少女なる兵器 第26話「不穏な気配」
京華が鎮守府を去ってから、約1週間が経った。その間は、大きな作戦行動が連続して行われていたが、そこまで損害被らず、徐々に前線を上げていった。
しかし、ここ最近になって、大きな変化が現れ始めていた。夜間海上警備を行っている、神龍型駆逐戦車の、白龍と、紫龍が日に日に窶れてきていたのである。何かあったのかと聞いてみても、「大丈夫」の一点張りで、姉の神龍や燕龍、祇龍達は大変心配していた。
そらから数週間後、いつものように夜間海上警備を終えた神龍姉妹が帰って来た。しかし、白龍と紫龍は目の下にくまができるほどに窶れて、まともに歩けすらしていなかった
ついには、白龍と紫龍が膝をついてその場に倒れた。
数時間後、2人は医務室で目を覚ました。しかし、起き上がるほどの力は残っていなかった。そこへ、神龍と祇龍がやってきた。
「白龍、紫龍、お前たちは無理をし過ぎだ。精神回復塩を混ぜた水を置いておく。飲むと良い」
そう言って、祇龍は精神回復塩を混ぜ合わせた水をベッドの横の棚の上に置いた。
その次は、神龍が2人に話しかけた。
「お主等よ、何故、儂らに説明しようとせんのじゃ? 儂はお主等の姉だ。何かあれば頼ってくれればよいのじゃぞ」
自分の状態と、神龍の言葉で全てを諦めたのか、二人は全てを話し始めた。
「私達の警備担当区画だけ、やたら敵潜水艦が潜伏してるのよ…………」
「爆雷は投下してるのだけれど……素早すぎて当たらないの…………」
2人が交互に言い終わると、神龍は「分かった。」とだけ言い残すと、祇龍と共に医務室を出て行った。
医務室を出て行ってすぐ、神龍は祇龍に話しかける。
「のう、祇龍よ。今回の件、儂らで片付けぬか?」
「えぇ、その方が良いでしょうね」
そう言うと、2人は執務室へ向かった。
執務室に入ると、神龍と祇龍は、暁翠に自分達の担当区画変更を申し出た。
暁翠は思うところがあったが、2人の心の内側を察し、担当区画移動を許可した。
2人は許可が出ると同時に、白龍と紫龍が担当していた区画へ向かった。担当区画は、比較的波が穏やかで、敵潜水艦が潜んでいるようは思えなかった。
しかし、その区画は、瀬戸内海の入り組んだ海岸地形により、夜になると月明かりが当たらず、他の場所より一段と暗くなる区画だった。地形からそれを判断した神龍は、全てを察した。
そして夜になり、神龍と祇龍は例の区画へと向かった。天気は曇りで、辺りはより暗くなっていた。
区画に到着してから数分後、神龍は、祇龍に話しかける。
「祇龍よ、お主は今宵の件、どう思う?」
「今回の件は、難題案件ね。白龍と紫龍があれほど疲弊するくらいだから……………神龍姉さん。お出ましのようね」
祇龍は、敵潜水艦が現れたことに即座に気がつく。それは、神龍も同じであった。
既に、神龍の左手には、爆雷が握られていた。
「祇龍よ、沈まぬようにな」
「神龍姉さんこそ」
そう言うと、2人は別々の方向へ進み始めた。先手を取ったのは神龍と祇龍だった。それぞれは、爆雷を海へと放り投げる。
爆雷が爆発すると、爆発源から悲鳴のような声が聞こえてきた。爆発が、敵潜水艦に命中したようだ。しかし、気配は複数個存在している。まだ油断はできない。
そうしているうちに、魚雷が祇龍に向かって突っ込んでくる。しかし、祇龍はそれを難なく躱し、反撃の爆雷を飛ばす。
爆雷は見事命中し、敵潜水艦を轟沈させた。神龍は、持っている錫杖の先端部分で、敵潜水艦を真上から一突きして轟沈させた。
それから数十分後、敵潜水艦は壊滅した。神龍と祇龍は血だらけになりながらも、敵潜水艦を壊滅させることに成功したのだ。
しかし、神龍達に不幸が襲う。爆雷の爆発音を聞いたのか、敵艦が集まってきた。しかと、その敵艦はRedⅤ級駆逐艦だった。神龍型では、性能で少し劣っており、真正面から迎え撃つには部が悪すぎた。逃げることも、隠れることもできない。2人は死を覚悟した。
その時だった、Red5-Ⅷが突如爆散した。突如、神龍の無線が反応する。
「神龍姉さん、遅くなりました。下がっていて下さい。後は、私達が対象します」
燕龍の声だった。その直後、砲弾が飛んでくる。飛んできた方向を見ると、燕龍、鳳龍、妙龍、關龍、古龍、の5人が見えた。燕龍が指示を出し、それぞれが各艦を撃沈していった。神龍と祇龍は、呆然としながらそれを見ていた。
それからしばらくして、敵艦隊は壊滅した。全員、血と重油塗れになってしまったが、命に別状は無く、鎮守府に帰投した。その後、神龍と祇龍が区画の警備を続けたが、その区域に敵潜水艦は2度と現れなかった。
しばらくしてして、白龍と紫龍が、警備に復帰した。二人は、神龍達に合うなり、謝罪した。
「神龍姉さん。今まで黙っててごめんなさい」
「姉さんのおかげで、助かりました。ありがとうございます」
2人は、深々と神龍達に頭を下げた。
「何を言っておる。いつでも頼るが良い。儂はいつでも相談にのろう」
神龍達は、笑ってそう応えると、睡眠を取るため、自室へと戻って行った。白龍と紫龍も、それぞれの自室へと戻った。
その頃の執務室では、とある会話が行われていた。
「提督、次回の作戦、どうなされますか?」
「あぁ、少し危険な目に合わせてしまうかもしれないが、やってくれるか?」
「えぇ、私にできることなら何でもしますよ。制海権を取り戻しましょう」




