少女なる兵器 第22話「隠蔽された法律」
国家、水月の扱いに対して裁判を起こした暁翠。裁判の判決を下す裁判長は実は……………
翌日、氷龍が水月の治療を終えた時、暁翠が水月の自室へ入ってきた。
「氷龍、どうだった?」
暁翠が、氷龍に水月の状態を尋ねる。
「かなり酷いわ……どれだけ苛烈な暴力を受けていたのかが分かるほどに…………」
氷龍は、重い口調で暁翠に水月の状態を伝えた。
「そうか……直に暗龍と黒龍が戻って来る。証拠が揃ったら、直ぐに控訴しよう。」
「あの…………元帥、一体何をするつもりなんですか? 私達の言うことなんて、信用されなさそうですが…………」
水月が、暁翠に問を投げる。
「あぁ、それはな…………」
暁翠が言いかけた時だった。暁翠の言葉を、二人の声が遮った。
「提督、何とか証拠はつかめたわよ。」
「早い所、水月さんが受けた痛みを味あわせましょう。」
証拠を掴んだ暗龍と黒龍が帰ってきた。二人の手元には、大量の資料と、一つのUSBがあった。
「暗龍、黒龍、ご苦労だった。後は、俺に任せとけ。」
そう言って、暁翠は暗龍と黒龍を自室へ戻した。扉を閉めると、暁翠は水月に話しかける。
「大丈夫だ、水月……今回は俺だけじゃない……あいつもついてる…………」
水月は、暁翠が言った「あいつ」が分からなかったが、それ以上聞くことは無かった。
裁判の日、水月は、緊張しつつも法廷に足を運んだ。今回の裁判で、審議を行う裁判長は「五藤一」、誰もが知っている有名な裁判長たった。法廷で、暁翠は用意した資料と防犯カメラの事故当時の映像を全て裁判所へ提出した。それを踏まえ、暴行罪、器物破損罪の名目で、損害賠償40万と水月の無罪を求めた。対して検察側は、資料も映像も不適切だとして、更には国家を横転させようとしているとして、水月の死刑を求めた。普通に考えてこれだけのことで、死刑を求刑するとはあり得ないことだった。
そして、判決の時がやって来る。
「主文、水月を無罪とし、国に金40万を命ずる。」
それを聞いた検察側は、五藤裁判長に異議を唱える。
「裁判長、これは憎き龍族による国家を横転させようとしている策略です。なのに何故………………」
「静粛に!!」
五藤裁判長の言葉で、その場は静寂に包まれた。それを確認すると、五藤裁判長は話を始める。
「何処にそのような証拠があるのだね、何故死刑を求刑する必要があるのだね、対龍兵法にそのような記載は無い!! それどころか、先の裁判では法律に違反した処罰が下されている!! これは、立派な立憲君主制違反である!!」
五藤裁判長の勢いは凄まじく、検察側は何も言えなくなっていた。五藤裁判長は、そのまま話を続ける。
「対龍兵法7条 兵器は人間に危害を加えてはいけない……しかし、これは不可抗力の場合無罪になるはずだ、証拠もなしに有罪判決を下すなど言語道断!! いつからこの国は、そのようになってしまったのだ!! 暁翠殿を見てみろ、たった一人の兵器為に証拠をしっかりと容易してみせたのだぞ!! 以上閉廷、これ以上の控訴は認めない!!」
五藤裁判長の言葉は、検察側を完全に黙らせた。こうして、水月の無罪と、損害賠償を勝ち取ることができたのだった。
数日後、暁翠は水月を連れて、とある一軒の住宅へ向かった。暁翠がインターフォンを鳴らすと、玄関から五藤裁判長が出てきた。
「おや、暁翠殿、それに……水月殿でしたかな? 中へお入り下さい。」
五藤裁判長は、暁翠と水月を家の中へ招き入れた。五藤裁判長は、暁翠と水月をリビングのソファーへ座らせると、お茶を用意した。
「ささ、冷めないうちに……」
五藤裁判長の進められるままに、暁翠と水月はお茶を飲む。暁翠が、お茶の入った湯呑みを机に置くと、五藤裁判長に話しかける。
「五藤さん、今回は本当に助かった。なんてお礼を言えば良いのか……」
暁翠は、五藤裁判長へお礼の言葉を述べた。
「いえいえ、幼い頃に助けていただいた御恩、この程度では返しきれませんよ。」
五藤裁判長は、謙遜しながら暁翠に言葉を返した。
「あの……元帥、五藤裁判長とは一体どのような関係で? 失礼ですが、裁判所で見た五藤裁判長とは様子が異なると言うか……その…………」
水月は、緊張が張り詰めた声で暁翠に質問する。それを見た五藤裁判長が笑って答える。
「水月殿、そこまで緊張なさる事はありませぬぞ。ただ、私が幼い頃に、暁翠殿が助けていただいただけですよ。」
五藤裁判長が言い終わると、暁翠が水月の質問に答える。
「五藤さんは古い知り合いでな、今回の裁判で隠蔽されていた法律を探ってもらったんだ。」
「そうですか……本当に元帥にはいつも脅かされます…………」
水月は、驚きつつも、冷静さを保とうとしていた。 それを見ていた、五藤裁判長が水月に話しかける。
「水月殿、人間とは、感情があるからこそ美しい所があります。人を認め合い、共感できたりします。ですが、人間とは、感情があるからこそ醜い。事実、貴女達への差別をしてしまっている。人間とは、善にも悪にもなれることを覚えていてください。」
五藤裁判長は、人間の美点と汚点を、水月に教えた。それを聞いた水月は、少し微笑みながら、五藤裁判長へ言葉を返す。
「知っていますよ……それは嫌というほどこの身に刻みつけられましたから。」
水月の言葉は、何処か寂しそうだったが、同時に何かを感じていた。
「五藤さん、ありがとう。」
暁翠が、五藤裁判長に、水月に人間の美点と汚点を教えてくれたことについてお礼を述べる。
「いやいや、良いんですよ。それに、二人はよくお似合いですから。」
五藤裁判長が、突然話の方向を逸らした。水月は、ほんの少し頬を赤く染めていた。
「そう言ってもらえると嬉しいよ。」
暁翠が、五藤裁判長へ返した言葉で、水月の頬は赤くなっていた。
しばらくして、二人は五藤裁判長の自宅を後にした。鎮守府への帰り道、暁翠は水月に話しかける。
「水月、仮に俺がお前に告白したら、その時はどう思う。」
暁翠は、水月に対してそう問を投げた。
「そうですね……正直な所、私にはまだ、恋愛感情があまりわからないんですよね。なので、少し分かりません。」
「そうか……教えてくれてありがとな。」
暁翠は、水月にお礼を述べると、水月の頭を軽くなでた。
ここで始めて登場した、「五藤一」過去に暁翠に助けられた事があり、暁翠の保護の下、裁判長の資格を取るまでに至りました。
そして、少し匂わせた甘い空気……これの行き先は一体………………




