少女なる兵器 第27話「今があるから」
敵輸送艦隊の動きを掴んだ鎮守府では、敵の輸送路を断つための奇襲作戦の会議が行われていた。しかし、敵輸送艦隊に、空母機動部隊が混ざっていたことで、奇襲作戦の内容は難航していた。そこに龍城が現れ、暁翠に衝撃の提案をする……………………
鎮守府では、とある作戦会議が、裏で進められていた。鎮守府の通信網では、敵の輸送艦隊の航路を掴めていた。それを奇襲し、敵の補給路を断とうとしていた。しかし、これには問題があった。それは、敵の輸送艦隊の中に、空母機動部隊が混ざっていたのだ。数字前の、神龍型駆逐艦による大損害を被ってからか、守りがより強化されていた。見つかると、こちらが大損害を受ける可能性があり、どう奇襲するかを考えていた。
作戦会議が始まって数時間後、昼頃になった為、会議は一度終了した。午前の会議では、奇襲の案が多く出たが、どれもリスクが高く、決定に欠けていた。暁翠は、頭を悩ませながら、執務室の椅子に座り、昼食も食べずに一度仮眠を取った。
休憩時間が終わり、午後の会議が始まった。しかし、そこには呼ばれていない者が一人居た。龍城である。龍城は、暁翠が会議室に戻ってくるなり、詰め寄って話始める。
「提督、今回の作戦ですが、私を囮にしてください。」
龍城が言ったことは、暁翠にとって予想外の言葉だった。それを聞いた暁翠は、龍城を説得しようとする。
「龍城、あまりにも危険すぎる。何か別の作戦を考えるから、お前が自身を犠牲にする必要はない。」
「もしも明日、輸送艦隊が予想より早く動き出したら? 他の娘が命を落としたら? そんなことが起こらないためにも、、私が囮になります。私には、今があるからこそこの役を買って出ているのです。」
しかし、龍城が引き下がることはなかった。おそらく、兵器時代の行動が関係していたのだろう。過去に龍造が、水月に話した通り、龍城は味方艦隊を守るために、敵機1200機から猛攻撃を受け、沈没している。だからこそ、自分よりも他の娘を優先しているのだろう。
「分かった……その意見を採用しよう…………」
暁翠は、龍城の意見を渋々承諾した。龍城は、何も言わずに暁翠に頭を下げた。
その後も、作戦会議は続けられ、気がつけば深夜を過ぎていた。しかし、作戦内容と決行日が決まり、それぞれは自室へと戻って行った。暁翠は、最後に会議室を退出し、会議室に、鍵を締めた。暁翠は、鍵を保管室に戻して自室へと戻る途中、ふと足を止めた。
ー今回の作戦、どこか違和感が残る……何なんだ、この違和感は………………ー
暁翠は、胸の何処かに大きな違和感を感じていた。不安に思いながらも、暁翠は自室へと歩いて行った。
それから3日後、作戦決行日がやってきた。夜9時に、編成された、空母機動部隊、打撃部隊、水雷戦隊、囮部隊は鎮守府を後にした。暁翠は、艦隊の姿が見えなくなるまで、海を眺めていた。
それから数時間後、敵艦隊が通るであろう予想進路付近に到着した。海域に到着すると、囮部隊は、空母機動部隊の偵察機の情報を元に、輸送艦隊への突撃をするために、別方向へと進路を切る。それと同時に、機動部隊の龍彩が、戦闘機兼偵察機を飛ばす。
偵察機を飛ばして5分後、敵輸送艦隊の位置が割れた。それは、予想進路に沿って進んでいた。その進路であれば、作戦どうりに龍城達が突撃を敢行できた。龍彩は、即座に龍城に無線を飛ばす。
「龍城、我、予測進路二敵輸送艦隊ヲ確認セリ。ソノママ突撃ヲ敢行セヨ。」
「了解シタ。我、コレヨリ突撃ヲ敢行スル。」
龍城は、無線を切ると、随伴艦として編成された、水龍と雪龍に向かって叫ぶ。
「二人共、気を引き締めて掛かって!! 私達が耐えれば、機動艦隊と打撃部隊が仕留めてくれる!! 誰一人として沈没するな!!」
「了解!!」
「了解しました。」
会話を終えた三人は、敵輸送艦隊に突撃を開始した。それと同時に、敵空母機動部隊が三人の存在に気づき、攻撃機、爆撃機を発艦させる。航空機が到着する前に、龍城は主砲の照準を合わせる。
「一番、二番砲、撃て!!」
龍城は、60.3cm連装砲の63.8kmという圧倒的な射程距離を活かして攻撃を開始する。その砲撃で、まずは敵の護衛駆逐艦を二隻を撃沈した。
