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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
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少女なる兵器 第50話「気付き」

 水月達が旅行から帰ってきて、約1ヶ月ほどが経過した。その間は特に何も無く、只々平穏な日々が過ぎていった。


 そして、水月と暁翠が住む家では、とある会話が行われていた。


 「どうだ? お前達にとっては良い思い出の一部になると思うんだが?」

 「そうですね……行ってみたい気持ちはありますが……」

 「なら、行ってみるか?」

 「できることならば」

 「そうか、なら行ってみるとしよう」


 そう、水月は暁翠から、夏祭りに行きたいかどうかを問われていた。一見するとしょうもない会話かもしれないが、水月にとってこういう事は、あまりにも縁が無いことであった。その為、暁翠は前々から水月を外に連れ出す機会を伺っていた。その機会が、今回の夏祭りであった。


 暁翠は会話を終えると、机の上のパソコンに目を戻した。未だに戦後処理が終わらず、データや資料の整理を行っている日々が続いていた。水月も手伝おうとはしたが、暁翠に釘を差されてしまっている為、何も出来ない状態が続いていた。


 それから数時間が経過し、時刻は昼頃になった。水月は土間に入ると、いつものように竈に火をくべた。

 その時であった、突然玄関の扉が叩かれた。扉を開けてみると、そこには紫桜、夜桜、冥月の3人が立っていた。

 水月は一先ず3人を家に入れると、竈の火を調整する。しかし、3人は一向に居間に行こうとする気配がない。気になった水月は、3人に聞こうと口を開こうとしたが、紫桜が口を開くほうが早かった。


 「水月。良ければ週末、私達と一緒に夏祭りに行かない?」


 なんと、夏祭りの誘いだった。先程も暁翠から誘われたこともあり、水月はどう答えたら良いか一瞬迷った。

 するとそこへ、話を盗み聞きしていたであろう暁翠がやって来て言った。


 「なんだ、お前らも行くのか? おそらくは俺も同行することになるぞ」


 その言葉を聞いた3人は、頭に稲妻が走ったような感覚を覚えた。

 暁翠は3人の表情を見ながら、面倒事になったなと思った。

 その間に挟まれている水月は、この空気をどうやって無くすかを考えていた。水月の予想ではあったが、放っておけば、この空気は何時間も続くように考えられた。

 少し悩んだ水月は、安直すぎる言葉を放った。


 「良いじゃないですか。人数が多いほうが、楽しみは増しますよ」


 その言葉により、4人の間で漂っていた空気が消え去った。

 水月は、心の底からホッとした。もう少しこの空気が続いていたら、溜息をついていたかもしれない。


 「そうですね。全員で行きましょう」


 紫桜はお淑やかに言ってみせるも、内心が怒りか何かの感情で満ちていることは明白であった。ニコニコしている紫桜は、大抵機嫌が悪いときだ。


 それから軽い世間話をした後、3人は帰っていった。

 水月は、作った昼食を机に並べながら言った。


 「はぁ……本当に紫桜姉さんは怖いわね……」

 「まぁ、あいつはあいつなりに、お前への愛情を注ごうとしているんだと思うぞ。今回は、俺という障害物があっただけだろう」


 ー元帥……それ、自分で言って悲しくないんですかー


 その言葉を聞いた水月は、心の声で暁翠にツッコミを入れた。


 それから数日が経ち、夏祭りの日となった。

 夏祭りに行く前、水月は浴衣に着替えていた。最初は軍服で良いと思ったが、「こう言うものは服装も大事なんだ」と言った暁翠の言葉に押され、オーダーメイドで頼んだ浴衣を着ることとなった。


 数分後、浴衣に着替え終えた水月は、外で待っている暁翠の元へ急いだ。

 扉お開けて外に出ると、先に出ていた暁翠が待っていた。

 水月が出てきた事を察した暁翠は、後ろを振り返った。暁翠から見た浴衣姿の水月は、いつもとは違う雰囲気を放っていた。暁翠は自然と、水月から目を逸らしてしまった。

 目を逸らしたまま、暁翠は水月に向かって言った。


 「水月……なんというか……いつもより可愛くなったな」


 その言葉を聞いた水月は、顔を赤らめた。いつもとは違う浴衣で、暁翠の前にいるということだけで恥ずかしいのに、そんな事を言われてしまうと、恥ずかしさで頭が回らなくなってしまう。

