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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
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少女なる兵器 第38話「終戦」

怨少戦争が終結し、水月達は鎮守府に戻った。怨念戦争終結の式典では色々と問題が起こったが、それは旧大龍帝国の龍族達によってあっけなく片付く

そして式典後、暁翠に呼ばれて執務室に呼ばれた夜桜、水月、冥月の3人には、信じられないと真実が………………

 戦いが始まって数時間が経過した。全体を見ると、既に5人が死亡、3人が人体欠損などの後遺症が残り、13人が軽症の被害を被っていた。

 対して氷島に蔓延る敵はほぼほぼ壊滅し、全滅まであと一歩のところまで来ていた。


 「そろそろ対岸につくわね……別動隊は上手くやってるといいのだけれど…………」


 海月率いる主力部隊は、正面に残る敵戦車隊の残党を氷島裏の海岸へ追い詰めていた。それと並行して、本隊から離れた別動隊が各地にいる敵戦車隊の残党を追い詰めているはずであった。無線を封鎖している以上、連絡ができないため作戦がうまく進んでいるのかは分からなかった。 


 しばらくして、山岳部を抜けて氷島裏の海岸にたどり着いた。正面にいた敵戦車隊は、海岸に固まっていた。そして直ぐ、森林から敵戦車隊が飛び出してきた。別動隊がうまく誘導できていたようだ。


 「さぁ、舞台は整った…………今までの恨み、ここで晴らすわよ!!」


 海月が叫んだと同時であった。敵戦車隊の残党は生存が絶望的だと判断したのか、こちらに突っ込んできた。


 「何度やったって結果は同じよ!!」


 先陣を切ったのは海月ではなく、寄月であった。正面から敵戦車と衝突すると、零距離射撃を敵戦車の腹部に撃ち込んだ。

 それに触発されたように、他の娘達も一斉に敵戦車に飛びかかった。

 そこからは乱戦となった。主砲弾が飛び交い、砂浜に血が流れ落ちた。それはまさに、大龍帝国と吸血共和帝国が争っていた時を再現しているようであった。いや、実際にはまだ争っているのであろう。

 打ち合いが始まってから数分後、ほぼ互角であった戦いに変化が起こる。


 ー海月、時間よー


 海月の無線から、龍造の声が聞こえてきた。龍造達が指定位置についたのだ。


 「全員退却!! 山岳部に逃げ込め!!」


 海月が即座に指示を出した。その指示に従って、その場にいた全員は山岳部へと退却した。

 それは龍翔の偵察機を通して、龍造の耳に伝わった。


 「総員、今ある残弾の全てを海岸に撃ち込め!! ここで確実に仕留める!! 撃て!!」


 龍造の指示で、海上に居た全員が艦砲射撃を行った。その砲弾は海岸に追い詰められていた敵戦車の残党に向かって一直線に飛んでゆく。

 そして、砲弾が海岸に着弾した。着弾した砲弾は凄まじい爆風を起こし、鉄片を辺りに撒き散らした。

 最初の攻撃で敵戦車の残党は半壊し、残党は混乱に陥る。そこに容赦なく降り注ぐ砲弾の雨。敵戦車の残党は洞窟や森林に隠れようとした。しかし、龍翔と龍彩から発艦された攻撃隊により、急降下爆撃や機銃掃射を受けた。


