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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
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少女なる兵器 第54話「冬の海」

 時は12月31日。今日が終われば、明日からは新年だ。

 水月はいつものように起床すると、朝食の準備を始めた。

 暁翠はまだ寝ている。今日の午前2時、やっと戦後の後処理が終わったのだ。最近まともに睡眠を取っていなかった事もあり、暁翠の眠りは深かった。


 7時頃、水月は朝食の下準備を終えた。暁翠いつ起きるか分からない為、暁翠が起きたらすぐに朝食を作れるようにだけしていた。

 水月はもう一度居間に戻ると、再び布団を被った。

 横を見ると、暁翠が気持ちよさそうに寝ている。その顔を見ていた水月は、自然と笑顔になった。理由は分からないが、どういう訳かとでも安心できた。

 そのまま、水月は深い眠りについた。


 それから4時間後、水月は再び目を覚ました。隣では、相変わらず暁翠が寝ていた。

 水月は布団から起き上がろうとしたが、どういう訳か、起きようと思えなくなった。再び隣を見ると、やはり暁翠の寝顔がそこにある。

 水月は少しの間、思考を放棄した。そして、何も考えずに暁翠の布団に手を入れた。布団の中は、暁翠の体温で温かくなっていた。そのぬくもりが、水月にとっては心地よかった。

