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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
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少女なる兵器 第51話「秘密と本領」

 残暑が残る9月。もうすぐ、夏が終わりを告げようとしている。

 水月は、とある神社に足を運んでいた。

 その神社は、過去に霊花が勤めていた神社だそうで、今はとある人物が勤めている。

 鳥居をくぐると、箒を持って系内の道を掃除する神龍が目に入った。

 神龍も水月に気がついたようで、その場の流れもありそのまま話し合いになった。


 「どう、神龍? ここでの生活にも慣れた?」

 「特に、これと言った問題は無いぞ」


 そういう神龍の目は、何処か嬉しそうな目をしていた。何かあったのかと水月は考えていると、本殿の方から關龍が歩いて来た。關龍は水月にお辞儀をすると、神龍に話し始めた。


 「神龍姉さん。龍姚さんがお呼びです」

 「承知した。關龍。ここの掃除は任せたぞ」

 「分かりました。お気を付けて」


 そして、神龍は本殿へと歩いて行った。

 關龍は、神龍に渡された箒で道を掃除しながら、水月に話かけた。


 「水月さん。ここ最近は、どうお過ごしですか?」

 「特にこれと言って、変わった所はあまり無いわ。ただ、自由時間が増えてやる事が無くなるというね……私も仕事病かな…………」


 水月がそう言うと、關龍は軽く笑った。水月には、關龍が何を考えているのか想像がつかない。關龍と初めてあった時も、内側の感情が全く読み取れないのだ。

 途端、關龍の目が鋭くなった。神社の本殿を見ながら、警戒心を剥き出しにしている。

 それは、水月も同じであった。強大で空気が歪んで見えるほどの、圧力が掛かったオーラ。何度も感じたことのあるそのオーラは、明確な殺気が放たれていた。


 数分後、そのオーラは突然消えていった。

 水月は警戒を解いたが、關龍は警戒を解こうとはしない。水月は、この神社に何かあると察し、關龍に話しかけた。


 「關龍。この神社って確か霊花の管轄だったわよね?」

 「ええ……そうです」


 關龍は目を本殿に向けたまま、水月に言葉を返した。

 

 しばらくすると、本殿から誰かが出てくるのがわかった。よく見ると、それは龍姚であった。龍姚は、水月が最後に会った時よりも、酷く窶れていた。

 龍姚は關龍の前まで来て、始めて水月の存在に気がついた。龍姚はそのまま、水月に話しかけた。


 「水月さん……お久しぶりです……大したおもてなしもできず……申し訳ありません……」

 「そんな事はどうでもいいわよ……ただ、貴女の窶れぐわいが異常よ。しっかりと休暇を取りなさい」


 その言葉を聞いた龍姚は、首を横に振った。

 隣りにいた關龍は、水月に龍姚が窶れている理由を話し始めた。


 「龍姚さんは、巫女としてこの神社で活動をしています。巫女の役割は、この神社に封印されている吸血鬼の魂を治める事です」


 水月は、關龍の言葉に身震いした。何となく感づいてはいたが、本当に吸血鬼の魂が、それも何千何万という魂の塊があるのだ。

 關龍の話は、まだ続いた。


 「ここ最近、魂の動きが活発になってきているの。結果、龍桜さんと龍姚さんが24時間体制で見張っているわけよ」


 關龍が言い終わると、龍姚は頷いて言った。


 「なので、まともに睡眠を取っていません…………っ…………」


 龍姚は何かを言おうとしたが、体が限界を迎えてしまい、その場に倒れてしまった。

 水月が慌てて龍姚を揺するも、龍姚は眠っているだけのようであった。

 隣で見ていた關龍は、安堵の表情を浮かべていた。そして、本殿に向かって走りだした。


 しばらくすると、關龍が神龍と翊龍を連れて戻って来た。

 神龍と翊龍は、龍姚をみて一瞬慌てふためくも、寝ているだけだと分かると一安心した。

 そこからは、水月が龍姚を抱え、神龍達が龍姚の部屋まで案内した。

 龍姚の部屋につくと、水月は抱えていた龍姚を布団に寝かせた。疲れが溜まっていたのか、龍姚は未だに起きそうにない。

 水月が龍姚の寝顔を見ていると、後から覚えのある声が聞こえてきた。


 「水月さん。妹の事を気にかけてくださり、ありがとうございます」


 振り向くと、そこには龍桜が立っていた。龍桜も窶れが酷く、いつ倒れてもおかしくない程のくまができていた。

 龍桜は水月の横に座ると、水月に話始めた。


 「私達は、ここの管理をするが故、どうしても体調を崩しがちになります。本来であるのならば、霊花さんが定期的に来てくれるのですが、ここ1週間は姿を見ていないもので……」