 そして、気がつくとその場には静寂が訪れていた。辺りには敵戦車の残骸が残っているだけで、他の生物の気配すらも感じられなかった。


 「京花さん……これって…………」

 「えぇ、吸血鬼の反応はどこにも感じられない…………終わったのよ」


 京花の放った言葉は、戦争の終結を意味する言葉であった。その言葉を聞いた海月は、自然と涙を流していた。


 ー海月、どうなったの?ー


 龍造の声が無線から聞こえてきた。海月はただ一言だけ答えた。


 ー全て終ったわー


 その言葉を聞いた龍造は、何も言わずにその場で頷いた。そして、その場に居た全員に向けて言い放った。


 「吸血鬼は全て殲滅された!! 私達の勝利よ!!」


 龍造の言葉を聞いて、その場に居た何人かが歓声を上げ、何人かが涙を流した。


 「やっと……やっと終わったのね…………」

 「長かったわね。それも今日で終わった」


 この戦争で合計で8人が死亡し、3人が人体欠損などの後遺症を患う者が出た。しかし、ここで戦争は終わったのだ。


 その後氷島で死んだ仲間の亡骸を回収した全員は、暁翠が開けた霧のゲートを使って鎮守府へと帰投した。

 鎮守府では、暁翠と霊花が医療キットを持って待っていた。海上から鎮守府に上がった重症の者から治療してゆき、最後は全員の治療を終えた。暁翠と霊花の治療により、全員の怪我がそれ以上悪化することはなかった。


 それから数日後、鎮守府に国会から派遣された一人の男が来ていた。怨少戦争の終結に関しての今後について話に来たらしいが、その男が言うものはあまりにも酷いものであった。


 「10日後に終結の式典をしろと!? 正気なのか!? あいつらはまだ完全に怪我が癒えていない!! 下手をすれば死ぬ者まで居るんだぞ!!」


 暁翠はその話にブチギレていた。無理もないだろう。傷口が開くかもしれない状態のにも関わらず、無理やり叩き起こしてでも式典に出席させようとするのは鬼畜の所業である。


 「ほう、それでは彼女たちの命がどうなっても良いと?」


 男は、水月達の命の安全をちらつかせて暁翠を脅した。これは法律上の「脅迫罪」に該当するものであるが、龍族や兵器への権利というものはどこにもなかった。


 「チッ……わかったよ。だが、あいつ等の命の安全は保証しろよ」

 「はい、もちろんですよ」


 そして、男は去っていった。

 暁翠は即座に式典の準備を進めた。水月達にもこの事を伝達し、万全に近い体制で式典に挑めるように尽力した。


 そして数日後、式典の日がやってきた。鎮守府内のフェンス寄りには観客用のスペースが設けられ、人が式典を近くで見れるようにされていた。

 暁翠は執務室の窓から、外の様子を見ていた。既に外には、見物に来た人々が押し寄せていた。


 「あいつの言葉……どうにも信用ならないな。念の為に呼んでおくか」


 そうつぶやくと、暁翠は6回電話をかけた。


 しばらくして、式典が始まった。流れる音楽とともに伝達、それぞれが伝達で伝えられた指定位置に整列した。

 そして、暁翠による激励の言葉が始まった。その言葉を聞いていた水月達は、戦争の終結を実感していた。

 暁翠の言葉が終わると、国会から派遣された男が台の上に立った。そして、男が話し始める。


 「えー……兵器の皆さん。よくぞ我々人類の為に力を尽くしてくれました。そして、貴女方の役割はここで終わります…………」


 男の話し方は上から目線で、面倒くさがっているようであった。水月は隣りに居た龍城を横目で見てみると、湧いている怒りを抑えている顔をしていた。いかにも「こいつ今直ぐ殺して良いですか」と言ってきてもおかしくない表情であった。

 そして、男の話がしばらく続いた。そろそろ話し終えるかという時、男が最後に行った言葉がその場の空気を一瞬で変えた。


 「であるからして、私達の平和を守りきった貴女達を解体処分とします」


 「解体処分」の言葉に、その場に居た全員が驚いた。表情には出さなかったものの、内心では理解が追いついていなかった。

 水月は暁翠がいる方向を見るも、暁翠は何一つ反論するような行動はしなかった。


 ー元帥……嘘ですよね……………ー


 水月がそう思っている内に、暁翠が最後の言葉を言うために台の上に上がってきた。水月達は暁翠が何を言うのか恐ろしかった。

 そんな不安を他所に、暁翠が話し始めた。


 「全員、お疲れ様……と言いたいところだったが、先程の言葉で全てが変わった。契約書には「兵器の命は保証する」と記載されていた。だが、これはたった今破られた。だからこそ、我々も多少契約は破ってよいだろう。ということでだ、こんなことも予想して特別な人をお呼びした。上がってきてくれ」


