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異世界少女も許嫁ポジを狙っているちょっと危険が危ないラブコメ  作者: 御子柴 流歌
第3章: 新たなる日常になるかもしれない光景
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3-2. 中央食堂「ポラリス」

 中等部の敷地にも高等部の敷地にもそれぞれ食堂はしっかりと存在する。もちろん広い。


 中等部の食堂は1年生から3年生までをしっかりと収容できるくらいには広い。勿論学生寮にも食堂はあるので、生徒はどの食堂を利用しても良いということになっている。


 一方高等部はというと、学生寮の食堂を利用しても良いことは共通。違うところをあげるなら、食堂がいくつかの場所に分散していることだろうか。

 特別教室に近いところ、一般教室に近いところなど、適宜次の授業を考慮して利用しやすいところを使えということになっていた。


 各自部屋に戻って荷物などを取ってきてからやってきたのは、アリスト学園の名物のひとつである全学共通で利用可能な中央食堂。

 名前を『ポラリス』という。北極星を意味する単語に由来する名前だが、アリスト学園の敷地のだいたい真ん中に位置していることを天球の中心にある星に見立てたということのようだ。


 そして問題なのはそのサイズ感。どこぞのホテルの大ホールと比べても、その数倍規模はあるだろう。アリーナ感すらある。中央食堂の冠は伊達じゃない。ウエイター・ウエイトレスの類いがしっかりと配備される時間帯もある。

 何せこの近くには後日高等部新入生を集めての入学式を開く大講堂がある。大講堂に入れるだけの人数をこちらの食堂のお客として招き入れられるだけのキャパシティがないとだめだ、ということで建てられたらしいというのは、去年学祭準備で高等部の敷地に来た際に()()()先輩から小ネタとして提供された情報だった。


 ちなみに、メニューは当然中央食堂の方が多いとかしっかりとした利点はあるけれど、それぞれの教室棟からはそれなりに遠いという問題もあった。他の生徒がどうだったかは把握していないが、去年までの俺たちはこっちまで足を運ぶことはほとんどなかった。


「おぉ、(わか)(みや)じゃん。おつかれさーん」


「どもどもー」


 エントランスの周囲を興味深そうに眺めている3人にお付き合いしていると、誰かが優里亜先輩に声をかけてきた。良く通る声は少し優里亜先輩にも似たところがあるが、口調からして生徒会の人のようだ。


 構内にはいるが、今はまだ春休み。授業がなければ大抵は私服だ。制服を着るのは休日の部活動などでどうしても着なければならない事情がある人くらいだ。制服ならばリボンやタイで区別か付けられるのだが、2年生か、3年生か。いったいどっちなのだろう。気安い反応を返す優里亜先輩を見る限り同学年の人だろうか。

 ――いや、この人なら年上でもこんな反応な気がする。ついさっき『年齢を重ねていく前の1年の差は大きい』とか言ったばかりだけど、例えば生徒会のOGあたりが来校しても自分は別だと言わんばかりにこんな感じのリアクションを取るような気がしてならない。


「じゃあ、引き連れてる子はみんな新入生くんたち?」


「そ。期待の新人っ」


 言いながらいちばん近くにいた()()と、何故か俺をがっちりと捕まえた。危うく頬擦り状態、とってもフレンドリーなキスをした的な状況だ。

 優里亜先輩と比べて、望愛は背が小さいので然程無理な姿勢にはなっていないが、こっちはまったくそれどころじゃない。一瞬だけ大成とカリーナの目が見開かれたのは、できたら終生気付かないでいたかった。


「そうそう! ずっと言ってた望愛と(えい)()クン!」


「あー、じゃあ間違いなく期待の新人だわ」


 ずっと言ってた――って、何をですか、どういうことですか。


「っていうか、レベル高っ。みんな顔面偏差値高っ」


「そりゃあだって、ワタシの後輩だしっ」


 (たい)(せい)よ。優里亜先輩に言われて嬉しいのはわかるが、そこでドヤるな。


「……そこで自信満々なのがスゴいと思うよ。事実だからまたアレだけど」


 若干呆れ気味だが、この人の気持ちも解る。


「他のみんなも、生徒会室の扉叩いてくれるの待ってるからねー」


 別の友人から声をかけられ、そちらの方へと駆け寄っていった。


 話は終わったはずなのだが、一向に解放されない。強引に振りほどこうにも、腕辺りにやらかい感触があって下手な行動ができない感じがあった。その場のノリと勢いで、俺は(たっ)(けい)に処される恐れすらある。致し方ないのでそのままの体勢で質問をぶつけることにした。


「あの、優里亜先輩」


「何だね? 纓人クン」


 ――俺は、折れない。


「何でいつの間にか俺まで生徒会に入る的な流れ」


「不服かね? 纓人クン」


 先輩の腕にさらに力がこもった。


 あ――その、ごめんなさい、折れます。前言撤回します。


 イヤもう、なんなんスか、さっきからちょこちょこと顔を出す、その意味の分からないちょっと高圧的な上官っぽい口調は。実際俺の文句を途中でカットしてきたんだから、高圧的な先輩であることには代わり無いけど。


「俺、そういうの向いてないです」


「何を言いますやら。去年の奮闘っぷりから見たら誘わない手は無いでしょう」


「やらされてただけです、俺の意志はそこには無いです」


「……ふーん。まぁ、イイけどねー」


 不満げな顔をしたと思えば、すぐさま何か腹に一物抱えていそうな笑みを浮かべる先輩。


「望愛が泣いちゃうよ~?」


「……っ。釣られませんよ?」


「それに……、もしキミを誘い入れられると、他にも良いことがありそうだしね」


 そう言って先輩が視線を移した先には、異世界少女ふたりの姿があった。


将来的に生徒会篇があるかもしれない。

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