 龍桜の口から語られたのは、自信達がまともな睡眠を取れていないことであった。

 それと同時に、龍桜の体の限界が近くなっている事を、水月は見抜いていた。このままでは、いつ厳戒態勢が崩壊してもおかしくはない。

 そんな事を考えていると、水月はふと疑問に思うことがあった。肝心の霊花が居ないことだ。ここは、霊花の管轄内の神社で、本来ならば定期的に見回りが来るはずだ。それなのに、ここ1週間は姿を現していない。考えてみれば、異常事態であった。


 水月が龍桜に話しかけようとした次の瞬間、突如として辺の空気が変わった。それは、先ほど感じた強大なオーラによるものだ。

 龍桜は、既に駆け出していた。水月は神龍達を残し、龍桜の後に続いた。根拠の無い事であったが、水月には何が起こることを感じていた。


 本殿の中に入ると、2人は地下へ続く階段を駆け下り、吸血鬼の魂が封印されている場所へ着いた。

 その場所は、異様な光景が広がっていた。

 中心には結界でできた巨大な球体があり、その中にドス黒い何が蠢いている。結界の周りには、結界を維持する宝玉が設置されていた。

 東西南北それぞれ方向の床に、魔法陣のようなものが描かれていた。おそらく、詠唱の効果を増幅させるための物だろう。

 龍桜は一番近い西の魔法陣の中に立つと、詠唱を始めた。


 「我は定義する。全ての根源は魂であり、それは何人たりとも覆せない。迷える魂は怒りに飲まれ、全てを滅ぼし…………」


 龍桜が詠唱を行っているときであった。突如として、龍桜が吐血した。


 「龍桜!!」


 水月の叫びが、地下室の中に木霊す。

 水月は、龍桜に手を差し伸べた。しかしそれでもなお、龍桜は立ち上がり、詠唱の続きを始める。


 「……混沌を……呼び寄せる……ゲホッ!!」


 しかし、龍桜は再び吐血してしまい、まともに詠唱を続けられない。

 こんな事をしている間にも、霊花が編み出した結界といは言え、いつ構成崩壊するか分からない。

 すると、水月は龍桜の錫杖を持って、龍桜に言った。


 「詠唱を教えてちょうだい。私がなんとかする」


 その言葉に、龍桜は耳を疑った。何も知らない水月が、この事態を収められるはずがないと思った。

 しかし、水月には今までに幾多もの難題を軽々とこなしてきた実績があった。


 「…………分かりました。本をお持ちします」


 龍桜は、水月の思いを受け入れた。そして、近くに置いてあった1冊の本を水月に手渡して言った。


 「この本に……書いてある通りに……詠唱をしてください……後は……任せ……まし……た…………」


 そして、龍桜は意識を手放した。既に、体が限界を迎えていたのだろう。

 水月は、意識を失った龍桜の姿を見て言った。


 「任せておいて。さっさと片付けて、貴女を医者まで担ぎ込むから」


 その言葉を境に、水月の雰囲気が変わった。目は戦闘者特有の目となり、自身の意識を錫杖の先に集中させ、詠唱を始めた。


 「我は定義する。全ての根源は魂であり、それは何人たりとも覆せない。迷える魂は怒りに飲まれ、全てを滅ぼし混沌を呼び寄せる。怒りを忘れ、在るべき形にへと戻れ…………」