 暁翠の言葉で、台の上に一人の人類が上がってきた。それは、霊花であった。霊花が台の上に上がると、警官が騒ぎ始めた。


 「な、霊花だ!! さっさと捕え……………」

 「霊花様が話すのよ。邪魔をするな」


 警官の言葉は、後ろに回り込んでいた京花によって止められた。ナイフを首元に突き立て、警官に恐怖を植え付ける。

 それだけでは無かった、分身を観客の前に立たせ、観客にナイフを向けさせていた。


 「な、何をしているのだ!! これは契約違反だ…………」

 「黙れ!! 契約を破ったのはそっちだろ!! 破ったらにはそれ相応の報いは受けてもらう!!」


 男が反論しようとしたのを、暁翠は威圧して黙らせた。そして辺りが静かになると、霊花が話し始めた。


 「人類よ、久々じゃな。霊花じゃ。さて、今回は妾から話がある。まずは一言言わせてもらおう…………いい加減にせんか!!」


 霊花は、言葉の途中でブチギレた。それと同時に、居間まで隠していたオーラを全開にした。オーラは、周りの空気が歪むほどに強力であり、一部の観客は腰が抜けて、その場に座り込んだ。


 「お主等は何度我々龍族を根絶やしにしようとするのじゃ!! 何万年も前から吸血鬼の脅威から守ってやっていたのは誰じゃ!! 我々龍族であろう!! それをたった一つの嘘に騙されて手のひらを返して…………我々龍族との絆はそんなものか!!」


 霊花の言葉の中には、怒りとともに悲しみも混ざっていた。しかし、周りの人間はその感情には気づくことはない。


 「妾が生きているのは創一のおかげじゃ!! その創一は何のために死んだのじゃ!! 妾を守るために死んだのじゃ!! お主等は……今までの恩を忘れたのか!! 人間であるならば、考える事ができる!! それをお主等はしなかったのじゃ!! 妾は……お前達が憎い!!」


 霊花の言葉はそこで途切れた。全てを言い終えた霊花は、息が上がっていた。それを見た暁翠は台の上に登った。そして、霊花の横に立った。

 そして暁翠は、水月達に呼びかけた。


 「お前ら!! 契約の破棄は我々にとっての宣戦布告だ!! 怪我していようとも関係無い!! お前らならできるだろ!!」

 「はい!!」


 暁翠の呼びかけに、水月達には信念が籠もった返事をした。そして、観客達がいる方向に目を向けた。

 すると、突如として水月達に艤装が装着された。あまりにも突然の出来事で観客達は混乱に陥る。

 そんな中、男は暁翠の前で土下座をした。


 「頼む、辞めてくれ!! そちらが望むことを全て呑む!! だから……だから辞めてください!!」


 男は暁翠の前で土下座しながら、必死に懇願した。

 その言葉を聞いた暁翠は、男の髪を鷲掴みにして頭を持ち上げた。


 「だったら条件を出そうじゃないか。まず、俺達龍族と兵器達の安全の保証。次に、俺達にのみ適応される法律を撤廃して、俺達を一般人間と同じ立場にしろ。最後に、今までの出費金額凡てと旧大龍帝国返してもらおうか。金額は絞めて203億1944万1020円だ」

