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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
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少女なる兵器 第12話「生還と再開」

 水月は、暗い闇の空間を彷徨っていた。何があったのか、ここがどこなのかすら分からない。覚えているのは、自分が核爆弾で海底処分された時の記憶だ。

 途端、辺りに水が満ちた。水は自分の腰あたりの高さまで来ると、それ以上水位が上昇することはなかった。だが、その水には違和感があるような気がした。


 「お前は何の為に生きている?」


 突如として、どこからか声が聞こえてきた。水月は辺りを見回すも、誰も見つけることはできなかった。


 「お前は何の為に戦っている?」


 またもや声が聞こえた。辺りを再び確認するも、やはり誰も居ない。


 「お前の背負う正義とは何だ?」


 次の瞬間、暗闇の中に白い光が現れた。白い光は広がったかと思うと、突如として辺りを包みこんだ。

 すると、鎮守府が目の前に現れた。ただ、全てが灰色に染まっていた。水月は導かれるように、鎮守府の中に入った。


 鎮守府に入ってすぐ、自室へと。自室の机の上には、1冊の本が開かれていた。覗き込んでみると、その本には文字が現れた。


 「お前は自分自身を否定している」


 声が聞こえた。本は文字を変えながら、声はその文字を読み上げる。そして、最終的に本は黒く染まり始めた。次の瞬間、背後で物音がした。

 水月は振り返ろうとするも、その前に後頭部に何かを突きつけられた。体に冷や汗が伝わる感覚が走った。この感覚からして、銃火器の部類だろう。水月は死を覚悟し、目を閉じた。

 声が聞こえた。


 「お前はまだ足掻いた方だ……だが、それは私も同じだ」


 そして、鉛玉が水月の脳に打ち込まれた。


 次に目を開くと、水月は療養室のベットの上だった。酸素マスクが装着され、点滴が打たれていた。

 起き上がろうとするも、体の痛みにより起き上がることができなかった。よく見てみると、切断されたはずの腕がくっついていた。感覚はないが、接合された感覚が腕にはあった。


 「水月!!」


 右横から声が聞こえた。見てみると、夜桜が半泣き状態で水月を見ていた。


 「夜桜……姉さん…………」

 「無理はしないで。生きるか死ぬかだったのよ」


 水月はゆっくり頷くと、天井を見た。あれは悪夢だったのか、それとも未来を表しているのか。それだけが気がかりだった。だが、はっきりとしていたことが1つあった。あの声は、自分の声ととても似ていたことだ。


 数分もすると、療養室は海軍の仲間達で満員状態になりかけていた。見舞いに来た者達の中には、知らない顔が数名混ざっていた。暁翠から戦艦と航空母艦は再生が終わっていないとの話を聞いていた為、おそらく彼女達は戦艦か航空母艦だろう。

 そんな中、水月の容態を見てくれていたいた氷龍は言った。


 「完全に傷は塞がってない……輸血で命を一時的に繋いでいる感じね。しばらくは動いちゃ駄目」


 水月の傷は完全に塞がっておらず、今でも血が流れ続けているそうだ。少しでも医療的判断を間違えば、失血死するかもしれないとのことだ。

 夜桜と冥月は、水月を心配する目で見ていた。


 「大丈夫よ……私は死なない……全てが終わる……その時までは…………」


 水月の言葉に、夜桜は水月の頭を軽く撫でながら言った。


 「貴女は本当に強いのね……だけど、時には誰かを頼りなさい。手遅れになる前に…………」


 そう言う夜桜の目からは、心配する気持ちが取れていなかった。

 すると、部屋の中に誰かが入ってきた。全員が後ろを振り返る。扉の前に立っていたのは、白銀髪が特徴的な女性だった。


 「どうしたの、龍城? 確か提督に呼び出しを受けていたはずじゃ?」


 水月の前にいた、蒼髪の髪の女性が白銀髪の女性を龍城と呼んだ。龍城と呼ばれた白銀髪の女性は、蒼髪の女性を見て言った。


 「もう終わったわ。提督も大袈裟ね……単艦突撃した事の何が悪いと言うのかしら」

 「それは怒られて当然よ。私の目の前にその末路を負った者がいるわよ」


 そう言い、蒼髪の女性は水月を見た。龍城は水月を見つめ、少しの沈黙を見せた。そして言った。


 「大丈夫よ。私はそうはならない」


 そう言うと、龍城は部屋から出て行った。蒼髪の女性は、頭を掻きながら水月に謝罪した。


 「同僚が失礼な態度をしたわ……ごめんなさい」

 「大丈夫よ……それより……貴女は……龍造……よね?」

 「そうよ。私こそが旧大龍帝国海軍最強の戦艦……龍造型の1番艦 龍造よ」


 水月の予想は的中した。彼女は龍造だった。旧大龍帝国海軍最強と謳われた、世界基準から見ても史上最大にして最強の戦艦である。

 水月は天井を見ると、深く深呼吸をした。そして辺りを取り囲む者達をもう1度見回した。やはり知らない顔が数人混ざっており、再び仲間に会えたことを安堵し、目を閉じた。


 水月が再び目を覚ますと、時刻は夜になっていた。月替上り、月光が窓から入ってきた。


 「やっと起きたか」


 隣から聞き覚えのある声が聞こえた。水月は隣を向き、声の主の名前を呼んだ。


 「元帥…………」


 そこには、暁翠が椅子に座っていた。暁翠は冷徹な目で水月を見ていた。水月はそんな事に気が付かず、暁翠に話しかけた。


 「元帥……作戦は成功しましたか?」

 「そんな事はどうでも良い……そんなことよりも、どうして単独であの場所に残った? 答えろ」


 暁翠の言葉に、水月は背筋が凍るような感覚を覚えた。声色からして、暁翠が怒りの感情を持っているのは確かだった。


 「自分が……自分が敵を引き付ければ……鎮守府に攻撃はいかないと……思い……ました…………」


 水月は怯えながら答えた。

 水月の答えを聞いた暁翠が、水月に手を伸ばしてくる。水月は恐怖で目を瞑った。

 だが、暁翠は水月の頭を撫でただけだった。水月が目を開けると、暁翠の目からは涙が流れているのが見えた。


 「過去に言ったはずだ……もう誰にも死んでほしくないと……あの状況なら、冥月達と逃げて援軍を要請することだってできた。もう少し自分を大切にしろ…………」

 「申し訳……ございません…………」


 そこからは、暁翠にいろいろと聞かされた。

 作戦自体には成功するも、戦術的に敗北したこと。

 一部を除く旧大龍帝国で現役だった兵器の再生が完了し、戦力が大幅に増強されたこと。

 そして、敵の戦力が、こちらの想定を上回る勢いで増していること。


 「最後に、お前には処分を下さなければならない。無線が使えなかったとは言え、自分の力量を見分けられなかったのは、お前の落ち度だ」


 水月は軽い処分では済まないと思った。自分の状態を分かってはいたが、冥月と日月を守りたいという一心で独断の行動を取った。


 「しばらくの間、お前を鎮守府に隔離する。その間に怪我を治せ」


 暁翠の言葉に、水月は目を丸くした。こんな軽い処分で済んで良いはずがないのだ。命令を無視してさた者にはそれ相応の罰が待っているのか殆どで、水月は兵器時代にそういう者を多く見てきた。


 「元帥……どうしてですか?」

 「どうしても何も、お前の行動は一定の酌量の余地がある。勘違いするなよ」


 水月の問に答えた暁翠は、そのまま部屋を後にした。

 水月には何が起こったのか理解できていなかったが、1つだけ分かったことがあった。自分は恵まれた環境の中に居ると。

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