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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
31/109

少女なる兵器 第13話「絶対的本心」

 あれから数日が経過した。相変わらず水月は大量の器具を取り付けられたまま、ベットの上で寝込んでいた。暁翠から痛み止めは貰っているものの、寝ている時に効果が切れることが多く、毎度激痛に襲われることが多かった。その為、基本的に毎日が寝不足続きだった。


 そして、また数日が経過した。この間に霊花が治癒術をかけてくれた為、水月の傷はほぼ塞がり、酸素マスクも外された。多少動きが自由になったが、絶対安静の命令は継続のままだ。

 昼頃、水月は隣のベットを見た。隣では氷龍が疲れからか眠っていた。夜中も水月の事を見守っている事もあり、睡眠不足と疲労が溜まっていたのだろう。

 すると、そっと療養室の扉が開かれた。誰かと思い見てみると、扉から輸月が顔を覗かせていた。輸月は水月を見つけると、寝ている氷龍を起こさないように水月に近づくと、小声で話しかけた。


 「お体は大丈夫ですか? 重症だとお聞きしましたが?」

 「霊花が治癒術をかけてくれたから大丈夫よ。今後も3日に1回、体に影響が出ない頻度で行ってくれるそうよ」

 「そうですか……それは良かったですね」


 輸月は微笑ましそうにした。

 すると、扉が少し音を立てた。見てみると、寄月、震月、響月の3人が顔を覗かせていた。全員「しまった……」と、今にも言いそうな顔になっていた。


 「入るなら入ってきなさい。そうされると敵かどうか分からないから気が気じゃない」


 突如として、寝ていたはずの氷龍が口を開いた。氷龍曰く、寝ている間も電探の波長が脳に伝わってくるようにしているらしい。疲れを取る効率は落ちてしまっているが、水月の見守り役を任されている為、結果的に睡眠中も電探を使っているそうだ。

 氷龍は話し終えると、そのまま眠りについた。

 そして、3人が水月の近くへやって来た。3人は近くにあった椅子に座ると、最初に寄月が水月に話しかけた。


 「水月さん。水月さんって、明夜月夜総合重工業の出ですよね?」

 「ええ、そうよ……それがどうかしたの?」

 「いえ……今になって製造元の記憶が薄れてきまして……思い出すのに精一杯なんです」

 「……貴女は長い期間、最期の時まで現役だったものね。記憶が薄れてしまうのも無理はないわ」


 その言葉を聞いた寄月は、少しだけ安堵の表情を浮かべた。だが、物忘れへの嫌悪はまだ取り除けていないようだ。

 すると、次は震月が話しかけてきた。


 「そういえばですが、水月さんの使う主砲の弾って、通常の徹甲弾とは違うんですか?」

 「どうしてそう思ったの?」

 「いや、持ったときの感覚がどうも違和感があって……」

 「一応、破砕砲よ。貴女は臼砲よね? その違いだと思うわ」


 その言葉を聞いた震月は、納得したように手を叩いた。旧大龍帝国陸軍の破砕砲と臼砲の砲弾は、基本的には統一された砲弾を使っていた。だが、明夜月夜総合重工業の製作した90cm級の砲弾はこれまでとは違った構造をしていた。それが原因となり、他の90cm級の巨砲を持つ兵器との共通化が図れなかった。

 すると、響月が聞いてきた。


 「ですが、水月さんの主砲は90cm列車砲 天狼の主砲を改造して作られたものでは?」

 「間違ってはないけど、半分不正解ね。私達、戦艦型超戦車の主砲は当初、天狼の主砲が採用されたものの、試作砲でそれが性能に満たないことから、RL99-4A 90cm級破砕砲に変更されているわ」

 「試作砲があったんですか?」

 「元帥がくれた資料にね……だけど、資料が僅か数文しかないから、本当に実在したのか怪しいのよね。製造元、明確な口径、試験結果、その全てが不明よ。基準に満たなかったとしか記されていない」


