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少女なる兵器 Act.1〈旧版〉  作者: 深瀬凪波
第二次龍鬼戦争
25/109

少女なる兵器 第7話「過去の願い」

主な登場人物

・水月

旧大龍帝国陸海共同軍所属の超戦車。普段はおっとりとした性格をしているが、戦闘になると、おっとりとした雰囲気とは裏腹の、戦闘者としての殺気を放つ。しかし、身内と認識した者、特に姉妹にはとても甘い


・龍造暁翠

大龍帝国元13代首脳。戦闘には不向きであるが、的確な指示で数多の戦を勝利へ導いてきた。人を引き付けるカリスマ性を持っており、旧大龍帝国の家臣や国民から慕われていた。今は兵器達に慕われている


・龍造京花

大龍帝国元海軍元帥で、霊花の側近。1度死亡するも、吸血鬼、悪魔、人間の混血として転生した。自身の身体の一部を変化させたりすることもできる。冷徹な性格で、人間に対しての信用が一欠片も無い

 海を眺める2人の間には、沈黙が立ち込めていた。何か話そうにも、何を話せばよいか分からずに只々時間だけが過ぎてゆく。

 すると、暁翠の時計が鳴った。確認すると、時刻は深夜0時を超えていた。年が明けていたのだ。

 暁翠は水月に向き合って言った。


 「去年は短い間だったが、今年からもよろしく頼む」

 「はい。この戦争が早期終結するように努力します」


 その言葉を聞いた暁翠は苦笑した。水月には暁翠が苦笑する理由が分からない。だが、暁翠何かを心配していることは表情から読み取ることができた。

 すると、2人の目の前に白い何かがゆっくりと空から降ってきた。辺りを見渡すと、雪が振り始めている事が分かった。この地域で雪が降ることは珍しいが、そんな事を気にする暇はなかった。

 暁翠は水月に、自信が羽織っていた上着を着せた。そして、水月を連れて鎮守府本舎の中へ入った。


 2人が食堂へ向かう途中、水月は近くの窓の前で足を止め、窓の外を見た。外ではまだ雪が降っており、地に降っては消えていった。

 暁翠は後ろを振り向き、水月が窓の外を観ていることに気がついた。暁翠は水月の横に行くと、窓の外を見た。

 すると、水月が暁翠に話しかけた。


 「元帥。どうして私は再び生を受けたのでしょうか? 本来ならば、私は海の底で朽ちゆく運命でした。ですが、こうして生まれ変われたということは何かしらの力が働いているはずです」


 水月の言葉を聞いた暁翠は、少しの間、何も言わなかった。しかし、深く溜息をつくと水月に聞いた。


 「もしかすると、お前を失望させてしまうかもしれない。それでも良いのか?」

 「はい」


 水月の返事を聞いた暁翠は、全てを話し始めた。




 始まりは大龍帝国が滅亡してから数日後のことだった。

 暁翠は大龍帝国本土の地下に訪れていた。理由は何かしらの使えそうな部品を探すためであった。

 そんな中、シャッターで閉ざされた部屋を見つけた。10桁の暗証番号が必要になっており、更には血液認識も必要となっていた。

 暁翠は既にパスワードが記入されていた紙を見つけていた為、容易くロックを解除することができた。そして、暁翠はその中の光景に驚愕した。

 中は円柱状の部屋となっており、中心から何本もの通路が伸びていた。そして通路を分けるように置かれている棚の中には、兵器の魂があった。

 そんな中、暁翠は落ちていた1通の封筒を見つけた。拾って見てみると、それはこの部屋の管理を任されていたであろう者の置き手紙だった。


 後任の方へ

 これを読んでいるということは、おそらく大龍帝国が滅亡したのですね。私はその未来を知ることはできませんし、知ろうとも思いませんでした。そんな無責任な私の願いを聞いていただけるとありがたいです。その願いは、兵器の……いえ、彼女達の魂を肉体に宿し、人間社会に溶け込ませてやってください。

 知っての通り、大龍帝国の兵器には完全自立性プログラムシステムがあります。これは兵器に魂があるからであり、彼女達が生きている証でもあります。戦い傷付きいてきた彼女達ですから、せめて大龍帝国滅亡後は穏やかな暮らしを送らせてやりたいのです。

 この手紙と共に、兵器の肉体を作り出す肉体生成装置が置かれている場所の地図と使い方を記した紙を入れておきます。どうか、彼女達の事を幸せにしてやってください。よろしくお願いします

         大龍帝国極秘管理課24番 乃咲龍二


 この手紙に付属していた地図を頼りにその場所へ向うと、100基以上の肉体生成装置が置かれていた。丁寧に1基づつどの兵器に対して使えとの説明板が取り付けられていた。




 「そこからは生成装置を起動させて……まあ、何だかんだ長い時間だった」

 「そうですか……龍二さんには申し訳ない事をしてしまいましたね」


 水月は申し訳無さそうに言った。


 「まったくだ。敵の本拠地さえ見つける事ができれば援軍は期待できる……」

 「何にせよ、制海権を握らないといけませんし、地道に頑張りましょう」


 そう言うと、水月は歩き出した。暁翠は水月の後ろ姿を見て何か思うところがあった。だが、それを口には出さない。もしかすると、水月の思いを否定してしまうかもしれないから……


