少女なる兵器 第30話「生還からの終へ向けて」
突如として目から血を流し、意識を失ってしまった水月。彼女はその後回復し、戦車の代表として大規模決戦の最終確認に呼ばれることとなる……………………
水月は、医務室で目を覚ました。気がつくと、水月には酸素マスクと点滴が取り付けられていた。水月は、自身の身に何があったのか分からず混乱するも、ふと目から血が出て突然意識を失ったことを思い出す。
次の瞬間、水月は猛烈な眠気に襲われた。水月は、抗おうとするも眠気には勝てなかった。薄れゆく意識の中、ぼやけた視界に誰が移る。
「今は……駄目………ゆっ……と休……さい…………」
途切れ途切れの言葉が、水月の耳に入る。しかし、完全に聞き取ることはできず、そのまま意識を失ってしまった。
数時間後、水月は再び目を覚ました。辺は暗くなっており、水月は時間が夜になったことを認識する。隣には、暁翠が立っていた。
「水月、やっと目を覚ましたか…………」
暁翠は、冷静な顔をしていた。
「元帥、私は一体…………」
「お前は、放射線病で意識を失っていたんだ」
水月は、とても驚いた。気づかぬ内に、放射線病を発症していたのだ。
「幸いなことにも、正直はそこまで重くなかったから、特効薬の試作タイプⅡを、お前に飲んでもらった。まぁ、副作用として、激しい眠気に襲われるらしいがな」
水月の中で、全てが繋がった。あの眠気は、薬の副作用だったのだ。しかしそれ以前の前に、水月は、意識を失う前に話しかけてきた人物が気になって暁翠に聞こうとする。
「元帥、私が意識を失う前に見た人は一体?」
「いや、その時間は、俺しか部屋に居なかった。だれも、医務室に出入りはしていないが…………」
暁翠は、誰も医務室へ入って来てはいないと言った。水月は、自分の意識が作った幻覚だったと結論づけ、それ以上何も言わなかった。
3日後、水月の容態は完全に回復し、いつもどおりの生活を送れるようになった。いや、半分無理をしていた。足だけは、まだふらついていた。その為、基本的に暁翠が隣に付き添っていた。本来なら、夜桜や冥月が付き添いにつくはずだったが、暁翠がそれを譲らなかった。というよりも、夜桜と冥月には、気を使わせたくなかったというのが本音らしい。
暁翠曰く、決戦の日が近づいている為、肉体的にも、精神的にもあまり負担を掛けさせたく無かったのだろう。
それから2日後、暁翠はいつものように水月の付き添いをしていた。時は夕暮れ時で、暁の水平線が輝いていた。暁翠は、水月を部屋まで送り届けると、いつものように、その場を立ち去ろうとした。しかし、水月が暁翠を呼び止める。
「元帥、いつも何処へ行っているのですか?」
「いや、特に何処へも行っていない。いつも自室に居る。大丈夫だ、無理もしていない」
そう言い残すと、暁翠はササッと歩いて行ったしまった。水月は、暁翠に何かあることが分かっていた。京華が鎮守府から出て行った後、ラジオのあるニュースを聞いてから、暁翠は居なくなることが多くなった。
ー次の、ニュースです。旧大龍帝国沖の、深度約6300mの付近で、巨大な鉄の反応がありました。これは、戦車に酷似した反応を示しており、まるで、旧大龍帝国が運用していた超戦車のような形の反応だそうです。今後………………ー
あのニュースを聞いてから、暁翠は何かを隠している気がした。しかし、水月は何も聞こうとしなかった。聞いたとしても、暁翠に上手く躱されてしまいそうな気がしたからだ。
ー今は……駄目………ゆっ……と休……さい…………ー
水月の脳裏に、意識を喪う前の言葉が蘇る。
「何だろう……あの懐かしいような感じは………………」
それから5日後、水月、龍造の2人は、会議室に呼び出されていた。しかし、今回は通常の会議室ではなく、大型のかいぎしつだった。その会議室には、壁にモニターが設置されており、作戦の説明がしやすくなっていた。
「ではこれより、秘密裏に作戦会議を開始する。この作戦会議が終り次第、他の全員に伝達し、大規模……いや、最終決戦に向けての最終確認を行う」
それから、本格的に氷島への上陸作戦、近海の哨戒作戦が話され、それを各自に伝えるべく、暁翠は一人一人の作戦内容の資料を渡した。その数、約150枚、いや、それより多いのかもしれない。
「…………本作戦会議は以上だ、何か異論はあるか?」
暁翠は、代表として呼んだ2人に、最終確認をする。
「いえ、何も問題ありません。」
「はい、我々の未来の為に、この作戦を成功させてみせます。」
水月と龍造は、暁翠の最終確認に対して、問題無いと答えた。すると、暁翠の顔から緊張が解ける。
「そうか……では、これで作戦会議を終了する。各自に作戦内容が書かれた資料を渡しておくように…………」
暁翠は、作戦会議の終了を宣言した。その時の暁翠の表情は、どこか寂しげな表情をしていた。
それから、水月と龍造は、それぞれの派閥に作戦内容が記載された資料を届けた。全員、資料を渡されたときには、固唾をのみ、決意が固まっていた。それは、水月と龍造も例外ではなく、その目には、強い意思が宿っていた。
それからしばらくして、作戦結構の前夜になった。それぞれは、食堂に呼び出されていた。食堂には、正月のとき並の料理と、お猪口一杯に注がれていた酒が、それぞれの席に用意されていた。全員が揃うと、暁翠は話し始める。
「皆、知っての通り、明日は怨少戦争に終止符を打つ大規模決戦が予測される。明日の明朝、俺が鎮守府より少し進んだ海域に霧の門を開く。そこから、氷島へ向かってもらう。全員、今日ばかりは楽しんでくれ…………我、龍帝住者達尽全泰……澗杯」
暁翠の澗杯のと言葉と同時に、その場に居た全員が、お猪口に入っていた酒を飲む。暁翠は、澗杯の前に何かを唱えていたが、それは水月達の耳には入らない。暁翠が、わざと聞こえないようにしたからだ。
その後、食事が終わると全員は自室に戻り、睡眠を取った。
4月7日、午前5時27分、全員は、海上に待機していた。戦車隊は、大発動艇に乗り込んでいた。そして、暁翠が鎮守府本部から出て来た。そして、出撃前の言葉を話し始める。
「全員、よくここまで着いてきてくれた。昨夜も行った通り、この戦いは大規模な物になると予測される。それ故、下手をすれば命を落としかねない。だが、ここで終わらせなければ、その後待っているのは全滅だ。だからこそ、ここで決着を付ける必要がある…………時間だ、総員出撃!! 命令だ、必ず生きて帰れ!!」
「了解!!」
午前5時30分、怨少戦争の勝敗を決める運命の戦いが始まった。
「我、汝に祈りを捧げ奉る。我は望み、祖国の平和と安泰を欲する。我が願い、聞き入れたまえ…………」
暁翠は、呪文を唱え、大規模な霧の門を発生させる。その中へ、彼女達は消えて行く。鎮守府の外に集まった人間は、それを眺めていた。
しばらくして、彼女達が通り終わったそのゲートは閉じられた。
暁翠は、朝日が登る水平線を眺め続けた…………
こうして始まった、怨少戦争分け目の戦い……これは、約1日で集結する、大規模な戦いとなる………………
さぁ、ここで終わるが第2章。次回からは3章へと突入します。大規模決戦はどのようにして終わるのか。そして、この先の彼女達の未来は…………第3章に続く……………………




