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《プロローグ》
《プロローグ》
私の名前は幽世方楓。名前以外は何も持っていない、至って普通の一般人…であった。
家族構成。自分の年齢。子供の頃の夢。現在の職業。自分の『人生』と呼べる記憶を全て失った者。それがこの私だ。
数ヶ月前の話になる。私は目覚めると見覚えのない部屋の中にいた。
何故自分がこんな場所にいるのか。自分は一体誰なのか。記憶を失った私の前にジョセフィーヌと名乗る女が現れ、雇用契約を結べと迫ってきた。
その後、数々の常識破りな出来事を掻い潜り、死にかけながらも何とか生き残った私は、気がついたら契約書にサインをして、この幽世館と呼ばれるホテルのオーナーとなったのだ…。
これが私が持っている人生の全てである。