 そして数分後、水月は暁翠の布団の中に侵入した。

 水月自身、何をしているかは十分分かっていた。だが、布団の中のぬくもりに導かれるように、自然と入ってしまった。

 そして、暁翠の顔の隣に自身の顔を寄せると、ぬくもりで自然と寝てしまった。


 それから1時間後、暁翠が目を覚ました。

 暁翠は違和感を感じ、隣を見た。するとそこには、水月の寝顔があった。どういう訳か、水月が自身の布団に入ってきていることはすぐに分かった。

 暁翠は水月を起こそうとも考えたが、寝顔が可愛かった為、そのままにしておくことにした。

 暁翠は水月の頭を、反射的に撫でた。いつもは、簡単に隙を見せない水月であるが、寝ているとあまりにも隙だらけであった。


 ーかなり訓練させたつもりだったが、こういう所は未熟なんだな……ー


 暁翠は心の中でそう呟くと、寝ている水月を抱きしめた。


 それから1時間後、水月が目を覚ました。水月は頭に違和感を感じ、ふと上を見た。すると、体を起こした状態で、自身の頭を撫でている暁翠が目に入った。

 暁翠は水月が起きたことに気がつくと、「おはよう」とだけ言った。

 そこで水月は、回っていなかった思考が一気に巡った。

 水月は勢いよく起き上がると、自身の頬を両手で抑えた。そして、顔を赤くしながら下を向いた。

 暁翠は不思議そうにしつつも、水月の頭を撫でることを辞めなかった。


 それから数分後、水月は少し冷静さを取り戻した。そして、暁翠に謝った。


 「すいません。駄目だとは分かっていたんですが、どうしても…………」

 「いや、全く問題無い。それに、お前の貴重な寝顔を見ることができた」


 暁翠が返した言葉に、水月は再び顔を赤くした。

 それでも、水月は冷静を保とうとしながら言葉を返した。


 「いえ、私の未熟さが今回の件を生んでしまいました。本当にすいません」

 「問題無い。なんだったら…………」


 暁翠は何が言いかけた所で、水月を押し倒した。そして、水月の顎に人差し指を当てながら言った。


 「なんだったら、今度からは一緒の布団で寝るか?」


 水月は自身の置かれている状況と、暁翠の言葉により、冷静を保てなくなった。どうすれば良いか考えるも、解決策が浮かばない。

 そんな時、暁翠が過去に言った「素直になれ」と言う言葉が頭の中で響いた。

 そして、水月は自信が思っているとを素直に口にした。


 「はい……できればまた、よろしくお願いします…………」


 その言葉に、暁翠は目を丸くした。暁翠にとって、水月がこんな事を言うのは予想外だったのだ。

 そして、暁翠は軽く笑うと、水月の唇に口づけをした。

 水月はなんの抵抗もせず、暁翠の口づけを受け入れた。むしろ、口づけが心地良いと感じでしまっていた。


 どれくらいの時間が経っただろうか。水月はたった数十秒の時間を、数分のように感じていた。

 暁翠は水月から口を離すと、水月の頭を優しく撫でた。

 そして、暁翠は立ち上がると、自身の布団を片付け始めた。水月も布団の片付けわや始めた。水月は布団の片付けを終えるまでの間、心臓の鼓動音が収まらなかった。


 それから、2人は朝食を食べ終えると、久しぶりの2人きりでのゆったりとした時間を過ごすことにした。いつもは、暁翠が仕事をしているため、水月は1人で本を読んでいる事が多かった。しかし、今日からは違う。暁翠の隣で、話しながら何かすることができる。それが、大きな違いだった。


 それから時間は過ぎ、時刻は昼頃となった。

 水月はいつものように、昼食を作ろうと土間に向かおうとした。しかし、暁翠がそれを止めた。


 「水月。今日は久々に、俺が料理を作る。ゆっくり休んでろ」


 水月は笑顔で頷くと、座布団の上に座った。

 暁翠は昼食を作るため、土間へ行った。


 それから数十分後、暁翠が料理を持って戻って来た。その量は、昼食にしては多い様な気がした。

 しかし、水月にとってはいつもの量よりも少し多いくらいの感覚に過ぎない。

 そして、2人は昼食を食べ始めた。

 水月は暁翠が作った料理を、美味しそうに食べた。

 暁翠はそんな水月の顔を見て、優しい笑顔で微笑んでいた。暁翠にとっては、水月が笑顔でいる事が、幸せだったのだ。


 それから、2人は昼食を食べ終え、自由時間へ戻った。

 水月は暁翠に肩を寄せると、寄り添うような形で暁翠の腕を持った。

 暁翠は水月の頭をなでながらら、心の中で呟いた。


 ーこいつには、寂しい思いをさせてしまったな……せめて、今日くらいは楽しませてやらないとなー


 すると、水月は暁翠の顔を見て言った。


 「元帥。今のままでも、私は十分ですよ。ですから、特別何かをする必要はありませんよ」


 暁翠の思いは、水月に見透かされてしまっていた。

 しかし、暁翠は水月が自身の心を読むことができた事に驚きを感じていた。

 気になった暁翠は、水月に聞いてみる事にした。


 「水月。どうして、俺の考えている事が分かったんだ?」

 「目を見れば分かりますよ。それに何年、元帥の側に居ると思っているんですか? 今では、ある程度の事も分かるようになりましたよ」


 その言葉を聞いた暁翠は、苦笑しながら水月の頭を撫で続けた。


 それからまたしばらくして、時刻は夕暮れ時となった。時の流れとは早いと、2人も感じていた。

 水月は夕食を作ろうと、土間へと向かった。すると、暁翠も土間へ着いて来た。

 不思議に思った水月は、暁翠に聞いた。


 「元帥。どうして土間へ?」

 「せめて夕食くらいは、一緒に作ろうと思ってな。良いだろ?」


 暁翠の言葉を聞いた水月は、「はい」と嬉しそうに答えた。

 そして、2人の大晦日の料理が始まった。料理の内容は、暁翠の提案によって、日本に伝わる年越し蕎麦を作ることとなった。暁翠の的確な指示と、水月の料理の腕前により、いつもよりも早く料理が完成した。