 水月は深呼吸をすると、暁翠に言葉を返した。


 「あ、ありがとうございます」


 そこからは、数秒の沈黙があった。両者共に、何を話せばよいか分からなかったのだ。

 しばらくした頃、暁翠が次の言葉を放った。


 「行こうか」

 「はい」


 そして、2人は歩き出した。


 しばらくして、夏祭りが行われる神社まで来た。周辺は既に人で賑わっており、屋台は繁盛していた。

 水月と暁翠は、待ち合わせ場所である鳥居の前まで向かった。

 鳥居の前に着くと、既に3人は待機していた。こちらに向って来る2人に気がついた紫桜は、いつものように、お淑やかな笑顔で声をかけた。


 「時間ピッタリですね。にしても、本当についてきたんですか?」

 「ああ、勿論だ」


 どういう訳か、暁翠と紫桜は仲が悪いように見受けられる。2人が会う度に、辺りには圧がかかった空気が流れる。

 しかし、今回は祭りだ。紫桜も、そこは弁えていた。紫桜は暁翠を無視して、水月に話しかけた。


 「それにしても、水月と髪型がお揃いになるとはね……なんだか嬉しいわ」


 水月と紫桜にしては珍しく、2人は髪型をポニーテールに整えていた。祭りだった事もあり、とある部分で気合が出たのだろう。


 そして、5人は屋台を見て回った。様々なものがあったが、やはりメジャーなものと言えば飲食関連の屋台だろう。丁度、近くに飲食関連の屋台があった為、5人はその屋台に立ち寄ることにした。

 しかし、屋台の前に来た5人は目を疑った。


 「いらっしゃいま……って、水月さん!? それに元帥まで………一体、どういった風の吹き回しですか!?」


 なんと、屋台の店番を指定たのは波月であった。奥には、古月と妨月も見えた。

 店番をしている波月曰く、屋台の運営側が人手不足だということで、臨時の募集があったそうだ。その運営側の飲食店系列の会社に所属していた3人は、自動的に呼び出され、今に至るそうだ。

 そんな事を話している間に、奥で作業をしていた古月と妨月が戻って来た。そして、出来立ての焼きそばを5人に渡した。

 屋台を去る時、波月が水月の耳元でそっと聞いた。


 「元帥とは上手くやれてるの?」

 「ええ、もちろんよ」


 水月はそう答えると、暁翠達と共に歩き始めた。


 それから数十分が経った頃、水月はかなり呆れていた。そう、またもや暁翠と紫桜が火花を散らし始めたのだ。

 水月は、深く溜息をついた。それと同時に、どっと疲れが湧いてくる。

 この場を一刻も早く抜け出したい水月は、一か八かの賭けに出た。


 「紫桜姉さん。申し訳ありませんが、元帥と2人きりで話がしたいので、元帥と共に席を外します。よろしいですか?」

 「分かったわ。だけど、何かされそうになったら、直ぐに逃げるのよ」

 「どれだけ俺に、信用がないんだよ…………」


 何はともあれ、水月は暁翠と共に、その場を抜け出すことに成功した。しかし、水月は何処へ向かうかなど考えていなかった。

 すると、暁翠が水月の手を引きながら言った。


 「行き先なんて、考えてなかったんだろ?」


 暁翠には、全て見通されていたようだった。水月は何処へ向かうのかと思っていると、行先がおおよそ分かってきた。


 それから約数分後、2人は神社の前に来ていた。神社には人1人の気配も無く、静寂に包まれていた。

 そんな中、暁翠は本殿の階段に腰を下ろして話し始めた。


 「ここは、元は霊花が管理していた場所らしい。霊花が亡命した後、先に亡命していた俺はよく呼び出された」


 話している時の暁翠の目は、在りし日の記憶を思い出している目であった。それほど記憶に残っている事が、目の奥から伺えた。

 水月は黙って頷き暁翠の隣に座る。そして、暁翠に話し始めた。


 「私は元帥と出会えて、とても幸せです。あの辛かった過去も、今にしてみれば遠い記憶です」


 水月は自信の抱いていた思いを、暁翠に伝えた。水月からしてみれば、本音を伝えることに対して大きな違和感を持っていた……いや、本音を言うのが怖かったのだ。本音とは時に、大きな爪痕を残していく。水月は、それを恐れていたのだ。

 すると、暁翠は軽口笑いながら水月に言った。


 「やっと、素直になってくれたな」


 たった一言だった。その一言が、水月の身に深くしみた。

 水月は、今まで欠如していた何かが戻ってきたように感じた。そんな不思議な感情であった為か、水月は思わず口から言葉が漏れた。


 「元帥……どうしてそこまでして、私のことを気にかけてくれるんですか?」

 「前も言ったはずだが、どうやら実行しないと分からないようだな」


 水月はその言葉に疑問を覚えた。どういう意味かを問いだそうとした。

 しかし、それは暁翠の口づけによって遮られてしまった。

 水月は、抵抗しようとは微塵も思わない。水月にとっては思いの外、それが心地よいと感じていた。

 暁翠が水月から唇を離すと、笑いながら言った。


 「これは、帰ったら紫桜に説教を喰らうだろうな」

 「その時は、私もご一緒しますよ。どこまでも、元帥に着いていくと決めましたから」


 そうして、2人は神社を後にした。

 その後、2人が説教を喰らったのは言うまでもないが、水月は心の底で、暁翠と共にいれることを幸せに思っていた。己の身が滅ぶ、その瞬間まで…………

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