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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
28/109

少女なる兵器 第10話「姉の意地」

 場所は東南アジア方面。日本からの時差もあり、水平線が暁色に輝く頃、水月達は順調に目的地まで突き進んでいた。接敵もなく、今は比較的安心できた。


 数時間が経過し、時刻は8時を過ぎた。もう少しで目的地に到着し、帰還位置まで撤退が可能だと思われた。

 しかし、それは上空を飛ぶ敵機によって打ち消された。紀龍の対空電探が、敵の偵察機を捉えたのだ。

 紀龍は水月に無線を入れた。


 『水月さん。3時の方向、敵機です。数は1.。おそらく偵察機かと思われます』

 『分かったわ。発見された可能性があるから、最大速度で目的地まで向かう準備をしておいて』


 水月は紀龍の無線に返答を送ると、背負っている艤装に取り付けられた高角砲を敵機に向けるよう指示を出し、空中炸裂弾を装填するよう言った。

 そして、敵機に向けてそれを発砲した。敵機は跡形もなく砕け散り、破片はそのまま海へと墜落した。

 敵機の撃墜を確認した水月は、紀龍達へ無線を入れた。


 『おそらく敵機に発見された可能性が高い。このままだと本隊が攻撃を受ける可能性があるため、予定よりは早いが囮作戦を実行する。本隊は直ちに進路を変更し、速やかに本海域から離脱せよ』


 水月の無線を受け取った本隊は、囮部隊と進路を80度変え、そのまま目的地へと遠回りして進むようになった。

 水月は本隊が遠ざかる子を確認すると、冥月と日月に言った。


 「2人共、無茶な作戦かもしれないけれど、なんとしてでも成功させるわよ!!」

 「「了解!!」」


 そして、水月は敵艦隊が潜むであろう海域に向け、進路を取った。


 数分もすると、水上電探に敵艦隊の反応が移り始めた。規模からして、敵の水上打撃部隊と言った所だろう。大型艦の反応が6隻あることから、中規模の部隊だと言うことも予想できた。敵艦隊は水月と冥月の射程内であり、この距離ならばある程度の命中率が期待できた。

 水月は3秒間考えると、2人に指示を出した。


 「冥月!! 敵大型艦に主砲照準を向けて!! 日月は対空警戒を怠らないで!!」

 「「了解!!」」


 水月の指示により、冥月は敵艦隊に主砲照準を合わせ、日月は目視による対空警戒を行った。

 水月は主砲の天板を開けると、3門の砲閉鎖装置内に、暁翠から受け取っていた新型弾を装填した。装填を終えると、主砲の天板を閉じ、敵艦隊は照準を向け言った。


 「主砲!! 撃て!!」


 その言葉により、水月の主砲から龍死鉄線拡散弾を発砲した。続いて冥月も射撃を行い、合計6発の超大口径砲弾は敵戦艦へ向かって直進した。

 水月の放った砲弾が敵戦艦の近くまで来ると、砲弾先端に仕込まれたVT信管が作動し、砲弾が空中で爆発した。そして、細かい鉄片が辺りに飛び散った。鉄片は敵艦隊を混乱させ、その間に冥月の放った砲弾が、敵戦艦2隻仕留めることに成功した。

 水上電探の反応を確認した水月は、再び冥月に指示を出した。


 「次弾装填!! 装填が完了次第、再び攻撃を行う!!」

 「再装填完了!! いつでも撃てます!!」


 水月は主砲の装填弾を、自動装填の徹甲弾に切り替え、再び敵艦隊に照準を向け言った。


 「撃て!!」


 それから数分後、敵艦隊は壊滅した。多少の反撃を受けはしたが、これと言って目立った損害はどこにもない。電探を確認し、周りに敵艦船がいないことを確認した水月は、撤退の指示を出そうとした。

 しかし、突如として水月の対空電探が敵機を捕捉した。だが、問題はその数だった。反応は少しずつ増え、最終的に324機の反応が出た。しかも、反応の方向は撤退するための霧の門が展開される方向だ。このまま進めば、目的地に着く前に敵機の猛攻撃を受けることは明らかだった。

 水月は撤退地点の変更を進言するため、鎮守府に無線を入れた。


 『こちら、水月。撤退地点の方向にて敵大編隊を捕捉。撤退地点の変更を求む』

 『ザッ…………ザザザッ………………』


 水月の無線に帰ってきたのは、ただのノイズ音だった。水月は再び無線を送るも、返ってくるのはやはりノイズ音だった。

 無線が通じないと判断した水月は、2人に指示を出した。


 「敵大編隊を捕捉。無線が何かしらの影響で使えない、最高速度で撤退地点まで突き進む……対空警戒を厳とし、射程に入り次第迎撃を開始せよ」


 2人は黙って頷くと、冥月は対空兵装を遊撃状態に移行させ、日月は主砲を背負い、腰に提げていたK2 12.7mm連装重機関銃を取り出した。

 2人が対空装備を準備したのを確認した水月は、自身の対空兵装も遊撃状態にさせ、2人共に前進を始めた。


 それから数十分後、敵機との交戦が始まった。水月と冥月は、61cm単装高角砲を発砲したり、H-24対空ミサイルを発射するなりして、敵攻撃機や爆撃機を撃墜し、被害を最小限に抑えていた。しかし、多勢に無勢だった。ミサイルの残弾が底を尽きると、敵機による猛攻撃が始まった。爆弾が投下され、動きの遅い水月と冥月は攻撃を諸に受けてしまった。日月は攻撃の被弾箇所を最小限に抑えるも、やはり水上だと動きにくい為、完全に被弾を避けることはできなかった。

