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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
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少女なる兵器 第11話「執念と怒り」

 紀伊水道では、水月と敵大編隊による戦いが行われていた。水月は対空兵装で敵機を攻撃し、攻撃の速度を少しでも緩めようとしていた。

 だが、多勢に無勢とあるように、水月1人では全ての攻撃は防ぎようがなかった。爆弾や魚雷が次々と命中し、身体と艤装に着実なダメージを与えていた。

 水月の身体はボロボロで、胸から腹に渡って袈裟に斬られ、片腕を切り飛ばされた。艤装は電気系統の異常により、高角砲や機関砲の自動追尾ができなくなり、浸水により速度は6ノットまで低下した。

 それでも、水月は戦いを辞めなかった。


 「これ以上失ってたまるものか……何がなんでも守り切る…………」


 そう言う水月だが、実際は焦点がブレる程血を流しすぎていた。意識は敵機に向いており、頭の中には回避を行うことすら無かった。そこへ爆弾や魚雷の集中攻撃がくわえられ、状態は更に悪化の一途を辿った。

 傷口からは血がダラダラと流れ、艤装は炎を上げ燃えている。本来ならば戦闘を行える状態とは程遠く、無理矢理にでも撤退させるべき傷を負ってもなお、水月は敵機に主砲を向ける。

 しかし、遂に水月は主砲を手放してしまった。そこからは流れるように全身から力が抜け、水月な立つことすらできなくなってしまった。


 ー力が……入らない……それに……視界が霞む…………―


 水月の意識は、少しづつ混濁を始めていた。目に見える歪み、視野が少しづつ狭くなる。

 そんな中、水月は空を見上げた。空には爆撃機が飛び交い、耳障りなほどのレシプロエンジンの音が鳴り響く。

 水月は混濁を始めた意識の中で、過去のことを思い出していた。


 鎮守府に着任した時、鎮守府の仲間は明るく水月を出迎えてくれた。暁翠は特にそうだった。望みがあればほぼ叶えてくれ、誰に対しても平等に愛情を注いでくれていた。

 実戦を積み重ね、怪我をした時、医療員を任されていた氷龍には、何度も怪我の治療をしてもらった。しかも、対潜水艦に対する訓練の標的艦役にもなってくれた。氷龍が居なければ、負っていた傷はより大きなものだっただろう。

 風龍には近接戦闘の対処法を教えてもらった。最悪の場合、自分の腕を犠牲にしてでも命を守れと教わった。冥月を守る時、自身の左腕を犠牲にしたのもこの教えがあったからだ。この教えが無かったら、冥月は今頃死んでいたかもしれない。

 斬龍姉妹には忍耐力を鍛えてもらった。最初は素振りを100回もすると息の根を上げていた水月だったが、今では10000回やっても息の根1つ上げない程に鍛えられた。

 亰龍には艦艇の弱点を教わった。兵器時代から幾度の戦いを切り抜いてきた彼女だからこそ、敵艦の形状や装甲配置、武装の種類まで、全てを把握していた。

 他にもいろんな仲間から、別のことを教わった。海で戦う水月だからこそ、陸の知識は少ないものの、今の自分があったのは先達の知識があったからだ。兵器時代、待機命令が続いた箱入りの自分は何も知らなかったのだから。


 そんな時、敵爆撃機が急降下爆撃を行おうとしているのが水月の視界に映った。水月は全てを受け入れ、目を瞑って深呼吸をした。

 再び目を開くと、そこには何もなかった。見えていたのは、雲一つない青空。


 「元帥……冥月……皆……ごめんなさい…………」


 その刹那、突如として急降下爆撃を行おうとした爆撃機が爆散した。爆発音で水月の意識ははっきりとし、辺りを見回した。すると、近くにKS-22防空ヘリコプターが3機見えた。

