少女なる兵器 第21話「不当な扱い」
冥月を庇い、トラックに跳ねられた水月。彼女を待ち受けていたのは、他でもない人間達による理不尽だった……………
水月は、鎮守府の療養室で目を覚ました。しかし、体が痛み、中々起き上がることができなかった。頭には包帯が巻かれ、ガンガンと頭が痛む。その時、暁翠が療養室に入ってきた。暁翠は水月を見るなり、いきなり抱きしめる。
「水月……生きていて良かった…………」
暁翠の声は、酷く震えていた。既に、水月が跳ねられてから三次面接課が警戒しており、暁翠は目を覚まさなかった水月を心配していた。
「元帥……私はそう簡単に死にはしませんよ…………それより……冥月は…………」
水月は、自分のことよりもまず、冥月の事を心配した。それと同時に、暁翠の表情が変わる。
「冥月は、無事だ。だが……少し厄介なことになった。お前を跳ねた、トラックの運転手が裁判を起こした。弁護には俺が着くが、正直厳しいかもしれない。」
そう、あの後、水月を跳ねたトラックの運転手はトラックの修理費を求めて裁判を起こした。
「……………分かりました……元帥、私達で無罪を勝ち取りましょう。」
「ハハ……お前に励まされてしまったな…………」
暁翠はそう言うと、水月の頭を痛まないよう優しくなでた。
裁判当日、トラックの損害賠償を巡る裁判が開廷された。検察側は、これを「対龍兵7条 龍族とその兵器は人間に危害を加えてはならない」に違反したとして、水月の死刑、及び暁翠に損害賠償2000万を求めた。どう見ても異常であるが、国際的に決められてしまったものであったため、誰も異論を出す者はいなかった。一方暁翠は、証人として、偶々その場に居合わせた龍桜型航空戦艦1番艦 龍桜、2番艦 龍姚を証人として召喚した。
「私は、あの時男が冥月を押していたのを見ました。人その男は混みに紛れるように逃げていってしまった為、詳細までは分かりませんが……ですが、この事故は明らかにその男が仕向けたことなのは間違いありません。」
龍桜の証言が終わると、龍姚の証言が始まった。
「私の位置的には、男かどうかまでは分かりませんでした。ですが、水月が誰かに押されたのは事実です。」
二人の証言が終わると、暁翠は、検察側の証拠不十分と合わせて水月の無罪を主張した。
数日後、判決の時がやってきた。検察側の証拠不十分もあり、水月の無罪が予測された。
「判決を言い渡す……」
誰もが、水月の無罪を予想した。しかし、判決はあり得ないものとなった。
「検察側の証拠は、根拠のないもので到底罪に問える理由でさないが、兵器側は間接的に我々に損害を与えたとして、水月に懲役一週間を言い渡す。」
懲役一週間……それは定められた法律上あり得ないもので、あまりにも理不尽であった。
その後、暁翠は判決があり得ないとして再控訴を起こそうとしたが、申請の翌日に棄却され、判決は決定されてしまった。
水月は、近場の刑務所へ一週間入ることとなった。
「元帥……夜桜姉さんを、冥月をよろしくお願いします…………」
それだけ言い残すと、水月は刑務所へ入って行った。それから説明すらされずに、囚人服に着替えさせられると、刑務作業へ移された。刑務作業中、隣で作業をしていた女性囚人が、水月を度々睨みつけていた。水月は、気にすることなく作業をしていた。しかし、少ししてから事件は起こった。隣の女性囚人が、トンカチで水月の脇腹を勢いよく叩いた。水月の表情が苦痛に歪む。しかし、それだけでは無かった。
「願います、隣の兵器にトンカチで脇腹を叩かれました。」
女性囚人が嘘をついたのだ。それと同時に、見張りの看守が駆け寄っていると、水月の腹に一発殴りを入れた。
「何をしている! 我々人間にどれだけ迷惑をかければ気が済むのだ、害悪兵器が! さっさと作業に戻れ!」