 「そ、そんなの了承できるわけ無いだろ!!」


 男が反論すると、暁翠は全員に指示を出そうとした。


 その時だった、突如として台の上に白い霧が発生した。それを見た暁翠は、男の髪を放して立ち上がった。

 そして霧の中から、4人の女性が現れたの。その女性達は、龍族特有のオーラを放っていた。


 「暁翠、少し遅れたけど来たわよ」

 「で、要件は何?」

 「早く終わらせてよね。債務の仕事が溜まってるから」

 「ちょうど仕事帰りです。タイミングが重なったのが幸いでした」

 「白波、翔和、去音、白蓮、忙しい時にすまないな。だが、タイミングはバッチリ…………」


 暁翠が言いかけた時、突如として1台の小型トラックが鎮守府に突っ込んできた。そのトラックは鎮守府の敷地内でドリフトして停車すると、中から京華が降りてきた。


 「ごめんなさい。少し出遅れました」

 「いや、問題ない。これから始めようとしていたところだ」


 そう京華に言うと、京華は男を無理やり台の上に引きずって来た。そして、台の机の上に契約書を出し、先程言った条件を書き始めた。

 条件を書き終えると、暁翠は自分の血斑を書類につけた。続いて白波、翔和、去音、白蓮、霊花、京華と血斑をつけていった。

 そして暁翠は、男をその場に立たせて横からそれを見ていた。男は恐怖に引きつった顔をしながら、自分の血斑をおした。


 「暁翠、その男を貰っても良いかしら? 私の所で金を借りてからまだ返済がされてないのよ」

 「あぁ、連れて行ってくれ。それと、そいつはまだ生かしといてくれよ。俺からも取り立てる金がある」

 「えぇ、分かったわ。じゃあね」


 そう言って、去音は霧の門を使い、男を引きずりながら去っていった。

 

 そして、なんとも閉まらない終わり方ではあったが、式典は終了した。

 そこからは暁翠の指示で、水月達はとある場所へ先に集合することとなった。しかし、夜桜、水月、冥月の3人は何故か呼び止められ、執務室へ連れてこられた。


 「元帥? 何かあるのですか?」

 「合わせたいやつがいてな。正直なところ、お前達にとっては受け止めがたいものだと思う…………」


 暁翠が話している途中、扉が叩かれた。


 「入ってくれ」


 暁翠の言葉で、とある一人の女性が執務室に入ってくる。その女性は紫の髪のロングヘアーで、服装は水月達と同じものであった。


 「戦艦型超戦車/紫桜型超戦車 1号車/1番艦 X-1094 紫桜 です。おまたせ、夜桜、水月、冥月」


 水月達は、何が何だかわかっていない状況であった。まず、戦艦型超戦車は自分達の三人だけだと思っていたのだ。それに、名称にも「夜桜型超戦車」と記載されていたのだ。

 そんな水月達を見た暁翠が口を開いた。


 「信じられないと思うが、こいつはお前達の姉だ。旧大龍帝国の情報操作によって、存在が抹消されていたんだ」

 「ここからは、私が話します。まず、私は貴女達が完成する前に沈没してしまったの。私の沈没後は、旧大龍帝国の情報操作によって存在が抹消されてしまった。超戦車が沈没したことは本国にとって大きなショックになる。だから存在を抹消することで国の統制を保っていたのよ」


 紫桜が言っていることは、嘘のようには思えなかった。


 「えっと、つまり……紫桜さんが私達の姉ってことよね?」

 「そうよ、夜桜姉さん」

 

 水月は夜桜に近寄ると、敬礼をした。


 「始めまして、紫桜姉さん。三女の水月で…………」

 「もう!! 可愛すぎるわよ!!」


 紫桜は突然、水月を抱きしめた。水月はあまりにも突然のことで混乱している。しかし、紫桜はそんな事はお構いなしであった。


 「やっと会えたのよ。もっとよく顔を見せて」

 「水を差す用で悪いが、それは後にしてくれないか?」

 「あ、指揮官……ごめんなさい」


 紫桜は水月から離れた。水月は乱れた髪をもとに戻すと、元の位置に戻った。

 

 「ありがとうな、3人共。それと水月、もう少しだけここに残ってくれないか? 少し話があるんだ」


 暁翠は、水月にだけの残れるか聞いた。水月は黙って頷いた。

 紫桜達は執務室を後にして、暁翠に言われた場所へと向かって行った。


 「元帥、話とはなんですか?」

 「本当なら紫桜達を交えて話すべきだろうが、お前のことだから周りの空気に流されてしまうと思った。だからこの場で言わせてくれ…………」


 そう言って暁翠は、執務室の机の中からとある箱を取り出した。その箱は清潔にされており、埃の1つもついていなかった。

 そして暁翠は、箱を開けながら水月にとある一言を言った。


 「水月、俺と結婚してください」

 「え?」


 水月はその言葉に対して混乱した。そして、箱の中には結婚指輪が入っていた。

さて、ここで怨少戦争が終結しました。そして明かされた新たな真実。水月達には姉がいました。それが紫桜です。紫桜は水月達が完成する前に沈んでしまい、旧大龍帝国の情報操作によって存在事態が抹消されてしまいました。その結果、沈没位置すらも不明のままでしたが、暁翠の尽力の成果もあり、無事に復活することができました

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