 それと同時に、後方からレシプロエンジンの音が聞こえてきた。水月は振り返り、上空を飛ぶ自軍機の編隊を見た。そして、声を漏らした。


 「龍式艦上戦闘機113型……どうしてここに……あれを搭載したのは…………」


 そんなわずかな隙の間に、敵雷撃機が魚雷を数本投下した。魚雷は水月に向かって直進してきた。

 だが、突如として魚雷が爆散した。いや、爆散させられたが正しかった。

 その時、水月の前には1人の女性が立っていた。水月は目を疑った。洗練された動き、自身と同じ艤装、そして、自身の主砲よりも口径の大きかった91.6cm三連装砲。


 「夜桜姉さん……どうして…………」

 「1人でよく頑張ったわ。後は私達に任せて」


 水月の前に立った女性は、姉の夜桜だった。暁翠からは、再生はまだ先になると言われていた為、水月は目の前にいるのが信じられなかった。

 それと同時に、水月に無線が送られてきた。


 『単独での戦闘ご苦労さまです。ここからは、私達第57特別空母機動部隊と』

 『第32打撃部隊が敵を撃滅します。貴女は下がってください』


 水月は何が起こっているのか理解できなかった。目の前には夜桜がいて、後方には旧大龍帝国海軍最強と言われた艦隊が出撃しており、発艦された航空隊は敵機の撃墜に動き出している。


 「水月さん……帰りますよ」


 突如として、後ろから声がかけられた。振り向くと、そこには左目をその紫の髪で隠した女性が居た。肩には高角砲があり、右腕には飛行甲板が装備されていた。


 「もしかして……紫月?」

 「はい、貴女を助けに来ました。私に掴まってください」


 水月は紫月の腕を掴んだ。すると、紫月は鎮守府に無線を送った。

 途端、水月と紫月を霧の門が包んだ。それを確認した夜桜は、敵大編隊へ突撃を開始した。


 一方鎮守府では、重症を負った水月の帰還に誰もが驚愕していた。暁翠は氷龍と共にその場で応急処置を行い、救急車が来るまでの間、水月の命を繋ごうと懸命な活動を行った。

 だが、傷口が酷く、出血が治まらなかった。それどころか、水月は意識を手放してしまい、意識不明の状態に陥った。輸血が功をそしているのか、命の灯火は消えていなかった。


 数分後、救急車が鎮守府の門前に到着した。暁翠は指定の病院に水月を運び込んでほしいと願い出たが、救急隊員は信じられないことを口にした。


 「我々は人命救助の為動いています。物の為に使う時間はありません。我々は帰ります」

 「……ざけんな」

 「は?」

 「ふざけるなぁぁぁぁぁぁ!!」


 救急隊員の言葉を聞いた暁翠は怒髪天を衝いた。救急隊員は怖気づき、急いで逃げようとするも、暁翠に胸ぐらを掴まれ逃げることができなくなった。


 「お前達の身勝手な行動で、俺達がどれだけ苦しい生活を送っているのか分かっているのか!! こいつらはお前達の為に戦って、お前達の身勝手な行動で1度は死んだんだ!! それなのに……物扱いだと!! ふざけるのも大概にしろ!!」


 暁翠の口からは、流れ出るように怒りの言葉があふれ出た。救急隊員は恐怖から、何も言えずにただ首を縦に振ることしかできなかった。


 「この戦争で、何人死んだか分かるか!! 3人が死んでいるんだ!! その内2人はお前達人間が殺したんだ!! またお前達の身勝手な行動で殺すのか!! こいつらはものじゃない、れっきとした人間としての心を持っている!! そんな事すら分からんのか!! 時間がないからもう1度だけ言う……水月を第69総合病院へ連れて行け!!」


 救急隊員は黙って首を縦に振ると、担架に乗せられた水月をストレッチャーに乗せ、救急車の中に運び込んだ。暁翠と氷龍が中に乗り込むと、救急車はサイレンを鳴らして鎮守府を後にした。


 数十分後、救急車は指定された病院へ到着した。後部ドアが開くと同時に、待機していた医師達が水月が乗せられたストレッチャーを降ろし、手術室へと急いだ。

 暁翠と氷龍も救急車を降り、手術室へと急いだ。


 手術室に着くと、既に手術ができる状態になっていた。暁翠は指を鳴らし、自身と氷龍の服を手術用の服に変えた。

 そして、2人は手術室の中へ入った。

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