そう言い残すと、看守は元の位置へ戻って行った。その後、刑務作業が終わると食事の時間になった。しかし、水月だけは房の中へと戻された。看守曰く、「兵器に食わせる飯は無い」と言うことらしい。
一方その頃、鎮守府は荒れていた。水月の裁判結界があまりにも不当であったためだ。特に、夜桜と冥月の怒りは尋常ではなかった。それこそ、周りの空気が歪んで見えるほどだった。執務室で仕事をしている暁翠も、怒りのあまり執務に支障をきたしていた。
そんな時だった。執務室へ、海龍が入って来た。
「何だ海龍……すまないが今は外してくれないか…………」
暁翠が、海龍を外へ出そうとする。しかし、海龍は暁翠の言葉を無視する。
「待ちましょう……水月が出てくるまで…………」
「あぁ……そうだな…………」
暁翠は、海龍の言葉ですこし落ち着いたのだった。
それから一週間が過ぎ、夜中の街が寝静まった時間に水月は釈放される事になった。水月が、刑務所の門から出されると、そこには夜桜が立っていた。
「水月、迎えに来たわよ。さぁ、帰りましょう。」
「夜桜姉さん…………ありがとう…………」
夜桜と水月は、静まり返った夜道を歩き、鎮守府へ戻って行った。
鎮守府に着くと、門の前では暁翠が立っていた。
「元帥……只今戻りまし…………」
水月が、暁翠に声をかけようとしたその時、暁翠ら水月を優しく抱きしめた。
「水月……すまなかった……本当にすまなかった……俺が守ってやれなかったばっかりに……こんな…………」
暁翠は、水月の事を守りきれなかったことを悔やんでいた。その事を見抜いた水月は、暁翠の背中にそっとてを添える。
「元帥……私は大丈夫ですよ…………」
「しばらくは休め……仕事も全てこちらが引き受ける…………」
暁翠は、それだけ伝えると、水月を自室へ戻した。
自室へ戻ると、何故か夜桜も水月の自室へ入ってきた。
「夜桜姉さん……どうした………………」
「今すぐ背中を見せなさい。」
水月が言い終わらない内に、夜桜は強い言葉で、水月に背中を見せるように命令する。水月が次の言葉を発する前に、夜桜は言葉を発する。
「貴女が元帥に抱きしめられた時、少し痛がっているように見えた。刑務所で何かあったんでしょう。」
「………………ハハ……夜桜姉さんには隠し事は通用しませんね…………」
そう言って、水月は上着を脱いだ。夜桜は、水月の背中を見て絶句した。背中には、無数の痣ができており、何か鋭利なもので刺されたような跡もあった。実は、水月は、刑務所にいる間、他の囚人から、見えない所で暴力を振るわれ、看守からも度々警棒で叩かれていた。水月の痣を見た夜桜は、そっと水月を抱きしめた。
「ごめんなさい…………貴女を守ってあげられなくて………………」
夜桜は、涙を流しながら水月に謝った。
「夜桜姉さんのせいじゃない……それに、私は大丈…………」
「大丈夫な訳ない!!」
夜桜が、水月の言葉を遮る。
「貴女は、いつも無理をし過ぎなのよ!! 自分を犠牲にして、私達に辛さを隠してる…………そんな事しなくて良いのよ………貴女は……もう、辛い思いなんてしなくて良いよの…………」
夜桜の言葉を聞いていた水月は、自然と目から涙が流れていた。
「水月、氷龍に治してもらいましょう…………彼女の治療技術なら、きっと早く治るはず…………」
そう言って、夜桜が水月と共に、氷龍の部屋へと向かおうとしたその時、暁翠が水月の自室へと入って来た。暁翠は入ってくるなり、衝撃な事を言い出す。
「水月、少し……国には痛い目を見てもらわないか?」
「はい?」
今回は、かなり酷なシーンを連想される文書が多かったですね。皆さん、私が「少女なる兵器」に込めている何かが、少しづつ見えてきたのではないでしょうか?