 しかし、ここで問題が起こった。明らかに作りすぎだのだ。鎮守府で生活していた時の容量で作ってしまい、2人では食べ切れそうに無かった。


 すると突然、玄関の戸が叩かれた。水月が出ると、そこには霊花、京花、京華の3人が居た。

 水月は戸惑ったが、霊花は戸惑わせる隙を与えず言葉を放つ。


 「水月、叔父上。今日ばかりは、ここで泊まらせてはぐれぬか? 京花は妾の付添じゃ」

 「私は単純に帰る家がないので。大晦日も車中泊はちょっと厳しくてね」


 霊花に続き、京華は苦笑しながら言った。

 水月自身、3人を泊めることに何の抵抗も無いが、問題は暁翠だ。暁翠が納得しなければ、基本的に物事は進まない。

 水月は暁翠が放つ言葉に固唾をのんだ。


 「別に良いぞ。後は水月次第だ」

 「私も問題ありません」


 暁翠の言葉に、水月は安心した。しかし、よくよく考えてみれば、暁翠が霊花の頼みを断る事は無いのだ。2人は血の繋がった家族なのだから。


 「水月よ。今、何やら失礼な事を考えなかったか?」

 「そんなことは……あります」

 「あるではないか!」


 その場は、笑いに包まれた。これで良いのだ。平和で少し喧嘩するくらいの日常が、水月にとっての願い続ける日常なのだ。


 それから5人は、食卓を整え食事を始めた。当初は作り過ぎた年越し蕎麦だったが、3人が来てくれたことにより、全て消費しきれそうであった。

 しばらくすると、暁翠が用意した酒の影響もあり、食卓は宴会状態になった。特に霊花は酒に弱いため、気がつく頃には酔い潰れていた。

 京華に関しては、何とも言えなかった。一見するとまともに見えるが、所々まともじゃ無くなっている。主に何が不味いかと言うと、いつも感じていた上品さが消え失せた。

 暁翠、京花は酒に対する耐性が強い為、飲みすぎない限り酔うことは無い。。水月に至っては、そもそも酔えない体質であった。


 それから数十分後、食事が終わった。

 京華は酔から覚め、顔を赤くしながら机にうつ伏せになっている。霊花は酔から覚めておらず、まだ寝ていた。

 暁翠は洗い物をしながら、水月と京華に言った。


 「水月、京華。お前達は先に風呂に入っておけ。霊花は目が覚めたら無理矢理にでも入れさせる」


 最後の辺が物騒だと感じたが、水月と京華は暁翠の指示に従い、風呂に入るごとにした。


 2人は風呂に入り、体を洗った。

 湯船に浸かると、京華は恥ずかしそうにしながら水月に話しかけた。


 「さっきは恥ずかしいところを見せたわね。ごめんなさい」

 「いえ、大丈夫ですよ。酒への耐性は人それぞれです。私に関しては、全く酔えないので困るくらいです」

 「その体質、私にも分けてよ」


 湯船に浸かりながら、2人は会話をした。主に、過去の体験談や失敗談がメインとなり、2人は楽しそうに笑っていた。


 それからしばらくして、2人は風呂から上がった。

 寝巻きに着替え、居間に戻ると、酔から覚めた霊花が暁翠と何かを話していた。詳しいことは分からないが、何やら大切な話をしていることは分かった。

 すると、霊花が2人の存在に気が付き、暁翠との話を切り上げた。そして、京花を連れて風呂へ向かった。


 それからしばらくして、霊花と京花が風呂から出てくると、暁翠が交代で風呂に入った。

 暁翠が風呂に入っている間、居間は女子会のような雰囲気となった。それぞれが何かを話し、笑うこともあればツッコミを入れる事もあった。


 暁翠が風呂から上がると、全員は寝る準備だけ済ませた。歯を磨き、布団を敷いた後は、全員で雑談をする事となった。雑談と言っても、やっている事は女子会のような物と大差は無かった。


 そして、気がつくと年が明けていた。それぞれ新年の挨拶をすると、暁翠は立ち上がり、外へ出た。

 暁翠を追って、水月も外へ出た。

 外は静まり返り、満月から放たれる月光が地面を照らしていた。

 水月は外で立ち尽くしている暁翠に近づくと、暁翠乃横顔を見た。

 暁翠の目線は、満月に向いていた。竹の上に見える満月というものは、とても美しい物であった。それは、水月でさえも心を奪われてしまった。

 水月も満月を眺めていると、突然、暁翠が話しかけてきた。


 「水月。昨日はゆっくりと休めたか?」


 その問いに対し、水月は笑みを浮かべながら答えた。


 「はい。今までで一番良い時間だと思っていますよ」

 「そうか、なら良かった」


 水月の言葉に、暁翠は微笑んだ。

 水月は暁翠の顔を見ると、自然と微笑みを浮かべてしまっていた。

 暁翠は笑みを浮かべている水月を見ながら、自身の羽織を水月に着せながら言った。


 「今日は冷える。せめて羽織っておけ」


 羽織を着せられた水月は、恥ずかしそうにしながら暁翠から目を逸らした。暁翠が着せてくれた羽織は、体温とは別の温もりを帯びていた。

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