 水月は、淡々と詠唱を続けた。吸血鬼の魂は、徐々に静まりつつあった。

 しかし、水月自身の体に異変が起こっていた。体の一部が、焼けるように熱い。しかし、ここで倒れるわけにはいくまいと、水月は気力で詠唱を続ける。


 それから数分後、吸血鬼の魂は完全に落ち着きを取り戻した。

 それを確認した水月は、錫杖をその場に放り投げ、意識を失った龍桜を見た。

 しかし、龍桜はその場に居なかった。残っているのは、階段へ続く血痕だけであった。

 龍桜はあの時、確かに意識を手放していた。そこに数日分の疲労が蓄積していた為、たった数分で意識を取り戻せるはずはない。

 水月は階段を駆け上り、地上へ急いだ。


 階段を駆け上り本殿の中に着くと、そこには床に寝かされている龍桜と、回復術の詠唱を行っている霊花の姿があった。

 水月は、心の底から安心した。

 それと同時に霊花が詠唱を終え、水月に向き合った。

 しかし、霊花は水月を見るなり目を丸くした。それどころか、自身が持っていた錫杖を落としてしまった。

 そして、霊花は震える口を開いた。


 「水月よ……その顔はどうしたのじゃ…………」

 「え?」


 水月は、自身の耳を疑った。しかし、霊花の言っていることが嘘だとは思えない。

 すると、霊花は霧の門を作り、中から鏡を取り出した。そして、鏡を水月に渡した。

 水月は、鏡で自身の顔を見て絶句した。


 「これって……鱗?」


 水月の顔には、鱗のようなものが浮かんでいた。手で触ってみても、それは間違いなく本物の鱗であった。それはただの鱗ではなく、龍の鱗であった。

 水月が困惑していると、霊花は真剣な顔をしながら水月に話しかけた。


 「水月よ……龍鱗は龍の血が流れている者にしか現れぬのだ。龍桜達ですら、龍鱗現れたことは無い」


 その言葉に、水月は自身の鱗にもう一度触れる。鱗は滑らかで、それでいて自身を傷つけるほどの鋭さをしていた。


 その後、水月は自宅へと強制送還させられた。そして、暁翠は頭を悩ましていた。


 「しかし、どうしてお前に龍鱗が現れたのか……お前に血を分け与えた覚えは、微塵もないんだが…………」

 「私も、元帥から血を頂くようなことをした事はありません」


 暁翠が頭を抱える中、水月は鱗を触っていた。やはり、鱗が地肌に馴染まないようだ。どうにかして消せない者かと考え、触ったり、抓ったり、引っ張ったりもした。しかし、鱗が剥がれたり消えたりする気配は無い。

 そんな水月を見ていた暁翠は、自身の過去を振り返り、解決法を見つけた。


 「水月。取ろうとするんじゃなくて、引っ込めるようと意識を強くしてみたら良いんじゃないか? 言わば、龍鱗は己の霊力の塊なんだ」


 水月は言われた通り、鱗を自身の体に引っ込める意識を強くした。すると、鱗はあっさりと消えた。あれだけ苦労した鱗が、こんなにもあっさりと消えるとは思ってもいなかった。

 それと同時に、水月は頭の中でとある事を思い出した。そして、頭を抱えてその場で深くため息をつき、暁翠に言った。


 「元帥……おそらくですが、この前元帥傷口を舐めたことが現因かもしれません…………」


 遡ること1ヶ月前、暁翠は紙で指を切ってしまった。勿論血が流れ始めるわけで、暁翠は適当に絆創膏を貼ろうとした。

 すると、隣りにいた水月が突然、暁翠の傷口を舐めたのだ。

 その後、水月は土下座をして暁翠に謝った。暁翠は怒っていなかったが、それでも謝らなと自分自身を許せない気がした。

 どうしてそんな事をしたのか、水月自身でも分からなかった。ただ、反射的にやってしまったことは確かであった。


 「ああ、そう言えばそんな事があったな……あれが現因か…………」


 暁翠は深く溜息をつき、頭を搔いた。

 水月は恥ずかしさのあまり、顔を伏せていた。

 そんな水月を見た暁翠は、帽子越しに水月の頭をなでながら言った。


 「別に気にすることじゃない。お前はあの判断が正しいと思ったんだろ? それに、お前が血を取り込んでいなかったら、結界が破られていたかもしれないんだ。だから、お前の判断が間違ったとは微塵も思わないさ」


 その言葉に、水月は救われたような気がした。そのせいか、水月は言葉を零した。


 「やっぱり、元帥と共に暮らせて幸せです」

 「何か言ったか?」


 どうやら、暁翠の耳には聞こえていなかったようだ。

 水月は、微笑みながら言葉を返した。


 「何でもありませんよ」

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