「三番、四番砲、撃て!!」
続けて、龍城は三番砲塔、四番砲塔の射撃を開始する。その砲撃で、敵輸送船を一隻撃沈した。それと同時に、敵攻撃機が間近に迫ってきていた。そこで、水龍と雪龍が前に出る。
「雪龍、攻撃型防空駆逐艦の実力、ここで発揮しましょう!!」
「了解しました、水龍姉さん。」
水龍と雪龍は、敵機に向けて噴進砲を撃ち始める。噴進砲のロケット弾は、敵機直前、または胴体付近で爆発し、敵機を数十機撃ち落とした。しかし、まだ安心はできない。敵機はまだ数十機と残っている。水龍と雪龍は、直ぐに主砲と機銃を使った対空戦闘に切り替える。しかし、数が多すぎた。数機の爆撃機が、龍城に爆弾を落として行った。爆弾は、龍城の艤装に命中、爆発し、火災が発生したのか、艤装が炎上する。
「龍城さん!!」
雪龍が、龍城に向かって叫ぶ。龍城は、艤装の火災を消化しながらも敵機に高角砲を撃ち、機銃掃射を続行した。
「何のこれしき、こんなことで2大戦艦は沈まないわよ。」
龍城は、再び敵輸送艦隊へ向けて攻撃を再開する。
それから、10分ほどが経った。全員が消耗し、囮としての役割に、そろそろ限界が来ていた。そこへ、再び敵機が来襲する。高角砲と機銃の残弾も残り少なく、まともに反撃ができなくなった三人は、ほんの一瞬、死を覚悟した。
その時だった、敵機に機銃掃射を敢行する戦闘機が現れた。
「あれは……龍式艦戦の72型ね…………ほんと、遅すぎるわよ。」
そう、龍彩が率いる、空母機動部隊の航空隊が到着したのだ。それと同時に、風龍率いる水雷戦隊が到着した。龍城達とすれ違いざまに、敬礼をすると。水雷戦隊は、敵輸送艦隊へ突撃を開始した。龍城達は、作戦どおり、このまま鎮守府に帰投する為に、方向転換を行おうとした。
その時だった、突如として、龍城に複数の徹甲弾が命中した。そのうちの一つは、龍城の脇腹を撃ち抜いた。飛翔方向を見ると、敵の打撃部隊がこちらに向かってきていた。
「水龍、雪龍……ここで待っていなさい。直ぐに終わらせてくるわ。」
血まみれになった龍城は、そう言って刀を抜いた。
「龍城さん、待って下さい。ここは私達が…………」
雪龍が止めようとしたが、龍城は振り向かずに首を横に振る。雪龍は、何かを悟ったのか止めるのを辞めた。水龍も何も口出ししなかった。そうして、龍城は敵打撃部隊へ単独突貫していった。
数時間後、鎮守府に全艦隊が帰投した。艦隊が帰投して数分経った頃に、執務室の扉が叩かれた。暁翠は、いつもどうり、入るように指示するが、入ってきた部隊を見て、言葉を失った。そこには、水龍と雪龍に支えられた、全身血まみれの龍城が居た。龍城は単独で敵打撃部隊へ突撃し、たった一人で敵打撃部隊を壊滅させたが、龍城は意識を保っているのが精一杯なほどまで怪我をしていた。暁翠は、龍城を執務室のソファーに寝かせると。急いで机の引き出しから、医療キットを持って来た。すると、龍城が暁翠に話し始める。
「私より……他の娘を……優先して……くだ……さい…………」
龍城は、途切れ途切れながらに、他の娘を優先するよう暁翠に伝える。
「お前が一番重症だ。大人しくしとけ。」
暁翠はそれだけ言うと、龍城の怪我の処置を始めた。そこで、龍城の意識は途切れた。
次に龍城が目を覚ましたのは、療養室のベッドの上だった。腕には、点滴が刺されていた。隣には、雪龍が椅子に座っていた。龍城は、手を伸ばそうとしたが、雪龍がそれを止める。
「龍城さん、今は休んで下さい。貴女の体が大切です。」
龍城は、大人しくそれに従い、手を元の位置に戻す。そうして龍城は、今回の作戦について考えながら、目を閉じた。
龍城の行動は、兵器時代の行動をほとんどそのまま持ってきました。かなり前にも説明したとおり、龍城は初陣の龍森林海奪還作戦にて沈没しています。しかしそれは、味方艦隊を逃がすための時間稼ぎとして、雪龍とニ隻で敵機一二〇〇機と戦闘を繰り広げました。雪龍は生き残りましたが、龍城はその場で横転、弾薬庫誘爆をを起こして、船体が真っ二つに両断され、深き海の底へ沈んでいきました。だからそこ、今回の人生(?)でも、「今があるから」他の娘を守ろうとしようとしたんでしょうね。




