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錬金術師の日常  作者: closet(クローゼット)
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第1話 目覚めと遠い日の記憶

 ガイア王国の王都の朝。陽の光に目が覚めたハルカはブラインドを上げて日光浴も兼ねて起床する。


「夢、か」


 ガイア王国の錬金術師たちは皆、夢に遠い日の記憶を見る。


 ハルカも例外ではなく、遠い日の記憶の夢を見たようだ。


 玄関のチャイムが鳴った。


 ハルカには誰が鳴らしたかわかっている。


 新聞配達のミッカーロだ。


 厚手のブランケットに身を包み、玄関まで歩く間にもまたチャイムが鳴り、やっと玄関のドアを開けると、茶髪を短く切りそろえたイケメンで高身長な同級生であり、優秀な新聞配達員であり、ハルカの彼氏でもあるミッカーロが居る。


「俺の鳴らしたチャイムはちゃんと聴こえたようだな、ハルカ」

「何回も鳴らさなくても聴こえてるわよ、ミッカーロ」


 ミッカーロが朝刊を渡してくれた。と、同時にキスをしてきた。


 このキスは付き合い始めて早い時期にミッカーロが提案してきた秘密の約束事だ。


「バイト、お疲れ様♪」

「じゃあ、次は学校で会おう!」


 ミッカーロの小さく遠くなっていく背中を見ながら、ハルカは今日は錬金術師養成学校の卒業式だと思い出した。


「用意しなきゃ」


 ハルカは家の中に戻り、2階で学校の制服に着替えて、金色のショートボブをブラシで梳かした。

 ブランケットをベッドにたたんで置き、パステルブラウンのコートを着た。

 肩掛け鞄を斜め掛けし、鍵束を制服のプリーツスカートのポケットに仕舞い込むと、また玄関へ行く。


「忘れ物は、ないよね。よし、行くか!」


 ハルカは魔法も使える錬金術師なので、登校時はいつも箒に乗って行くのだ。

 今日も箒の状態を確認してから跨り、登校する。


 卒業式後、ハルカは箒に跨って錬金術師協会へ行き、錬金術師の証の金の大きなバッチを付けてもらい、正式に錬金術師として認められた。

 独立開業の申請も受理され、証明書を皮と厚紙で出来た筒の中に入れて、手続きは終わった。

 用事を済ませたハルカは自宅に帰るなり、電話が鳴ったので出てみたら、ミッカーロからだった。

 これからハルカと一緒に新しく開業予定の店の外観や内装を見に行こうというのだ。

 

 

 ハルカはミッカーロと待ち合わせて新築の工房を見に行った。


 内装から外観にいたる隅々をチェックして回るミッカーロとハルカは仕上がりに満足した。


 ミッカーロは建設業者が差し出す領収書に羽ペンでサインし、その場で代金を支払った。


「きっちりいただきました! ありがとうございます」


 優し気な笑顔で業者はそう言って帰っていった。


 ミッカーロが恥ずかしげもなく言う。


「2階の寝室では一緒にねような」


 ハルカの耳が赤くなる。


「ミッカーロはもっと仕事に集中するべきよ!」

「たまには愛の話も必要さ」

「今は仕事に集中するべきでしょ」


 ハルカはミッカーロを叱りながら、薬品棚を確認した。200種類の錬金素材が中に入っている。続いて階段を降りて地下へ行くと、鋼の鎧の錬成をする第2工房を見て回った。


「あとは私の出番か」


 地上階まで上って受付に立ったハルカの肩にミッカーロが手をおいた。


「疲れたらいつでも2階で寝てて良いから。俺が店番とか錬金術で客の求めるものを錬成してみせるからさ」


 じゃあ、夕刊の配達があるから。と、ミッカーロは配達拠点へ行ってしまった。


「嵐のようだったなぁ、ミッカーロ」


 今日は店を閉めて店内で錬金術の練習を試みた。


 作品は完成した。


 錬金術で金色のに輝く可愛いクマのぬいぐるみだ。


「ミッカーロのためにも何か錬成しようかしら」


 ハルカは錬金術でブレスレットを2つ錬成した。


 1つはミッカーロに、もう1つは自分の分だ。金色に輝くブレスレットは細かな鎖と、スカイブルーの宝石からなる。


 錬成時、ハルカはスカイブルーの宝石に安全と健康の願いを込めた。


 ハルカは自分のブレスレットにも同じ願いと、加えて仕事が上手くいくように願いを込めた。


 2つのブレスレットが完成すると、ハルカはエプロンのポケットに仕舞い、店を開いた。




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