 水月は苦い表情をしながら言った。何か引っかかる部分があるのだが、確証が得られない為どうしようもなかった。

 響月は黙って頷くと、そのまま口を閉じた。


 その次の瞬間、鎮守府のスピーカーが警報音を鳴り響かせた。非常ベルも鳴り響き、鎮守府に居た全員が、反射的に警戒態勢を取った。

 そして、緊急事態の放送が流れたスピーカーから流れてきた。


 『緊急事態発生!! 緊急事態発生!! 鎮守府に敵大艦隊が接近中!! この放送後指名された艦隊は、各装備がある部屋に移動せよ!! 繰り返す…………』


 放送はもう1度繰り返された。全員が固唾を飲み、指名を待った。

 そして放送が終わり、艦隊の指名が入った。


 『緊急放送の通り、鎮守府に敵大艦隊が接近している。幣龍を旗艦とした第8水雷戦隊、龍彩を旗艦とした機密機動部隊、水月に変わり、夜桜を旗艦とした水上戦車遊撃部隊の3艦隊は、即座にS-24エリアで準備を整え、出撃せよ』


 放送はそこで終わった。廊下からはドタバタと、大人数の足音が聞こえてきた。指名された艦隊所属の者が、S-24エリアへ向かっているのだろう。

 水月は体を起こすと、そのま立ち上がろうとした。水月の近くに居た4人は、水月を止めようとした。


 「何してるんですか!? 今、行ったところで何もできません!!」

 「早く寝てください!! 傷口が開いたら大変です!!」

 「大丈夫……これくらい……っ!!」


 水月は無理をして立ち上がるも、体に激痛が走った。痛み止めを飲んでいるとは言え、袈裟に斬られた傷は完全に塞がってはいない。無理をすれば再び傷が開く事だってあり得た。

 すると、まだ寝ているはずの氷龍が口を開いた。


 「無駄よ。水月さんは1度決めたことは決して曲げない……点滴スタンドごと行くんでしょう?」

 「勿論よ…………」

 「なら、行ってきなさい。その代わり、死んでも文句は言わないでね」

 「死んだら文句言えないじゃない……ありがとう…………」


 水月はそう言うと、点滴のスタンドを支えにしながら部屋を出た。4人は唖然としながら氷龍を見るも、氷龍はまたもや眠りについていた。


 水月は点滴スタンドを支えにし、そのまま廊下を歩いていた。目的地はS-24エリア。夜桜達を説得するつもりだった。

 すると、目の前の廊下の角を夜桜率いる水上戦車遊撃部隊が横切った。しかし、夜桜は一瞬で水月の存在に気づき、冥月達を先に行かせ水月の方へ走ってきた。


 「水月。どうしてここにいるの?」

 「夜桜姉さん……私を……戦場に連れて行ってください…………!!」


 水月の言葉に、夜桜は一瞬戸惑ったが、すぐに答えを返した。


 「それは駄目よ。もし戦える状態にあったとしても、今は謹慎処分が出てる。更に重い罰則が与えられる可能性もあるし、今の傷では無駄死にするわよ」

 「でも……私が戦場に出れば……確実に敵の脅威になる……戦えなくても……威圧はできる…………!!」

 「夜桜の言う通りだ。無駄死にするつもりか?」


 突如として、背後から声が聞こえた。振り返ると、そこには暁翠の姿があった。

 水月は何も返せなかった。だが、暁翠は言葉を続けた。


 「氷龍にはあえて何も言わなかったが、まさか本当に抜け出すとは思ってなかったな……自分の状態を見極めて安静にしていると思ったんだがな…………」


 暁翠はそう言いながら、水月にゆっくりと近づいてきた。水月は謎の威圧感に押され、身動きが取れなくなってしまった。

 そうしている間に、目の前に暁翠がやって来た。そして、水月を抱えあげ、妖術を使い点滴スタンドを宙に浮かせた。

 この行動に理解が追い付かない水月は、暁翠の腕の中で暴れようとした。だが、ここで傷口が開いてしまった。

 それを見た暁翠は、夜桜に行くよう命じ、そのまま治療室へ駆け込んだ。


 治療室に入ると、暁翠は水月をベットの上に寝かせ、治療術をかけた。それにより、水月の傷口は塞がった。

 だが、暁翠はこれだけで終わらなかった。霧の門を出現させると、水月を抱えて中に入った。


 抜けた先は、密閉された部屋の中だった。扉は厳重に閉ざされ、辺りには生活に最低限必要な設備が整っているだけののうであった。

 水月は暁翠にここのことを聞こうとするも、そのままベットに寝かされ妖術により拘束されてしまった。


 「ここは地下にある精神を鍛えるための部屋だが、お前が療養室にいると抜け出しかねないことが分かった。しばらくの間はここで過ごしてもらおうか」

 「は、はい……すいませんでした…………」


 水月は自分の身勝手さを反省した。

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