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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
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少女なる兵器 第9話「無名の過去」

作戦会議の翌日、水月は頭痛に悩まされていた。打ち所が悪かったのか、少しの振動でも敏感に反応してしまい、頭痛が走る。

 結局、水月は浴衣に着替えて寝ることにした。暁翠には安静にするよう言われているため、ちょうど良かった。


 数分後、水月は寝ることができなかった。頭痛もあるが、寝るにしても辺りが明るく、上手く寝ることができなかった。

 水月は溜息をつくと、立ち上がり、机の上に置かれている水の入ったコップに手を伸ばした。そして、暁翠に渡されていた痛み止めと共に、水を飲んだ。

 水月はそのままベッドに転がろうとすると、突如としてカーテン越しに人影が現れた。水月は後退りすると、近くにあった箒を手に取り、それを構えた。そして、恐る恐るカーテンを開いた。

 カーテンを開くと、そこには霊花が立っていた。霊花は指で窓を開けるよう頼み、水月は警戒を解いて窓を開けた。

 霊花は部屋に入ると、水月に小さな布袋を渡して言った。


 「中に薬が入っておる。頭痛に対して即効性のあるものじゃから、寝る前に飲んでおけ」


 霊花は言い終わると、錫杖を壁に立て掛けて自身も壁にもたれた。水月は理由の分からないまま、霊花に頭を下げた。そして、薬を机の上に置くと、ベッドに腰を掛けた。

 ふと、水月は気になることがあった。昨日、暁翠は水月の様子を見に来た時、霊花の事を自分の孫娘だと教えてくれた。だが、その名前はかつて日本を滅ぼそうとした龍族の名前と同じだった。

 すると、霊花が口を開いて言った。


 「なんじゃ? 妾の過去が気になるのか?」


 霊花が突如として放った言葉に、水月は身震いした。水月の思考は、霊花に全て見透かされていた。

 霊花は水月の目を見ると、再び口を開いた。


 「妾は気分が良い。今なら話してやるぞ」


 その言葉に、水月は首を縦に振った。そして、霊花が過去の話を始めた。

 まず、霊花は大龍帝国元15代首脳であり、かつて業火の巫女として恐れられていたこと。次に、霊花には創一と京花と言う2人の側近と、8人の優秀な直属部隊が存在していたこと。最後に、日本への宣戦布告に踏み切り、側近であった創一と、側近の下についていた独立部隊、通称X隊の生き残りであった部下2人を失ったこと。

 霊花が話し終わると、水月は霊花に聞いた。


 「霊花さん……亡くなった創一さんと、X隊の皆さんは、どういった人たちだったんですか?」

 「聞いてどうする? 本来であるなら、お主には関係のない話じゃ」


 水月の問に、霊花は冷徹な視線を返した。その視線に対して、水月は冷静に答えを返した。


 「祖国で……起こった事です。せめて、元帥の孫娘である貴女の話ですから、他人事として捉えられたくないんです」


 その言葉に、霊花は何かを言おうとした。


 「それは私から話た方が良いでしょう」


 突如として、扉の方から声が聞こえてきた。扉の方を向くと、そこには仮面をつけた京花が立っていた。


 「京花、いつの間に入ってきたんじゃ?」

 「霊花様こそ、勝手に抜け出されては困ります。常に警察や殺し屋、マフィアにも狙われています。ご自身の立場をよく理解してください」

 「分かっておる」

 「分かっていません」


 2人の会話は、まるで親子のようでありながら、主従関係を守っていた。

 京花は扉を閉めると、近くにあった椅子に腰を掛け、創一とX隊について話し始めた。


 龍造創一は、元は実弟の国外逃亡を手助けした罪に問われ、本来ならば死罪になるはずだった。だが、当時の霊花は事実上政治の実権を握っていた側近2人を切り捨ててまで、創一を助けたそうだ。


 そのれから時は経ち、第38次大龍帝国本土大空襲の翌日、霊花が首脳の座を降り、本国を出た放浪の旅に出る直前、創一が新たなる首脳として任命された。それから約1000年間、創一による少数部隊による反攻作戦の計画が進められたものの、当時の大龍帝国玉島には、創一と京花以外の者はおらず、和島の龍族の協力も得ることができなかった。


 それからまた1000年が経ち、創一は13〜15くらいの6人の兄妹を保護した。それは、創一の弟の子孫であり、後のX隊となる深闇家の者であった。X隊の男は創一が鍛え、女は京花が鍛え上げた。その結果、それぞれが強力な力を持つようになった。その後、和島で先に保護、鍛え上げられていた者も加わり、2年かけ、創一と京花の1回目の死後、X隊本隊は7人中2人の犠牲と引き換えに、吸血鬼の2大派閥の片方を壊滅させることに成功した。


 それから時は経ち、創一と京花の転生後、再びX隊の実力は目を見張るものであり、創一ですら勝てるかどうか怪しいと断言するほどだった。

 その後、X隊は残っていた吸血鬼を殲滅させるため、次元を超えて吸血鬼の陣地へ進撃した。結果的に吸血鬼は滅ぼせたものの、指揮をしていた長男を含め、3人が死亡した。その後、事態は日龍戦争へと移っていくこととなった。


 京花はそこまで話し終えると、仮面を外し、水月の目を見た。京花の黄色の瞳には、何かの契約印が刻まれていた。3重ほど絡み合っており、元がどのような契約印なのかが分からない。

 そして、京花は再び口を開いた。


 「その後、日龍戦争で創一は死に、X隊もそこで全滅した……その内の1人……幽離は自ら命を差し出したとでも言うのが正解かしら? 命と引き換えに戦争の終結を望むなんて…………」


