらい、いつでもぶっ飛ばしてやったものを」


 水島さんが腕を組んで言い放った。


「あの……ちょっと? 水島君?」


 水島さんが言い放った毒に西条さんが呼び止める。

 すると御堂さんが。


「ちょっと待って。”誰か”がこんな事態を引き起こすのは難しいんじゃないかしら?」


 そう問いかけた。

 西条さんが気絶している間に、水島さんと御堂さんの二人には青森さんが起きた出来事と今の状況について話している。

 その際に御堂さんは俺に何度も謝ってくれた。操られていたから仕方ないです御堂さんのせいじゃありません、とそう伝えて事なきとした。


「難しいって?」


 西条さんが御堂さんに小首を捻って聞き返した。


「西条君。セイレーンの催眠の機能について誰かに話した事ある? ずっと一緒に仕事をしてる私達ですら、そんな機能があるなんて知らなかった事よ」


「ホンマや。俺も告白されて今日が初耳やったわけやし」


「そういや誰にも話してなかったね」


 青森さんをスルーして、西条さんは御堂さんに真っ直ぐに答えた。


「だとすればセイレーンを使いこなせる人はいないって事になるんじゃない?」


「うーん……。盗んだ奴が機能を偶然に見つけたんじゃないかな」


「あの墓場倉庫が荒らされたの、今で二時間経過するかしないかよ? もし、実行するなら盗んだ後、一時間も経たない内に、機能や動かし方を理解してやってのけた事になわ。可能性としては無理に等しいと思うんだけど」


「そうか……。言われてみれば確かにそうだ。やっぱりボクっていう天才の作った物は、そう簡単に他人が理解できる物じゃない」


「うるさい。黙れ。オッペン・ハイマー」


 西条さんの言葉に青森さんがツッこむ。そのやりとりを横目に見ていた水島さんが。


「じゃあ、あの倉庫を荒らした奴が全てやってのけた可能性は無いわけか。セイレーンを動かした犯人は別の人間か」


 そう言った水島さんに、御堂さんは首を振って。


「ううん、一人だけいるわ。倉庫を荒らしてセイレーンを操る。その両方をこなせる人が……」


 そう言って目の前で座っている人をジッと見つめる。

 その御堂さんの視線を追従ついじゅうするように、青森さん、水島さん、そして俺も、そこに座っている人のつむじ辺りをなんとなく見つめる。


「ちょ! ちょっと待って! ボクを疑ってるの!?」


「そや。冷静に考えたらお前しかおらん」


「もういいだろ西条。白状するんだ、今ならまだ”おふざけ”でなんとか済ませられる。服役は免れるぞ?」


「あのね? ボクも一緒に巻き込まれただろ? しかも水島君に吹っ飛ばされて気絶したっていうのに!」


「はぁ……。お前は計算高いからなぁ……。無駄に賢い」


「君たちねぇ……。いい加減に……」


 眼鏡を覆うようにして片手で押さえながら、西条さんは呼吸を荒くして肩を震わせる。

 屈辱を受けた時に西条さんが見せる癖なんだな。


「ウフフ……。ごめんなさい冗談よ。西条君は仕掛けた渦に巻き込まれている人を見て、陰でひそかにニヤニヤ笑っているタイプだもの。自分自身も痛い目に遭いそうな事なんてしないわ」


 口元に手を当てて笑う御堂さん。

 結構、毒舌ですねぇ。


「ありがとう。とりあえず御堂さんの中でのボクの評価は、陰険であさましいって事がよく分かったよ」


 机の上に肘をついて、その先の握り拳に額を乗せた西条さんは、深い深いため息をつく。


「お前の普段からの行動を言っただけやろ」


「全くだ。きっと来世でも西条は同じ事を言われるはずだ」


「あのね二人とも!? ボクをディスるか、事態の収拾を図ろうとしてるのかどっちなの?」


 机をバン!と叩きながら、西条さんが訴える。

 が。


「どっちも収拾しなきゃならん事だ」


 水島さんは意にも介さない様子だ。


「しかし、ええ加減……ここから動かなあかんな。表はまた面倒な事になっとるやろし。このままやとここで皆、一網打尽にされるかもしれん」


「そうだな。しかしどうする? 様子を見ながらその、腓返ってアンドロイドを探すしかないか」


「西条君。セイレーンの機能……その催眠術はどれぐらい持続時間があるの?」


「うーん……。操れる時間を計ったことないから分からないなぁ……。なんらかのショックを頭部に受けるか、目的を達成するかのいずれかが起きると一番手っ取り早いんだけど」


