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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第三次龍鬼戦争
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第七十話 前線の崩壊 ②

 バルパライソの街と森林の境界に到着したアライアンスの陸上部隊は、その凄惨さに驚愕した。今いる高所から見える沿岸部の建物は、全てが炎に包まれている。青空には黒煙が昇り、美しかったであろう街並みを焦がしている。

 中でも、水月はこの光景に既視感を覚えていた。韓国の防衛に出撃した時も、あの街のように、あちらこちらが燃えていたのを覚えている。

 しかし、そんなことで呆気を取られている暇はない。数分前に屠月が放った航空機が制空権を維持する間に、この街に蔓延った吸血鬼を掃討しなければならないのだ。


 街に突入した部隊は、特殊盾展開装置板(ホログラムナンバー)を所有する夜桜と水月を戦闘に進んでいた。本来ならばもう少し早く進むべきなのだろうが、今回は前陸軍の者達が同行しているため、油断はできない。というのも、これが夜桜が司令官に提案した妙案なのだ。

 一方、部隊に編成されている深月や幻月は夜桜の判断に疑問を抱いていた。即座に出撃できる戦力が少ないとはいえ、この未知の危険な戦場に全陸軍の者を、しかも全員連れてくるなど、常軌を逸しているものだ。この脆い戦車達は、この戦場に対応できるのかと疑いたくなる。

 そんな中、どこからかレシプロエンジンの音が聞こえてきた。音のする方を向くと、屠月の放った艦載機を撃墜するべく、空母機動部隊から発艦されたであろう艦載機の編隊が飛行してくるのが見える。この脅威を排除するべく、防空任務を任された空月、風月は機関砲を上空に向ける。

 しかし、それに待ったを掛ける者がいた。


 「お二人とも、私も援護しましょう」


 声を上げたのは丁月だった。彼女の主砲は連装高角砲で、航空機を仕留めることは容易なものだ。二人はその提案を了承し、改めて敵機に照準を向ける。

 そして、戦闘開始の狼煙は上がった。敵機が高角砲の射程内に入った瞬間、丁月は近接信管弾を放つ。それは一直線に敵機へ向かい、やがてそれらの前で爆発した。

 突如として、隊長機を含む五機が撃墜され、一機がエンジンに致命的な損傷を与えられた編隊は、そこで初めて、アライアンスの陸上部隊を視認する。念の為に搭載されていた爆弾を抱えた機械仕掛けの鳥の群は、アライアンスの陸上部隊に襲い掛かる。

 しかし、その突撃はあまりにも無謀だった。少しした瞬間、またもや近接信管弾が放たれる。機械仕掛けの鳥は決死の回避を試みるも、結局は回避しきれなかった機体から撃ち墜とされる。

 もう少し近づくと、追加で機関砲の弾が飛んでくるようになった。この弾幕から逃れることは厳しく、機械仕掛けの鳥は動きの制約を受けさせられた。それと同時に気づかなければならなかった。まだ余裕のあった時に撤退するべきだったと。


 「敵機の全滅を確認。レーダーに映る機影はありません」

 「なんとかなったわね」


 風月の言葉に、丁月は安堵の声を零した。その表情は胸をなでおろすかのようであり、とても穏やかなものだった。


 「丁月、ありがとうございます。私達の機関砲だけでは対処できませんでした」

 「何を言ってるのよ。私だけじゃ装填速度の問題で倒しきれてないわよ」


 風月の感謝の言葉に、丁月は謙遜して答える。しかしながら、事実である言葉を素直に受け止める気持ちもあった。

 その時だった。突如として近くにある下り坂になった大通りから、建造物が倒壊する音が聞こえた。部隊がその方を向くと、数えることもできないほどの敵戦車が雪崩のように坂を駆け上がってくるのが見える。

 そして、吸血鬼の身に纏う装甲板には、鉄十字の紋様が刻まれていた。それは、奴らが旧吸血共和帝国最恐と恐れられた『黒鉄軍』であることを示していた。

 しかし、部隊が何よりも驚いたのは、それらを視認した風月が、どういうわけかの前に出たことだ。夜桜は静止しようとするも、それよりも前に空月が言葉を放つ。


 「敵戦車の前方は軽装甲です。奴らの掃討は、私にお任せください」


 空月の絶対的な自信と、敵戦車が迫りくる敵戦車に対処するべく、夜桜はそれを承諾する。

 空月は坂の前に立つと、即座に両腕の機関砲に繋がれた弾薬ベルトを別のものに繋ぎ変える。そして、空月は一切の容赦を排除した無慈悲な掃射を開始した。

 機関砲の砲弾は敵の軽装甲目標を軽々と貫き、一、二撃で必ず絶命させる。


 「流石、装弾筒付翼安定徹甲弾。それも、ドイツ最恐と言われたTiger(ティーガー)を正面から撃破できる貫徹力を持った物。敵は為す術ないようね」


 後方に控える風月は、空月への羨みを口にした。

 事実上の姉である流月から聞いたことだが、空月の改良された機関砲では、装弾筒付翼安定徹甲弾が撃てるようになったらしい。風月も撃てないことはないらしいが、空月ほどの貫通力は持ち合わせておらず、せいぜいトーチカを破壊できるくらいだそうだ。

 そんなことを考えていると、いつの間にか空月は敵の軽装甲目標を全て撃破していた。残るは重装甲目標のみとなり、夜桜はこれを転機と見た。そして、秘めていた作戦を実行に移した。


 「前陸軍、前へ!! 敵戦車を各個撃破せよ!!」

 「「了解しました!!」」


 夜桜が指示を出し、一部のものを除く前陸軍の者達が突撃を開始した。それと同時に、深月や幻月は理解させられた。この、脆いと思われていた前陸軍の真の力を―――

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