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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
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少女なる兵器 第47話「金融屋の裏」

主な登場人物

・水月

旧大龍帝国陸海共同軍所属の超戦車。普段はおっとりとした性格をしているが、戦闘になると、おっとりとした雰囲気とは裏腹の、戦闘者としての殺気を放つ。しかし、身内と認識した者、特に姉妹にはとても甘い。現在は暁翠の嫁であり、仲睦まじく暮らしている


・紫桜

水月の姉で、旧大龍帝国陸海共同軍に所属していた超戦車。お淑やかな性格ではあるが、その裏側は狂気に満ちた思考回路を持ち合わせている。現在は、去音金融の社員として働いている


・龍造白波

大龍帝国元初代首脳。主に空手と柔道を駆使して戦う武闘派で、繰り出される拳の一撃は護衛艦すらも破壊する。陽気な性格で、誰とでも打ち解けやすいが、少々脳筋な所があり、無理を強要してしまうこともしばしばある


・龍造翔和

大龍帝国元2代首脳。使用する2本の龍残刀「白藍」と「華藍」は、ありとあらゆる物を切り裂き、全てを灰に変える炎を纏うことができる。陽気な性格だが、親しくない者に対しては、少し冷たい態度を取ることが多々ある


・龍造去音

大龍帝国元3代首脳。陰陽や妖術、霊術等の特殊系攻撃に特化しており、右に出るものは誰1人としていない。冷徹な性格をしており、親しい仲の者であったとしても、稀に冷たい態度を取ることがある


・龍造白蓮

大龍帝国元5代首脳。空手や柔道に組み込むように、トンファーを扱う。白波と比べると力は劣るが、それでもその力は、護衛艦すらも軽く粉砕できる。お淑やかな性格で、誰にでも優しくしてくれる


・龍造暁翠

大龍帝国元13代首脳。戦闘には不向きであるが、的確な指示で数多の戦を勝利へ導いてきた。人を引き付けるカリスマ性を持っており、旧大龍帝国の家臣や国民から慕われていた。今は兵器達に慕われている。現在は、戦後の処理で忙しくしている


・龍造霊花

大龍帝国元15代首脳で、暁翠の孫娘。去音と同じように、霊術等を扱う。繰り出される炎は、全てを灰に変える。優しい性格だが、責任感が強すぎて自身で問題を抱え込んでしまうことがある


・龍造京花

大龍帝国元海軍元帥で、霊花の側近。1度死亡するも、吸血鬼、悪魔、人間の混血として転生した。自身の身体の一部を変化させたりすることもできる。冷徹な性格で、人間に対しての信用が一欠片も無い

