171.友人の恋の質問はかわせない
ゼファル様はケヴェルンに連れてきたのは、希望者だけだと聞いた。つまり、二人は望んでここに来た。それが知りたい。
「そんなの決まってるじゃない。ケヴェルンを、人間と共存できる世界を守るためよ」
そう言い切ったスーは強い目をしていた。力強い言葉に胸が掴まれる。
「そうです。そのうえアイラディーテに攻め入ろうと考えているなんて、許せるはずがありません」
アーヤさんは握りこぶしを作っている。じんわりと心が温かくなって、勇気がもらえた。
「嬉しい。本当に、ありがとうございます」
ゼファル様を、ケヴェルンを、人間と魔族が共存できる世界を守りたくて、私も行動した。二人が同じ気持ちでいてくれたことが、何より嬉しい。
「それに、リリアが大変な時に、私だけ楽して逃げようなんてできないわよ」
「そうです。それを言えばリリアさんこそ、どうしてケヴェルンに? 今こうして会えたということは、来たのは最近なんでしょう?」
「あ~、うん。いろいろありまして」
援軍云々は軍事機密にあたるから、さすがに二人に話せない。曖昧な笑みを浮かべてぼやかしていたら、スーがしたり顔で私を指さした。
「わかった。ずばり、恋でしょ!」
「ちょっと、こんな時に何を言ってるんですか」
「悔しいけど、合ってる」
「えぇ!?」
アーヤさんは目を剝いていて、スーはきゃぁと口に手を当てた。二人の目が好奇に彩られる。
「自分で言っといてなんだけど、相手は魔王様よね?」
「そうよ」
こうなったら堂々とするしかないと顔には出さずに答える。
「えっと、前は応える気はないとおっしゃっていたと思いますが、どうして?」
二人が食い気味で質問してくる。私は一口紅茶を飲み、気恥ずかしさを落ち着かせようとする。
「実は反乱が起きた時、王都に置いて行かれて……一緒にいたいって気づいたから」
いろいろはしょったけれど、結局はこういうことだ。改めて口にするとむずがゆい。
「きゃあ~、すてき! それでケヴェルンまで追いかけてきたの? 魔王様は? 会ったときどうだった?」
「えっと……」
どうしよう。襲撃のことも、泣かれたことも言えないわ。
機密事項ということもあるけれど、何より二人に心配をかけたくない。
「すごく、感動してくれた……かな」
「リリアさん、もっと詳しく! ちょっとメモ取りますので!」
「アーヤさん、本にしようとしてるでしょ!」
2人の目は輝いていて、興味津々。このやりとりが懐かしくて、怒りたいけど頬が緩む。
「ほらほら、リリア。全部話すまで帰らないわよ」
「相談にも乗ってたじゃないですか。聞く権利あると思います!」
2人はずいと身を乗り出していて、圧がすごい。そして、こうなったら引き下がってくれないことも知っている。
「……わかったわよ。あの、くれぐれも内緒ですよ?」
2人は間髪入れずに「はい!」と答えたけど、これほど信用できない返事はなかった。しかたなく、観念した私は事実5、ぼやかし3、微妙に違う情報2の創作話をすることになったのだった。
2人が帰ったのは夕方で、寂しさを感じつつも必ずまた会うことを誓って見送った。城の玄関から見えた西の空は紅で、ぞっとするほど美しかった。




