少女なる兵器 第31話「始まりは終を告げて」
霧の門を抜け、水月達は敵の本拠地がある氷島へ向かっていった。最初の段階として、戦車隊が氷島へ上陸する作戦になっており、その護衛として紀龍、斬龍達、風龍達、紫月と華月が護衛についていた。上陸作戦完了後、紫月の電探があるものを捉え………………
水月達は、霧の門をくぐり抜け、氷島近海へとやってきた。そこは、いつもの風景とは一変した風景だった。空と海が真っ赤に染まり、生物の気配は感じられなかった。何とも言えない不気味さを煽り立てるように、ヒヤッとした潮風が吹き付ける。そんな中でも、水月達は目標達成のために動き出す。
「それじゃぁ皆、後は作戦どおりにお願いね」
「全員、警戒を厳にしてね。敵艦が多数出没してるだけあって何があるか分からないから」
水月と龍造が、それぞれに指示を出すと、それぞれは課された目的のために動き出した。
まず、最初の段階として、氷島上陸予定地付近の敵艦を、水雷戦隊が撃滅する作戦となり。次に、紫月と華月が護衛する戦車隊が乗り込んでいる大発動艇を、戦車隊が氷島に完全上陸するまで航空支援をする手はずになっていた。
予測どおり、氷島に近づくに連れて敵艦隊が見え始めた。始めに、敵艦殲滅に出たのは紀龍だった。紀龍はドスを持ち、Red2Ⅳの腹に突き立てた後、ドスを斜め上に突き上げる。Red2Ⅳは、腹から胸にかけて切り裂かれて撃沈された。紀龍が前衛の駆逐艦を押さえつけている間に、他の娘達は紫月と華月を護衛しつつ、氷島へ近づいて行った。
道中で、風龍達も敵と交戦していったため、氷島に上陸する頃には、水雷戦隊は敵と交戦状態に入ったため、紫月達のそばから居なくなっていた。そうしている内に、氷島の上陸地点の海岸に着き、戦車隊が上陸を始める。紫月と華月は、航空機、攻撃ヘリを飛ばし、周囲を偵察する。幸いなことに、敵からの奇襲などは受けずに戦車隊の上陸が完了した。
「皆さん、私達は作戦の手はずどおりにこの海域から撤退します。陸上は頼みました」
紫月が撤退することを伝えると、指揮車を任されていた海月が口を開く。
「ええ、任せておいてちょうだい。全車前進!!」
「了解!!」
海月の指示と共に、戦車隊は氷島内部への前進を始めた。
「さぁ、私達は撤退しましょう」
「そうですね…………!!」
途端、紫月の表情から余裕が無くなる。それと同時に、紫月はVLSの発射ハッチを開いた。
「華月、今すぐに撤退します。急いで。」
華月は何も言わずに頷き、紫月と共に最高速力で撤退を始める。華月は、撤退を始めると同時に、格納庫から攻撃ヘリを出し、飛行甲板に待機させる。
それから数分後、紫月と華月は、氷島から少し離れた所まで撤退してきていた。最高速と言っても、13ノットしか出ないので長距離を直ぐには移動できない。しかし2人にとってはそれが今のベストであった。
それから三分後、紫月は空を見上げる。紫月見つめる方向には、敵航空機が数十機……いや、数百機見えた。
「来ましたね……氷花隊、発艦始め!!」
紫月は即座に、飛行甲板上に待機させていた氷花6機を発艦させる。華月も、飛行甲板上に待機させていた攻撃ヘリ3機を発艦させる。そうして、氷島沖での制空戦が始まった。氷花隊は、ジェットエンジンの出力を活かし、高速で敵機に機銃掃射を行い、敵機を次々と撃墜してゆく。華月から発艦された攻撃ヘリも敵機と交戦するが、ヘリと戦闘機では性能に決定的な差があり、3機とも直に撃墜されてしまった。氷花もいくら性能が勝っているとはいえ、数的不利により1機、2機と撃墜されてゆく。そしてついに、最後の氷花が撃墜され、攻撃機、爆撃機が紫月達へ向かってくる。
「CIWS、8cm機関砲、迎撃始め!!」
紫月の合図で、腕に装着されている8cm機関砲が迎撃を開始する。紫月は、機関砲だけでなく肩に取り付けられていたCIWSをも使って迎撃を開始する。しかし、数の差があり過ぎた。攻撃機が、次々と魚雷を落としてゆく。速力の無い二人にとって、魚雷を回避する術はなかった。「ドォォォォォォン!!」と、魚雷が爆発する音と共に水飛沫が舞い上がる。
「我、損害軽微!! このまま迎撃を…………」