 夜桜のライブの翌日、水月は街へ来ていた。理由は特にないが、ただただ辺りをフラフラしていた。

 というのも、今日は暁翠が出計らっている為に、する事が無いのだ。結果、街へ出て何かをしようと言う結論に至った。


 街をフラフラしていると、前は見ていなかった店などをじっくりと見ることができた。ある意味、休日を過ごしかたにはぴったりだったのだろう。


 そして、気がつけば時刻は昼頃になっていた。水月は家に帰ろうと、来た道を戻ろうとした。

 しかし、水月はふと足を止めた。人混みで分かりづらかったが、今すれ違った灰色髪の女性に違和感を覚えたのだ。

 その違和感は、一般人にしては雰囲気が違いすぎたのだ。殺戮に慣れた、一流の殺し屋のような雰囲気を纏っていた。


 気になった水月は、その女性の後を着けることにした。

 普段なら気にすることは無かったのだが、今回は相手が違う。下手をすれ、ば今後の未来に何かを及ぼす可能性がある。


 水月はそのままその女性の後をつけて行くと、人気が少ない場所に建てられた事務所のような建物にたどり着いた。

 水月は流れのまま、その建物に足を踏み入れた。


 「で、どうして私の後をつけてきたの?」


 後から声が聞こえ、背中に何かを突きつけられた。感覚的に、錫杖に似ているものだ。

 水月の額から汗が流れた。何故ならその人物は、異常なほどのオーラを放ち、空気が歪んで見えるほどの圧力が掛けていた。

 水月は振り向かずに、言葉を発する。


 「貴女の狂気が異常だからよ。龍造去音」


 水月は去音の名前を呼ぶ。これはほぼ予想であり、去音である保証はなかった。

 すると後ろの女性は、突きつけた物を下ろして言った。


 「まあいいわ。着いて来なさい」


 その女性は水月とすれ違いざまに「よく分かったわね」とだけ言うと、上に繋がる階段の扉を開ける。

 水月は去音の後に続き、階段登る。

 2階に着くと、去音はとある部屋に水月を通した。

 水月は通された部屋に入ると、目を丸くした。

 そこには白波、翔和、白蓮、霊花、京花、そして暁翠がソファーに腰を掛けていた。暁翠がここに居る事は、水月にとって予想外の事だったのだ。

 そんな水月を他所に、去音は水月の耳元で囁いた。


 「暁翠の隣に座っておきなさい。貴女は何もしなくて良いから」


 水月は黙って頷くと、暁翠が座る席の隣に腰を掛けた。

 水月が座ると、暁翠は水月にだけ聞こえる声で話しかけた。


 「どうしてここに居るんだ? 街を散歩するんじゃなかったのか?」

 「偶々街で去音を見かけて、流れで着いてきたらここに……」


 水月の言葉を聞いた暁翠は、僅かに苦笑した。その表情の裏には、何かしらの感情が感じ取れたが、水月は完全に読み取ることはできない。


 それから数分後、部屋の扉が叩かれた。

 去音が「入れ」と言うと、扉を開けて紫桜が入って来た。

 紫桜はそのまま席に座ると、去音が会議の開始を宣言して、会議が始まった。


 それからは、長い話し合いが続いた。去音が司会を努め、紫桜は資料の配布などを行なう。

 資料の内容は、今後の生活や、それに必要な資金に関する物であった。それに加え、前回の会議で議論したことや、今の世界情勢に対する議題も多々上がった。


 そして1時間後、会議は終了した。

 会議が終了すると共に、去音はコーヒーを淹れに別の部屋に行ってしまった。

 それを確認した紫桜は、水月に話しかけた。


 「水月、どうして去音の後を着けて来たの?」

 「街で見かけて、そのままの流れで」


 その言葉を聞いた紫桜は、深くため息を付いて言った。


 「なるべく裏側は、見せたくなかったのよ。それは司令官も同じだし」


 水月は暁翠の顔を見る。

 暁翠は黙って、首を縦に振っていた。

 