 しばらくすると、魚雷も投下され始めた。攻撃は水月と冥月に集中し、遂には水月の艤装への浸水が始まった。

 だが、水月は注排水システムを使用し、傾斜を復元した。その代償として、速度が11ノットまで低下してしまい、さらに攻撃が集中した。敵機にとって、水月は格好の的だった。


 その時だった、突如として水月達を白い霧が包んだ。そして、霧が晴れると、そこは紀伊水道だった。敵機の猛攻撃を受けている間に、いつの間にか目的地に到着していたらしい。

 3人は安堵の表情を浮かべ、鎮守府に帰投しようとした。だが、その行動は簡単に止められてしまった。


 次の瞬間、水月達の近くを数発の砲弾が掠めた。振り向くと、そこには敵水雷戦隊が存在していた。鎮守府へ侵攻して来た部隊と運悪く出くわしてしまった3人は、戦闘を余儀なくされた。

 水月は直ぐ様敵に発砲するも、敵に動きが読まれ、砲弾を外してしまった。冥月と日月も交戦を開始するも、敵は砲撃を見切り、砲撃を軽々と躱す。そして、水月達が苦手な近接戦闘へと持ち込んだ。

 敵艦は短刀を使い、水月達に斬り掛かった。水月達は艤装で防御するも、斬撃の数回は皮膚を掠めた。

 その内、水月と交戦していた重巡洋艦は中々の手練れであった。砲撃を軽々と躱し、ロングソードで水月に斬り掛かってくる。水月は主砲の砲身で受け流していたが、一撃一撃が重く、体制を崩しかけていた。


 そして、遂に水月の主砲がロングソードに弾かれてしまった。それにより、水月の懐を守るものが無くなった。

 それと同時に、重巡洋艦は水月にロングソードを振り下ろした。水月は袈裟斬りにより、胸から腹部を激しく斬られてしまった。水月は血を吐きながらも、重巡洋艦に主砲を撃とうとする。

 しかし、重巡洋艦は咄嗟に煙幕を展開し、水月から視界を奪った。それでも水月は強引に主砲を放ち、無理矢理視界を回復させた。

 だが、水月の見た光景は非常に信じがたいことだった。重巡洋艦が冥月の背後を取り、斬りかかろうとしている。冥月は反応が遅れ、防御できる状態ではなかった。


 ―まずい!! 一か八か、間に合え!!―


 そして、ロングソードが振り下ろされた。だが、冥月は斬られてはいなかった。水月が直前で腕を間に挟み、冥月への袈裟斬りを防御したのだ。

 だが、その代償は大きかった。水月は腕を切り落とされ、無理な動きをしたことにより、斬られた傷が更に広がった。

 しかし、水月は倒れずに重巡洋艦に主砲を放った。重巡洋艦は91cmの巨砲に耐えられるはずもなく、そのまま海へと姿を消した。

 周りの随伴艦は、重巡洋艦が撃沈されたのを見て一目散に逃げ出した。


 水月はその場に跪く、応急キットの中に入っていたガーゼと包帯を使い、腕の止血をし、斬り落とされた腕を回収して言った。


 「2人は鎮守府に帰投して……私は後から行く……から……」

 「何を言ってるの姉さん!? 一刻も早く鎮守府に帰投して治療を受けないと!!」

 「馬鹿か!? 水月さんの傷は深すぎる!! 後十分もすれば失血死します!!」


 水月の言葉に、冥月と日月は反論した。だが、水月は首を横に振りながら言った。


 「気づいているんでしょ……ここに向かってくる大編隊を…………」


 2人は分かっていた。近海に潜んでいるであろう、空母機動部隊から発艦された敵大編隊が鎮守府へ向かっていることを。このまま進めば、間違いなく鎮守府は戦場になる。そして、水月は身体と艤装に深刻なダメージを受けている。逃げることはできず、返って仲間を巻き込んでしまう。その結果、水月は囮としてこの場に残ることを選択した。

 だが、冥月は食い下がらなかった。ここで水月を置いていってしまえば、水月はほぼ確実に死ぬことになる。それは、冥月にとって受け入れることのできない事だった。

 しかし、水月は首を横に振って言った。


 「大丈夫……私は沈まない……何があろうと必ず生き残るから……だから……ね…………」


 冥月は苦渋の決断で、水月の言葉を汲み取った。そして、日月と共に撤退を開始した。

 その場に残った水月は、2人の遠くなる背中を見ながら呟いた。


 「冥月……嘘を言ってごめんなさい。私はここで死ぬ」


 その頃、冥月は駄目元で鎮守府に無線を入れていた。ノイズ音は無く、電波妨害や無線機の故障がなければ、応答は返ってくるはずだ。冥月は応答が返ってくる望みを掛けながら、鎮守府へ向かっていた。

 しばらくすると、無線機から暁翠の返答が返ってきた。


 『どうした? 何かあったのか?』

 『今すぐ増援を!! じゃないと……水月姉さんが!!』


 詳細を聞いた暁翠は、冥月に「分かった」とだけ返答すると、無線を切り、言った。


 「聞いていたな? 稼働できる者は今すぐ出撃し、紀伊水道へ急げ!!」

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