「それやったらその時、俺らの残機は確実に減っとるぞ」


「まぁ、とりあえず………」


 言って西条さんは立ち上がり。


「ちょっと行ってくる。と言ってもすぐ戻るけど」


 机の上に置いてあったナマコを手に取り、そのまま社屋の廊下の方へ繋がるドアへと歩き出す。


「お、おい、どこ行くねん」


 青森さんが呼びかけると。


「人は皆、ここへ行く為に生きている……。その場所だよ」


 振り返った西条さんは眼鏡を押し上げて「フッ……」と、なにやらはかなそうに言うが。


「……なんやそれ。だからどこやねん」


 やっぱり理解出来ない事を言うので、青森さんがこの場にいる皆の代表で尋ねた。


「”トイレ”に決まってるだろ」


 さも当然と提示した語彙に力をこめて西条さんは言うが。


「いや、スッと言えや。……っていうか、俺は少なくともトイレに行く為に生きてないつもりやぞ……」


 その理屈を青森さんは受け入れられない、とばかりに首を振る。


「それは絶対に嘘だ。ありえない」


 真剣な表情で西条さんはスッパリと言い切る。

 すごい自信だ。


「何が嘘や」


「トイレ……。そこでは皆、己の心に正直となる。美味しい食べ物や飲み物も、そこにおいては流れては消える。人生のターニングポイントについて考えたり、面白いアイデアを浮かべたり、そう、人によっては恋愛について想いを馳せたりもするだろう。誰にも阻害されない空間は皆が無意識のうちに持つ、精神と時の部屋なんだよ。わかったか」


 フン、と西条さんは鼻を鳴らす。

 意外にも真理を突いてるかもしれないと思った俺は。

「なるほど、確かに一理ありますね」と、相槌を打った。


「違う、次秀。惑わされるな。今、トイレ以外の場所でも普段から普通にやってる事も内混ないまぜになっとったぞ。説得力をつける為に、理屈捏ねてるだけやコイツは」

 

 あ……そう言われてみれば……。

 あまりに西条さんの確信めいた言い方に、簡単に納得してしまうところだった。そんな単純な俺に代わって、青森さんが論破すると、西条さんは「はぁぁ……」と、これみよがしにため息をついて。


