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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
36/109

少女なる兵器 第18話「支えてきた者の崩壊」

アメリカから依頼を受けた寄月、輸月、震月、響月、作戦開始前に輸月が感じていた不安、鎮守府で暁翠が心配していたことが的中してしまう……………

※今回は出血に加え、特攻を含む文書が書かれます。ご注意下さい。

 「………………暑い……」

 兵舎爆破事件から数日後。まだ夏の残暑が残る8月の終わり頃、水月は執務室で暁翠の書類仕事を手伝っていた。

 「まぁ、そう言うな水月。もうそろそろ今年が終わる。直に冬が来る。」

 暁翠は水月に優しく言葉をかけるが、その表情はどことなく曇っていた。

 「…………アメリカからの依頼の件ですか? 彼女達なら大丈夫でしょう。」

 暁翠は黙り込んでいる。図星だったようだ。しばらくして暁翠はペンを止め、深くため息をついた。

 「正直……心配なんだ……もし……あいつらに何かあったら…………」

 震えている暁翠の手を、水月はそっと握る。

 「元帥……大丈夫ですよきっと。彼女達は大龍帝国を支え続けた歴戦の猛者……今回もきっと無事に帰ってきてくれると思います。」

 「あぁ……そうだよな……大丈夫な筈だ……きっと…………」

 水月の言葉に暁翠は安心したようだったが、暁翠の表情は曇ったままだった。

 その頃、アメリカのとある森林付近ではアメリカに渡った四両の駆逐戦車が依頼の説明を受けていた。

 「今回、君たちに来てもらったのはダイナマイトの回収だ。ダイナマイトの輸送中に敵からの強襲を受けた。その時はダイナマイトを手放す他なかった。場所は地図に記載してあるからその地点に向かってくれ…………」

 説明が終わると四人は出撃準備を始める。

 「響月、貴女はここで待機していて頂戴。」

 突如、震月が響月に声をかける。

 「…………わかったわ。だけど気をつけてね」

 「えぇ、私だってこんな所で撃破されるつもりはない。」

 寄月は響月の忠告に返事を返した。それと同時に輸月が話し出す。

 「今回の依頼……無事で済むかしら…………」

 「何言ってんだ、成功させて元帥の所に帰るんだろ?」

 震月は輸月の気合を入れようとする。しかし、輸月ほ表情は曇ったままだった。

 しばらくして出撃の時間が訪れた。時刻が来たのを確認すると、寄月、輸月、震月は森林の前に歩きだす。森林の前で足を止めると、寄月が作戦開始の合図を出す。

 「現在時刻10時をもってダイナマイト回収作戦を開始する。道中は、木々が生い茂っているため、待ち伏せや不意打ちに注意せよ。」

 その合図と共に、三人は森林へと足を踏み入れた。森林内はとても静かで、生物の気配が感じられなかった。

 「不気味……ね……誘導されてるような気がする…………」

 震月が呟いたその言葉を堺に、三人は言葉を口にしなくなった。

 それから、一時間程が経過した。三人は森を抜け、少し開けた場所に出た。周辺には急斜面があり、開けた場所の中心付近には、回収目的のダイナマイトが散らばっていた。

 「あれね、直ぐに回収して撤退しましょう。」

 「えぇ、その方が良いわね……何か嫌な予感がする…………」

 三人は、素早くダイナマイトを回収していく。ダイナマイトの大半は輸月が持つ形で回収が完了した。

 「すまないな、輸月。お前にほとんどを持たせてしまった。」

 「いいのよ。私は、輸送駆逐戦車の一面も持っているから、ある程度の物資輸送が…………」

 その時だった、後ろで爆発が起きる。三人は直ぐに後ろを向く。そこには、多数の敵戦車が居た。しかし、三人はその中にある一際強い気配に警戒を表す。

 「…………輸月、震月、分かってるわよね………………」

 寄月が輸月と震月に言葉を放つ。

 「ええ、分かってるわよ…………」

 「ここは、その選択肢以外無いわよね…………」

 次の瞬間、三人は急斜面に向って走り出した。三人は急斜面による早期離脱を考えていたのだ。しかし、敵も素早さが早く、距離が中々離せなかった。敵は無造作に砲弾を放ち、逃走を遅らせようとしていた。

 それから30分程だった頃だっただろうか、敵との距離は少しずつ離れ、逃走が上手く行きかけていた時だった。突如として大規模な爆発が起きた。近くにいた輸月は爆風でバランスを崩す。それだけなら良かった。敵が放った砲弾が、バランスを崩した輸月の右太腿を貫通した。

 「ッ………………!!」

 「輸月!!」

 寄月は輸月の状況に素早く気づき、直ぐ様煙幕を展開した。煙幕で敵の斜線が遮断されている内に、寄月は輸月に肩を貸す。寄月は輸月を支え、近くの太い木に姿を隠す。直ぐに震月も合流した。