 その言葉を、水月は重く受け止めた。今の自分があるのは、過去に戦い続けた先人達がいるからこその命だと、改めて胸に染みた。

 京花は再び仮面を着けると、霊花を見て言った。


 「霊花様。そういえば、今日は会合の日でしたよね? 時間も近いので、そろそろ向かいましょう」

 「そうじゃな……その方が良かろう。傷を隠すための化粧も長くは保たん」


 そう言いながら、霊花は自身の目の付近を指でなぞった。すると、なぞった線の中に火傷痕が見えた。そして、流れるように、霊花は持参していたハンカチで顔の左半分を拭いた。

 霊花の顔を見た水月は驚愕した。霊花の顔には、一生物であろう大きな火傷痕があったのだ。その部分は肌の色が他とは違い、赤に黒がかかったような色をしていた。

 霊花は水月を見ると、笑いながら言った。


 「心配するな。仲間を守るために負った名誉の傷じゃ。それに、命があるだけマシじゃよ」


 水月は下を向いた。霊花に気を使わせてしまった事が申し訳ないと感じていた。


 すると、突如として部屋の扉が叩かれ、暁翠が中には入ってきた。暁翠は霊花を見るなり、頭を掻きながら言った。


 「霊花……また窓から入ったのか?」

 「問題ないじゃろ。迅速かつ最適な方法じゃ」

 「安全面と倫理的にどうかと思うが……まあ良い。それより、水月の容態はどうなんだ?」

 「そこまで酷いものではないじゃろう。2日もしたら治るじゃろう」


 霊花がそう言うと、暁翠は安堵の表情を浮かべた。そして、次の書類仕事を片付けるため部屋を後にした。

 暁翠が出ていくのを確認した霊花は、部屋の中に置かれている電波時計を見た。時刻は9時54分だった。

 霊花は時刻を確認すると、水月に向かって言った。


 「すまぬが、妾はそろそろ行かねばならぬようじゃ。くれぐれも、叔父上を心配させるなよ」


 そう言うと、霊花は霧の門を開き、その中へ姿を消した。京花は白い霧を放ち、霊花の後を追うようにその場から消えた。

 水月は呆然としつつ、軽く頭を抑えた。


 それから3日後、水月の容体は回復し、予定されていた長距離遠征が決行されることとなった。

 作戦に参加することとなっている全員がS-24エリアに集合すると、スピーカーから放送が流された。


 『作戦の時間となった。これより、特Ⅱ作戦を開始する。準備が整い次第、各自出撃せよ。紀伊水道を抜け次第、霧の門が展開される。そこからは安全の保証は無くなる。覚悟して任務に臨んでくれ』


 放送が終わると、各自昇降機に乗り込み、海へと繰り出した。晴天下の海は静かで、波の音と艦隊が放つスクリュー音しか聞こえなかった。




 時は遡り、とある一室にて、霧の門が開かれた。そして、霊花が姿を現した。続けて京花も黒い霧を伴い、その場に姿を現す。

 そして、霊花は用意されていた席に座った。京花は霊花の後ろに立ち、霊花が向かい合っている者達を見た。


 「では、会合を始めましょうか」


 司会のその一言で、会合は始まった。今回の会合の題は、「終戦後の外交問題」であった。旧大龍帝国は全世界に宣戦布告を行っていた為、外構面では弱い立場に立たされているのが現状だ。その為、不平等条約を交わされている事が後を絶たない。その例として、兵器達が不当な扱いを受けている。


 会合が進むにつれ、内容はエスカレートしていった。最終手段として、もう一度日本の滅亡計画も上がっていた。だが、司会と霊花はそれを認めなかった為、この案は白紙に戻された。

 そして、代案としてこれまでの事を世界中の人間にビラをばら撒き、各国政府が隠蔽、改善している旧大龍帝国の実態を晒すことが承認された。


 それから3時間ほどして、会合は終了した。京花は部屋の隅に置かれたコップを6つ取ると、その中にコーヒーを淹れた。そして、そのコーヒーを霊花を含めたその場にいる6人に出した。

 霊花はコーヒーを一口飲むと、コップを机の上に置いて言った。


 「しかし、人間の身勝手にも困ったものよな。あれだけ妾達を頼っておきながら、最後は裏切った挙句、差別を行うとは…………」

 「そうね……だけど、今は契約を終わらせることだけ考えましょう。それが終わらないと話にならない」


 霊花のと向き合っている者は、半分呆れた声で答えた。これはこの場にいる全員が分かっていることで、契約が終わらない限り自分達は有利な立場に立てないのは確かなものであった。

 すると、その隣に座る者が京花に尋ねた。


 「そう言えば、今日はあの子はいないの? いつもなら必ず来るはずだけど」

 「現在、ポリネシア方面にて諜報活動を行っているとのことです。年末には帰還すると報告がありますのでご安心を」


 京花が言い終わると、次は司会が口を開いた。


 「しかし、暁翠もお人好しよね……あんな腐れ生物にまだ愛想を尽かしていないなんて……」

 「叔父上の判断じゃ。妾はそれに従うし、お主であっても叔父上を侮辱することさ許さんぞ」


 司会の言葉に、霊花は反論気味に言葉を返した。その言葉を聞いた司会は肩を上下させ、溜息をついた。

 すると、霊花の隣に座っていた者が口を開いた。


 「霊花よ。今回の件、何が動いていると思う? 怨念とはいえ、吸血鬼が復活しているのじゃ」

 「そうじゃな……何かしらの大きな存在が後ろに働いていることは確かじゃ……その存在を確立させねばならんな」


 霊花はそう言うと、深くため息をついた。司会は霊花の隣に座る者を見ながら、1枚の書類に印鑑を押した。

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