「紫月、敵機直上、急降下!!」
華月の言葉で、紫月は急降下爆撃に気が付く。紫月は、飛行甲板を盾にして身を守ろうとする。紫月の飛行甲板に命中した爆弾は「バゴォーン!!」と、爆発音を鳴り響かせる。
「…………っ!! 飛行甲板大破!!」
この爆撃により、紫月は飛行甲板を破壊されてしまった。それと同時に、紫月の空気が変わる。
「紫月……?」
「本当なら、使いたくありませんでした。ですが、今使わないと駄目そうですね」
その言葉と同時に、紫月は前髪を上げて、隠していた右目を見せた。
「紫月……貴女……その目は…………」
華月は、紫月の目を見て驚いた。そう、紫月の右目は青く光っていた。
「これは、元帥に授かった力です。龍双眼、これがあれば敵機を目で追える」
そう言うと、紫月は敵機に向けて20.3cm高角砲を発砲する。紫月は、高角砲の砲弾を確実に敵機に命中させてゆく。龍双眼の能力は、一時的に自身の身体能力を上昇させ、反射神経、洞察力を底上げさせる事ができる。しかし、扱いが未熟であれば、使用時間に制限があり、使用後に反動により一瞬体が硬直してしまう。紫月は、龍双眼を今回初めて使った。当然、使用時間には制限がある。その間に、敵機を壊滅させる必要があった。紫月は、龍双眼による洞察力で敵機を次々と落としていった。しかし、紫月は気付けなかった。潜んでいた敵潜水艦に…………
次の瞬間、敵潜水艦から魚雷が放たれた。紫月は、魚雷が自身に接近してから敵潜水艦に気が付くも、同タイミングで龍双眼の効果が切れた。
ーしまった!! 効果が………………!!ー
紫月は体が硬直し、その場から動けなくなった。その間に、魚雷は一気に距離を縮める。紫月は、死を覚悟した。
その時だった、華月が紫月の前に出たのだ。
「え?」
紫月が目を丸くする。その次の瞬間、華月に魚雷が命中する。「ドォォォォォォン!!」と鈍い音爆発音が鳴り響き、水飛沫が舞い上がる。
「華月!!」
水飛沫が収まると、そこには仰向けに倒れている華月の姿があった。
「…………ハハハ……やられ……ちゃったわね」
「華月!! 今すぐに…………!!」
紫月は目を疑った。防御の役割をする艤装を突き破り、華月の足を貫通していた。紫月はそのままその場から動かなくなってしまった。それを見ていた華月が、紫月に話しかける。
「紫月……私を置いて逃げなさい…………」
「え? そんな事……できるわけ無いじゃないですか!!」
紫月は華月の言葉を受け入れられなかった。しかし、華月は言葉を続ける。
「この足では、私はもう帰れない……なら、まだ動ける貴女が帰るべきよ。紫月、貴女には未来がある。私は兵器時代十分に生きた。けど貴方は進水からたった3日で沈んでしまった。せめて、貴女だけでも…………」
「…………分かりました……華月、貴女の事は忘れません………………」
「えぇ、私も紫月の事忘れないわ……またね…………」
そうして紫月は、華月に背を向けて進み出した。残された華月は、腰につけていたポーチから自沈スイッチを取り出した。自然と華月の目から涙が流れる。
「さて、待っているのは無か地獄か……皆……私は幸せだったよ………………」
そして、華月は自沈スイッチをその手で押した。その直後、紫月の背後で大きな爆発音が響く。紫月は、涙を流しながら全員に無線をいれる。
「こちら紫月!! 全員に伝達する、軽空母型超戦車/華月型超戦車1号車 華月沈没!! 繰り返す、軽空母型超戦車/華月型超戦車1号車 華月沈没!!」
その無線は、全員に衝撃を与えた。軽空母型超戦車/華月型超戦車1号車 華月は、氷島沖でその生涯に幕を閉じた……………………
始まりました、第3章…………華月は自沈という選択肢を選びました。自沈を選んだ理由としては、鹵獲されて利用されないようにするためですね。彼女は「兵器時代十分に生きた」と行っていましたが、それは紫月の生きた年月を比べてそのように言いました。華月は何百年と生きたのに対し、紫月は進水から3日後に敵機からの猛攻撃を受けて沈没してしまいました。華月は、そんな紫月を生かしたかったのでしょうね……………