 食堂に戻ると、ほぼ全員が眠っていた。起きているのはほんの数人のみだった。暁翠と水月は顔を見合わせると、深い溜息をついた。

 暁翠は近くで眠っていた輸月を担ぎ上げると、水月を含めた起きている者に指示を出した。


 「お前ら、部屋に戻って寝とけ。寝ている奴は俺が部屋まで運ぶ」


 その言葉に従い、起きていた者は各自の部屋に戻り始めた。しかし、水月だけは何故か残っていた。

 そして、水月は言った。


 「私も手伝いますよ」

 「まあ、お前がそのつもりなら許可するが、無理だけはするなよ」

 「了解しました」


 暁翠は少し呆れ気味に言ったが、水月はそんな事は気にせず冥月を背中に負うと、冥月の部屋に向かって歩き出した。


 それからしばらくして、食堂で眠っていた全員を部屋に運び終えた2人は、睡眠を取るために自室へと戻った。

 その道中、水月は脳裏に過去の記憶が蘇っていた。




 『今年からもよろしく頼む』

 『はい。司令官達の大切な命、しっかりと預かりました。この戦争が1分でも早く終結するように、私も全力を尽くします』




 水月が兵器時代だった頃の艦長と会話したほんの数秒の記憶。この光景が、暁翠と会話した時の記憶と重なっていた。


 翌日、目覚めると時刻は6時だった。朝食までは時間があり、何をしようかと考えていた。

 すると、部屋の外から足音がした。誰かは分からないが、その足音は下の階へと向かっていく事が分かった。

 水月は正装に着替えると、部屋の外へ出た。そして、足音がした方へ歩いて行った。


 しばらくすると、水月は食堂の前まで来た。足音の正体が放つ気配はこの中から感じ取れた。

 中に入ると、厨房の扉が閉まるタイミング音が聞こえ、厨房内に誰かが居るのは確定した。

 水月は厨房の扉の前まで近づき、意を決して扉を開けた。扉を開けた瞬間、中にいた者と目があった。しかし、その正体に水月は驚いた。


 「元帥?」


 正体は暁翠だった。暁翠は表情1つ変えずに、厨房の中へ進もうとした。

 しかし、それを水月が引き止めた。


 「元帥……言いましたよね。休んでくださいと」

 「しっかりと休んではいたぞ」


 後ろから暁翠の声が聞こえてきた。水月は驚いて振り返ると、そこには暁翠がもう1人立っていた。

 水月は思わず2度見してしまった。暁翠が休んでないと思っていたが、今度は暁翠が増殖して混乱していた。

 そんな水月に、厨房の扉の前に立つ暁翠が答えた。


 「そいつは俺の分体だ。朝食は任せようとも考えたんだが、結局は衛生面に不安が残るから俺が来たんだ。ほれ」


 そう言うと、暁翠は厨房の中に立つ分体に手を向けた。すると分体が暗い霧に変化し、暁翠の手の中に吸い込まれていった。

 あまりにも規格外のことに、水月は呆然としていた。そんな水月を他所に置き、暁翠は棚から手ぬぐいとエプロンを取り出すと、それらを身に着け厨房へ入った。

 そこで水月は我に返り、暁翠に言った。


 「それ、結局は休んでないじゃないですか!!」




 1時間後、暁翠は全員分の朝食を用意し終えた。水月も途中から手伝い、予定していた時刻よりも早く終わった。

 水月は何をしようかと考えていると、暁翠が言った。


 「水月。俺これから席を外す。数分程度で戻ってくるから休んでおけ」

 「何処に行くつもりですか?」

 「旧大龍帝国本土だ」


 暁翠がさらっと言った言葉に、水月はまたもや驚いた。水月は一瞬固まるも、すぐに暁翠に言った。


 「私も行きます」

 「どうしてその考えに行き着くのか……問題は無いが」


 そう言うと、暁翠は目の前の空気に手をかざし、霊力を放出した。すると、白い霧が出現し、人1人がすっぽり収まるくらいの大きさに広がった。


 「霧の門……転移陣とでも言うべきか。遠出をする際はいつも霧の門を使用している」


 そう言うと、暁翠は霧の門の中へ入った。水月はき霧の門の反対側に行ってみるも、そこに暁翠がの姿は無かった。

 水月は霧の門を通ることに不安を感じていたが、覚悟を決めて霧の門の中へ入った。


 霧の門を抜けると、そこは厨房と全く別の場所だった。あたりに見える焦げ茶色の土、懐かしい独特の潮風が体に当たるの感覚、そして目の前に見える古びた神社。この事から、ここが旧大龍帝国本土に存在している天翔神社であることが分かった。

 あたりを見回すと、神社の前で暁翠が待っているのが見えた。水月は急いで暁翠の居る場所へ向かった。

 暁翠は水月が来るのを確認すると、水月に小銭を渡した。そして、自分が持っている小銭を賽銭箱の中に入れ、参拝をした。

 水月も小銭を賽銭箱の中に入れ、参拝をした。


 参拝の帰り道、暁翠は水月に何を願ったのか尋ねた。


 「水月。お前は何を願ったんだ?」

 「全員が生き残って戦争が終わることですよ。元帥は何を願ったんですか?」

 「全員の無事と……いや、何でもない」


 暁翠は何か言いかけたが、それを言わなかった。水月もそれ以上追及しようとはしない。答えたくないことは答えないで良いと思ったから。


 鎮守府に戻ると、数名の兵器が食堂に集まってきていた。暁翠は厨房から出ると、1度執務室へと戻った。

 水月は食堂に残り、時間まで待つことにした。だが、暁翠の言いかけていた言葉が気になっていた。言いかけた言葉……それは約1ヶ月後に知ることとなった

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