 「輸月、大丈夫か! 今手当を……………」

 しかし、輸月は寄月が医療キットを出すのをそっと止める。

 「寄月、震月、私を置いて逃げなさい…………」

 輸月は衝撃的な事を言い出した。勿論、寄月はそれを止めようとする。

 「バカ言わないで、そんな事できる訳ないでしょう!!」

 寄月の言葉に、輸月は何も答えず自分の太腿を見せる。

 「…………!!」

 寄月は、輸月の太腿を見て絶句した。太腿に取り付けられていた履帯の艤装が破壊され、輸月の太腿を大きく損傷させていた。

 「この足じゃ、どうせ逃げ切れない…………だから逃げて…………私は…………上手く隠れ潜むから…………」

 「本当に生きて帰ってこられるの?」

 突然、震月が輸月に問を投げる。

 「……………えぇ、必ず。」

 輸月は、少し沈黙した後に答えた。それを聞いた震月は寄月の肩を掴み、話しかける。

 「寄月、私達は撤退しよう…………」

 その言葉を聞いた寄月は、震月に反論する。

 「何を言ってるの、そんな事できる訳ないじゃい!!」

 その言葉に、震月は何も言わず首を横に振る。寄月は、震月の目を見て決断する。

 「輸月、必ず助けに来るから生きていてちょうだい…………」

 「分かったわ、必ず生きて会いましょう…………」

 輸月は少し笑いながら言葉を返した。寄月と震月は、輸月に敬礼をすると、撤退していった。

 寄月と震月が見えなくなった頃だった。輸月は敵が近づいてく気配を感じていた。しかも、先頭には、一際強い気配があった。

 「さて、どうしましょう……隠れる場所は無い……」

 その時、輸月の目に自分が持ち運んでいたダイナマイトが目に留まる。それを見た輸月は、腹をくくった。

 「寄月、震月、響月……ごめんなさいね…………」

 輸月はそう呟くと、ダイナマイトを体に巻き始めた。輸月は、ダイナマイトを体に巻き終わると、息を潜めて木の陰に身を潜めた。

 数分後、一際強い気配が輸月が隠れていた木の横に来た時だった。輸月は木の陰から飛び出し、その一際強い気配に抱きついた。それと同時だった。輸月は自分の体に巻き着けていたダイナマイトを起爆させた。爆発は凄まじく、辺りの木を数本吹き飛ばした。

 数秒後、煙が晴れて、辺りが見えるようになった。輸月は、仰向けに倒れており、激しく吐血していた。しかし、自らが兵器の面を持ち合わせていたことにより、奇跡的に生き残っていた。

 「ハァ……ハァ……少しは……効いて……くれると……嬉しいけど…………!!」

 輸月は目を疑った。一際強い気配の姿。そして、その存在が無傷でいた事に。

 「ハハハ……無傷かぁ……」

 輸月が息絶え絶えの諦めた声を出すと、その存在が輸月に話しかけてきた。

 「いや、無傷ではないぞ。私の副砲を一門破壊するとは中々だ。だが、そんなことでは私に傷はつけられない。」

 そう言いながら、その存在は輸月に主砲を向ける。

 「せめて痛みが無いよう一撃で葬ってやろう。」

 主砲を向けられた輸月が、その存在に話しかける。

 「貴女……いつから……そっち側に……」

 「いや、私は元々こちら側だ。あいつとはまだ違う。さぁ、もう終わりにしよう……」

 そう答えると、その存在は主砲を強く握りしめた。

 その頃、寄月と震月は響月が待つ出発地点に着いていた。寄月が、直ぐに響月に事を説明する。

 「ダイナマイトは回収した、だけど輸月が…………」

 それを聞いた響月は慌てた表情を見せる。

 「早く行かないと……………………」

 その時だった、突然大規模な爆発が山中で起こった。爆煙は空高く舞い上り、出発地点からも見えた。

 「輸月…………」

 寄月と震月はダイナマイトをその場に置いて走り出した。響月もそれに着いていく。

 しばらく山中を走り続けると、木々が吹き飛ばされているのが見えてきた。そこで、三人は見つけてしまう…………血塗れで倒れている輸月を…………

 寄月は、輸月にそっと近寄る。命の灯火が消えているのは明確だった。

 「輸月……貴女……噓だ……噓だ!!」

 寄月は、泣きながら輸月を抱きかかえる。それを見ていた震月と響月も涙を流した。

 「輸月の……馬鹿………………」

 8月29日 14時31分 大龍帝国を長年支え続けた輸月は、アメリカの山中で命を落とした……………………

 皆様、月1投稿が守れず申し訳御座いませんでした。

9月に入ってからリアルが忙しくなり、更には新型ご当地ウイルスに感染してしまったせいで予定が崩れてしまったため、続きが中々書けない事態に陥ってしまいました。今後は月1投稿が守るように努力いたします。大変申し訳御座いませんでした。

 さぁ、輸月が謎の存在に撃破されてしまいました。物語の初期から度々登場していた輸月ですが、この娘は大龍帝国で寄月と同時期に生産が開始されています。寄月にしたらライバルであり、心友でした。そんな輸月を撃破した謎の存在、一体誰なのでしょうか?

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