「そんな風に揚げ足ばかり取って、了見を狭くして楽しいかい?青森」


 そう言った西条さんは横目でチロリと青森さんを見る。

 その視線は明らかな侮蔑を内包させている。


「そうか分かった。じゃあトイレはそれでいいとして、風呂は? シャワールームは? どう説明すんねん」


「はぁ? 風呂は風呂でシャワールームはシャワールームでいいだろ? お前何言ってんの? 頭、大丈夫か? 青森」


「コイ……! もうええ! さっさと行って来い! 」


「あぁ、もちろん行くとも」


 どこか満足そうに頷いた西条さんは、後頭部にナマコを当てながら部屋を出て行った。

 完全におちょくられた青森さんが「アイツ、あのナマコで脳細胞が二億ぐらい破壊されたらええのに」と言いながら、西条さんが座ってい席に掛けた。

 すると水島さんが。


「西条の場合、そうなると再生する時にもっと厄介な細胞を生み出すかもしれんぞ」


 と目を細める。

 西条さんってウイルスなんでしょうか。

 俺がそんな事を思っていると。


「さっき二階堂君に酷い事をした私がいう事じゃないけど、初日から散々よね」


 そう御堂さんが憂いを含んだ目で俺を見る。


「あはは。まるで俺って厄病神ですね」


「次秀のせいやない。なんやったらお前が居ててくれて助かったんや」


 俺の言った事を青森さんがすぐにフォローを入れてくれて。


「あ、そうや……。ちょっと訊きたい事がある。次秀、あの封筒出してくれるか?」


「あ、はい」


 そうだった。

 この封筒の事をすっかり忘れていた。

 折り畳んだ封筒を、胸ポケットから取り出して机の上に置いて見せた。


「次秀とリュウグウを回収した後に虎ノ門ビルの駐車場で、なんか変わったおじさんにコレ渡されてな」


「なぁにそれ?」


「うん。中身がな……」


 言って青森さんは封筒を逆さにして、セキュリティカードと付属の鍵を机の上に転がす。続いて一枚の便箋を取り出して見せて。


「千葉の国分台にあるトランクルームのセキュリティカードと鍵らしい。で、この便箋に書かれてるのが、こうカタカナで記入されてある”その場でラセンカナカと言って下さい”や。おそらく音声の鍵なんやろうけど、なんか心当たりあるか?」


 青森さんが訊くと御堂さんが。


「ちょっと分からないわね。水島君は?」

 

「……その、トランクルームのキーはともかく……ラセンカナカなんだが……。ラセンカナカ……カナカ……。いや、まさかな……」


 水島さんが何度も復唱して、スマホを取り出した。


「なんや水島、なんか心当たりあるんか?」


「確信はない……が。もしかすると……」


 そう言いながら水島さんは素早くスマホの画面を、タップ、スワイプする。

 

「螺旋か中? それとも螺旋化中? ランダムで起用した言葉かしら」


「音声ロックを解除する暗号やと思って、書かれた内容は全く意識してなかったな」

 

「なん……だ……と?」


 スマホ見ていた水島さんが操作を止めて表情を硬直させた。画面に釘付けとなり呆然としている。

 

「どないした?」


 青森さんが呼びかけると、画面をタップした水島さんは。


「おい、二人とも! 会ったのはこの人物じゃなかっただろうな!?」


 と、スマホの画像を見せた。

 そこには一人の男性が映っている。黒いジャケットにワイシャツ姿。ネクタイは無し。

 僅かに無精髭を生やしている。

 青森さんと俺は同時に「あっ」と声を上げた。

 間違いなくこの人だ。

 さっき俺達の前に現れた時より、今水島さんが見せてくれている写真の方が、幾分か血色はいいが。

 

「間違いない、このオッサンや……」 


「本当に間違い無いか? 特に青森ならこの人を知っているはずだが……。まさかこんな所に居るはずが無い、と先入観が働いたんだろうな」


「俺が知ってる?」


「あぁ。御堂さんも西条も、もちろん知っているはずだ。さっきの暗号めいた言葉を思い出せ」


「暗号……えと……ラセンカナカやろ……?」


 そう言われた青森さんは少し考えた後、怖いほどに目をガッと開いて。


「カナカ! 渦中かなか博士か!!」


「えぇ! ウソ!」


 青森さんに続いて御堂さんも驚き、両手で口元を抑えた。


「あぁ……そうだ。お前と二階堂が会ったのは、IRLアイルの渦中博士だ。なんてこった……」


 俺は声も出なかった。

 IRLの渦中博士。

 その人の名は知っている。

 

 元、千葉工業大学教授。その後、世界中のロボット研究者が集まるとされる、スイスにある国際ロボット研究所(Intelligence robot laboratory)、略称、IRLに研究者として派遣された、渦中かなか 健二郎けんじろう博士だ。


 渦中博士は大学教授時代、ロボットが独立して自身の電力を生み出す事のできるシステムを開発している最中に、物質を浮遊させる事が可能なレアアースを発見した。

 ロボットの為なら専門はたけ違いの開発もする、かなり型破りな人、と言われている。

 

 発見当初、特許がもし取得したら莫大な利益を生み出す大発見とマスコミに言われた。

 しかし。

 特許を取得しても大学教授に還元率が薄いとは言え、その権利を放棄し、企業に無償でこの技術を提供する事を発表。

 

