少女なる兵器 第28話「強行偵察作戦」
怨少戦争が始まってから、二年の月日が流れ、鎮守府では本格的な敵地発見への行動を強めていた。しかし、海軍は疲弊戦闘で疲弊しきっており、まともに出撃ができない状況だった。そこで、水月達「超戦車」が呼び出され、強行偵察作戦を行うことになる……………………
敵輸送艦隊を奇襲してから数日後、鎮守府では新たな作戦に向けての行動が活発化していた。それは、敵の本拠地を奇襲することである。この怨少戦争が始まってから、約二年が経過した。そろそろ、本格的に敵の本拠地を割り出さなければ、持久戦となり、こちらが確実に不利になるのは明白だった。しかし、事実上の艦隊は、大きな損害を被っていたため、まともに稼働できない状態だった。そこで白羽の矢が立ったのが、陸海共同軍所属の超戦車達だった。
「…………であるからして、この五つの場所まで絞れるのだが、編成をどうするべきか。お前達にも、活動範囲は限られている。」
会議室では、既に会議が始まっていた。そこに呼ばれていたのは、戦艦型超戦車 夜桜、水月、冥月 空母型超戦車 紫月 軽空母型超戦車 華月、夜月、弥月 駆逐艦型超戦車 澪月、葛月、清月、烈月の十二人が呼ばれていた。駆逐艦型超戦車の四人は、宏月の妹であり、夜桜達と同時のタイミングで再生していたが、こっちの体になってからは、実践には出たことがなかった。それ故か、会議室での緊張感が半端なかった。そうしている間にも、議論は続き、大凡の編成が確定した。
「この編成に異論がある者は、今のうちに言ってくれ。早めに修正する。」
暁翠が、現在の編成について問うと、水月が手を上げた。
「元帥、言ってはなんですが、こっちの体で、実戦経験が無い澪月達に、この作戦はあまりにも危険すぎます。夜桜姉さんと、冥月をそちらに回して下さい。」
それを聞いた、夜桜と冥月は、すぐに抗議した。
「冥月、いくらなんでも単独行動は危なすぎるわ。」
「せめて私か、夜桜姉さんが、水月姉さんに着いていきます。」
水月は、去年一度生死の狭間を彷徨った。それを考えると、二人が心配する気持ちは理解できた。しかし、水月は二人に対して、首を横に振り、話しだした。
「元帥、龍造は出撃可能ですか? 夜桜姉さん達が澪月達の支援をして、私は、龍造と共にこの海域を調査します。」
「分かった。だが、まずは龍造に許可を貰わないとな。」
水月の言葉を汲み取った距離は、鎮守府の放送で、龍造を会議室に呼んだ。龍造が会議室に来ると、水月は龍造に事情を話す。すると、龍造は口角を上げてこう言った。
「断るわけ無いじゃない。むしろ、誘ってくれて感謝してるわ。」
龍造は、呆気の他素直にに承諾してくれた。暁翠は、龍造の意志を確認すると、直ぐに再編成を行った。
それからしばらくして、会議は夕日が水平線に沈みゆく頃に終了した。会議が終了すると、それぞれは自室へと戻って行った。そんな中、暁翠は一人会議室に残っていた。夕日が沈みゆく水平線を眺めていると、会議室の扉が叩かれた。
「すまないな……ただでさえ忙しい時に…………」
「いえ、問題ありません。して、ご要件は何でしょうか?」
翌晩、水月達は鎮守府を出港した。その日は雨で、視界が悪かった。唯一の救いだったのが、それぞれの分岐点まで接敵しなかったことだった。それぞれが、目的地へ向けて分かれると。そこからは無線封鎖を行った。決して、敵への対策ではなく、ここが旧大龍帝国の近海であったためだ。この日は、人間達が旧大龍帝国の調査に来ていた為、気づかれないようにする必要があった。
それから数分後、夜桜達の調査海域にて…………
「皆、決して離れないようにね。特に、潜水艦には注意して。」
「はい!!」
ここの調査部隊の編成は、夜桜、澪月、葛月、弥月で構成され、それぞれは、近海を警戒していた。そんな中、澪月の逆探が何かを捉える。
「敵潜水艦の反応アリ!! おそらくこの近くです!!」
それと同時だった、弥月に魚雷が命中したのだ。魚雷は、爆発と同時に大きな水飛沫を上げた。
「弥月!!」
夜桜が叫ぶ。水飛沫が収まると、そこには片足を負傷した弥月が居た。魚雷の威力に耐えられなかった艤装が破損し、弥月の足に深く突き刺さっていた。そのまま、弥月の血が、海に滲み出す。
「弥月さん!!」
葛月が急いで弥に近づくと、弥月は、首を横に振った。そのまま、何も言わずに、対潜哨戒ヘリコプターを発艦させる。そのまま、一定離れたところで、対潜哨戒ヘリコプターは、爆雷を透過した。その場から、悲鳴のような声が聞こえてくる。爆雷が命中したようだった。
「皆、私のことはいいから、先に進んでちょうだい。」
指揮を握っている夜桜は、この言葉に一瞬躊躇したが、弥月の言葉を飲み、調査を再開した。
その頃、冥月達の調査海域にて…………
ここの編成は、冥月、清月、烈月、夜月で構成されていた。調査する海域は、特に変化もなく、敵が潜んでるとは思えなかった。だが、警戒心だけは常に持ち、いつ如何なる時も臨機応変に対応できるようにしていた。