 そのタイミングで、去音が全員分のコーヒーを持って戻って来た。

 去音は全員にコーヒーを渡すと、自身の椅子に腰を掛けた。そして机の引き出しから、分厚いファイルを取り出し、中身の書類を見始めた。

 水月は去音が淹れてくれたコーヒーを、少し飲んだ。コーヒーはとても甘く、優しい味がした。

 それと同時に、コーヒーを飲み終えた翔和が去音に話しかけた。


 「やっぱり、去音が淹れてくれたコーヒーは美味しいわね。今回は万華珠蘭を、ブレンドしたの?」

 「よく分かったわね。偶々旧大龍帝国本土に生えてたから、持ち帰って栽培してるのよ」


 2人が話している間に、暁翠はしれっとカップを机の上に置いた。そして、そそくさと部屋を出ていってしまった。

 それを見ていた去音は、呆れた声で言った。


 「暁翠の万華珠蘭嫌いも中々ね……本当に毒でも、混ぜてやろうかしら」

 「あの、どうして元帥は、万華珠蘭が苦手に?」


 水月は脅威は本位で、去音に質問した。

 去音は何も隠すこと無く、暁翠に遭った事を話し始めた。


 「暁翠は過去に、毒を盛られてるの。それが万華珠蘭の薬草で、それ以降口をつけてないそうよ」


 その話は、あまりにも後味が悪い話であった。薬草に毒を盛られるなど、予測不可能だ。暁翠が万華珠蘭を嫌いになるのも、納得の行く話であった。

 すると去音は、突如として白波に話しかけた。


 「白波。そろそろあいつから、延滞料を取り立てるから連れて来て」


 そう言って、去音は白波に1枚の資料を渡した。

 それを見た白波は「任せて」とだけ言って、部屋から出て行った。

 白波と入れ替わりで、暁翠が部屋に戻って来た。

 水月は、暁翠に話しかけた。


 「元帥。大丈夫ですか?」

 「ああ、大丈夫だ。問題無い」


 そう言う暁翠であるが、表情からして大丈夫では無かった。今にも倒れてしまいそうな暁翠を見て、水月は何とも言えなかった。

 それを見た去音は、暁翠に言った。


 「そう毒なんて入ってないんだから、もう少し警戒を緩めたら?」

 「そう言いつつも、この前差し入れで貰ったパンに媚薬を仕込んだのは誰だろうな?」

 「チッ……バレてたか」

 「水月が食べる前で良かったよ……しかもあれ、一般人が食べたら理性を失うレベルの強さだろ」

 「別にいいじゃない。結果的に被害は無かったわけだし」

 「俺も理性を維持するのに結構苦労したぞ!! 流石に4つはきつい!!」


 2人の会話は、ちょっとした揉め事に発展した。内容から分かったことは、去音は暁翠に差し入れたパンに媚薬を仕込んでいたことだけだ。

 2人の口論を見ている水月に、紫桜が小声で話しかけてきた。


 「水月。去音には気をつけた方が身のためよ。あの人に目を付けられると、大抵何かしらの薬を盛られるから」


 そう言う紫桜の目は、遠い目をしていた。おそらく何か盛られたことがあるのだろうが、水月はあえて聞かないでおいた。


 しばらくして、口論は集結した。結論としては、何の解決にもならなかったが、2人共言いたいことを言えてスッキリしているようなのは確かだった。

 それと同時に、部屋の扉が叩かれた。

 去音は、暁翠と水月に指示を飛ばす。


 「暁翠、水月。今日はもう帰りなさい。ここからは、私達の世界よ」


 その言葉を聞いた暁翠は、黙って頷くと霧の門を出現させ、水月と共に中へ入った。

 霧の門が消えると同時に、部屋の扉が開かれた。扉が開かれると、中に1人の男が投げ込まれた。その男は、水月達を解体処分しようとしていた、あの議員であった。

 男は、ひどく怯えた表情で懇願した。


 「お、お願いします!! もう少しだけ待ってください!! 今、まともに食べていける金が無いんです!!」

 「待たないわよ。お前は契約書の内容を、一方的に破った大罪人。更に言うと、お前は私の所から金を借りた。それを返済していない。残り203億1824万円。全て返しきるまで、何処までも追いかける」


 そう言う去音の目は、凄まじい圧力を放っていた。

 男は、心の底から震え上がった。その場から逃げ出そうと後ろを振り向くも、翔和に刀を突きつけられて動けなくなってしまった。

 紫桜は動けなくなった男に近づくと、耳元で圧力をかけた声で囁く。


 「払えないなら、臓器を引き抜く? 肺なら片方あれば生きられるからお得よ」


 紫桜の言動に、男は言葉が出なかった。変わりにできたのは、歯をガタガタ鳴らすだけであった。

 去音はため息を付くと、手で白蓮に合図を送る。

 合図を見た白蓮は、男の耳を掴んだ。そして勢いよく、男の耳を引きちぎった。


 「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 男の悲鳴が、部屋の中に響き渡る。しかし6人は、表情を変えずに男を見つめる。

 男はのたうち回りながら、悲鳴を上げている。それは去音にとって、耳障りでしか無かった。

 そして去音は、のたうち回る男を無理やり掴むと、更に圧力をかけて言った。


 「で、どうするの? 臓器を売るのか、はたまたカニ漁船に乗るのか?」

 「カニ漁船に乗ります」


 男は泣きながら言った。

 去音は男を放り投げると、京花に目で合図を送る。

 合図を確認した京花は、男の髪を鷲掴みにして何処かへ転移した。


 そんな事が起こってるとは露知らず。水月と暁翠は、居間でのんびりとしていた。

 しかし暁翠は、思ったよりもゆっくりできていないようであった。深くため息をつき、落ち着きがない。

 それを見ていた水月は、暁翠の隣に座ると、暁翠の肩に寄りかかった。

 水月の行動に、暁翠を口を開いて聞いた。


 「水月。どうしたんだ?」

 「こうした方が、落ち着くかと思いまして」


 暁翠は返す言葉を失った。水月の言った通り、暁翠の心は落ち着きつつあった。

 暁翠は水月の頭を、帽子越しに撫でながら言った。


 「ありがとうな。水月」


 その言葉を聞いた水月は、微笑んで頷いた。

 

 その次の瞬間、水月は立ち上がると、暁翠に言った。


 「取り敢えず、元帥が万華朱羅を克服できるように頑張りましょう。私、頑張りますから」


 その言葉を聞いた暁翠は、一瞬の内に頭が真っ白になるのを感じた。

 そんな暁翠を他所に、水月は土間へ向かった。

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