 その理由が”次世代エネルギーの研究のついでに見つかった物、いわば副産物に値段はつけない”と。


 そのおかげで企業は使いたい放題となり、ありがたやーな技術が各企業でシェアされる事となった。


 その後、渦中博士は希少原子核を発見した。

 希少と言われるのは、本来、原子核同士を衝突させてエネルギーを引き起こす際に放出される、トリチウム、三重水素などがある。

 しかし渦中博士が発見した原子核は、全く中性子を生み出さない代物だった。

 そうして、渦中博士はこの原子核を衝突させて、エネルギーを生み出す超小型ハドロン衝突型加速器を開発し、ロボットの自立発電機を作り出した。

 

 それはロボットにおいて、バッテリーの心配が無くなる、まさに画期的な開発だった。

 その研究が認められて、渦中博士はIRLに招聘される事になった、と。


 中学の時、この渦中博士を神様のように思っていた当時のクラスメイトから、かなりしつこく聞かされた話で、俺は勝手に少し詳しくなってしまった。


 今思えば、俺の進路はあの彼の影響があったと思える。


「渦中博士やったんか……。しまった……知ってたらサイン貰うんやったのに……」

 

 青森さんが悔しそうに机を叩く。


「青森君。顔見て分からなかったの?」


「いやぁ……恥ずかしながら顔まではっきりと覚えてなかった」


「そう……。まぁ、そうよね。そんな人がまさか目の前にいるなんて思わないでしょうし」


「サインか……。そいつはもう無理だな」


「何?」


「亡くなったぜ?」


 言った水島さんは怖いほど真剣な表情だ。


「え……?」


「つい三十分ほど前みたいだがな。速報のニュースが入っていた」


 また水島さんはスマホの画面を、速報のニュースに切り替えて向けた。


「な……なんやと……?」


 そこには確かに今朝会ったばかりの人、”渦中博士死去”という見出しが出ている。


「青森さん……。俺達がここへ来る時にすれ違ったパトカーは……」


「あぁ、そうやな。渦中博士が亡くなった事で警察が出向いたんや……」


 全員が言葉を失った。

 水島さんが丁寧に確認するように沈黙を溶かして。


「青森それに二階堂は、渦中博士が亡くなる前に会った、最後の目撃者かもしれん。おそらく警察が事情聴取に来る。青森、渦中博士から渡されたソレをここに来る途中、警察に言ったか?」


「いや、言ってない。亡くなった事を知らんかったし伝える理由がまだ無かったからな」


「そうか、そうだよな」


 水島さんはまた腕を組んで険しい表情だ。

 

「あの青森さん」


「ん?」


 先ほど西条さんが言った”共倒れ”の言葉に、どうしても気がかりだった事があった。


「この会社の製品に問題があった時は、特派の皆さんの誰かが現地へ赴くんですよね?」

 

「あぁ。まぁ俺らか営業で近くにいてる人間かが行く事になるな。程度にもよるけど。それがどうかしたか?」


「あのリュウグウノツカイは、もしかすると渦中博士がエデンの特派を呼ぶために仕掛けたんじゃないでしょうか?」


「なに?」


「エデンの誰かにどうしてもこのレンタルルームの鍵を預けたかった。でも、何か理由があって渦中博士は動けなかったので、ジャンクショップから手頃なロボットを購入して少し改造した後に、放ったんじゃないでしょうか?」


「……そうか。それなら腑に落ちる。あの時、渦中博士はやたらとカメラを気にしとったからな。もしかすると、誰かに命を狙われてたか……」


 青森さんが得心すると御堂さんが。


「もし、二階堂君の推測が本当だとすると、そのレンタルルームに何が入れられてあるのかすごく気になるところね」


「そやな……。早く村井部長を探して伝えんと……」


 そんな話の中。

 廊下側からトトト、と軽快な足音が響いて来て。


「ちょっと、ちょっと。あのさ、皆。少し変な事が起きてるんだけど来てくれない?」


 ドアを開くなり西条さんが顔を見せて言った。



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