しばらくして、小島を迂回しようとしたときだった、小島から魚雷艇が数十隻と襲いかかってきた。冥月達は、即座に反撃を開始し、魚雷を発射される前に魚雷艇を仕留めようとした。しかし、上手く行かないのが現実である。魚雷が数本、こちらに向かって発射された。
「回避行動!!」
冥月はすぐに指示を出し、回避行動を取らせる。しかし、烈月に魚雷が一本命中してしまった。
「チッ…………」
烈月の艤装にヒビが入り、浸水が始まった。それと同時に、魚雷艇を殲滅した他の三人が烈月に近寄ってきた。清月は、応急修理キットを使い、烈月の艤装の浸水を止めた。
「ありがとう、清月姉。」
「いいのよ、私のかわいい妹なんだから、もっと甘えてもいいのよ。」
「それは遠慮したく…………」
こんな会話を挟むくらいには、まだ余裕があったようだ。そうしている間に、夜月が、対潜哨戒ヘリコプターを飛行甲板に用意させる。
「冥月さん、一度周囲の偵察をします。他にも何か潜んでいるかもしれませんので。」
そう言って、夜月は対潜哨戒ヘリコプターを発艦させた。
その頃、紫月達の調査海域では…………
「はぁ……何で私達空母二隻で海域の調査なんか…………」
「まぁ、仕方ないんじゃないの。出せる戦力が、あまりないわけだし。」
ここの編成は、紫月と華月の二人で構成されていた。紫月は、正直この編成に不満げな表情をしていたが、華月は、それを笑って宥めていた。
「戦力な無かったとしても、空母に護衛無しは…………ん? あれは…………」
紫月が何か言いかけていたが、突如として水平線の向こう側へ目をやる。それでもあまり見えなかった為、紫月は双眼鏡で水平線を見た。
「紫月……何か見えた?」
「華月、今すぐに偵察機を飛ばします。華月も、ヘリコプターを発艦させてください。」
紫月は、それだけ言うと、すぐに偵察機の発艦準備にかかった。華月は、紫月よりも早く、対潜哨戒ヘリコプターを発艦させる。その後、紫月も龍式ジェット戦闘機52型 流花を発艦させる。紫月は、深刻そうな表情をしながら、飛び立ってゆく流花を見ていた。
その頃、水月と龍造の調査海域では…………
「水月、ここまで敵が居るなんて聞いてないわよ!!」
「私だって知らなかったわよ!!」
調査海域に、数多の敵艦が出現し、水月と龍造に襲いかかってきていた。既に、戦闘が始まってから十分以上経っており、二人共疲弊してきていた。
「せめて、後二人くらい誰が居てくれたらね……」
「龍造、そんなこと言ってる暇は…………!!」
水月の脇腹に向かって、一発の砲弾が飛んできた。それは、確実に水月に命中……するかに思われた。突如、砲弾が空中で両断され、爆発したのである。その直後、横から声がする。
「提督の言う通り、ついてきて正解でした。」
横を見ると、刀を振り終えた一人の女性が立っていた。
「斬龍がた軽巡洋艦一番艦 斬龍。これより戦闘機状態に移行します。」
斬龍だった。斬龍の言葉と同時に、斬龍の妹である、嶄龍、慚龍、蔽龍、憖龍が飛び出し、刀を持って敵艦に切りかかっていった。艤装はつけているものの、主砲弾は使わず、五人は己の力だけで切りかかっていった。
「凄いわね……艤装を使わず、己の力だけで戦うとは………………」
「あの娘達は、ああするしか無かったのよ。あの娘達が建造された時には、軽巡洋艦は不要の長物になっていたの。だからこそ、こっちの体になってからは、己の実力を磨くために刀を振り続けたのでしょうね…………」
龍造の言葉は、どこか悲しげな言葉だった。水月は、それを聞きながら、斬龍達が敵艦を全滅させていくのを見ていた。
その後、調査が終わり、それぞれが合流地点にて合流した。それぞれ報告結果は、即座に無線で鎮守府に届けられた。
その時だった、突如として、一本の魚雷が、夜月に向かって突っ込んできた。いち早く気付いたのは、弥月だった。魚雷の被雷を回避できないと悟った弥月は、夜月の盾になった。次の瞬間、「ドォォォン!!」と、何かが弾けるようにして、水飛沫が舞い上がった。水飛沫が収まると、そこには仰向けになった弥月の姿があった。魚雷の威力が強すぎたせいか、夜月の足から血が大量に出始めていた。
「弥月!! 早く治療を…………」
華月の言葉を遮るように、弥月は華月の口を手で塞ぐ。そのまま、弥月は気を失ってしまった…………
今回、初めて登場した超戦車が何人もいました。その内の四人は、皆さんもすっかり忘れているであろう、既に沈んでしまった宏月の妹達です。その他にも、華月の妹である夜月、弥月が登場しました。もっと言いたいと、斬龍とその姉妹も登場しましたが、これ以上話が長くなるとまずいので割愛します。さて、ここで初めて登場した娘達は、兵器時代に日の目を見ることはありませんでした。華月型超戦車は、燃費の問題、宏月型超戦車は、火力不足、斬龍型軽巡洋艦は、就役したときには既に時代遅れになってしまっていました。それぞれが、生まれ変わってからの鍛錬の結果が今回の強行偵察作戦の成功に繋がったと言っても過言ではなかったでしょう。彼女達は、強いですからね。




