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「警部、お疲れ様でした。早速、県警の公式アカウントに投稿させました」
何故か今村は晴れやかな表情だ。
「犯人が怒り出さない内に夏木マミのヌードを投稿しないとな。犯人のTwittorに反応はあったか?」
「ちょっと待って下さい」
今村は先程まで撮影に使っていたスマホを取り出し、犯人の投稿を読み上げる。
「"なんでオッサンのヌード投稿してるんだよ!"」
「"気持ち悪いー"」
「"キメ顔www"」
「"四つん這い、マジウケるわwww"」
落ち着け。事件解決の為にやったことだ。俺は間違っていない。そう、正しいことをしたんだ。恥じることはない!
「"へぇー、このオッサン、村田警部っていうのか"」
「ちょっと待て!なんで犯人が俺の名前を知っているんだ!?」
「誰かが犯人のアカウントにDMしたんじゃないですかね?」
「そんな事、許されるのか!?」
「いやー、そう言われましても」
今村の涼しい顔が憎らしい。そもそもこいつが夏木マミとの交渉に失敗したことが原因だろ。なんでこいつはノーダメージで俺はズタボロなんだ!納得出来ない!
「あれ?」
俺より20センチ程背の高い今村が、園庭の方を見て声を上げた。
「どうした?」
「園児が1人、歩いてます」
「どういうことだ?夏木マミのヌードはまだ投稿してないだろ?」
報道陣が一斉に脚立に登り、フラッシュが炊かれる。
「"村田警部のヌード、めっちゃ笑ったから一つ目の要求はクリアしたことにするわー"だそうです」
「ふざけるなよ!園児を犯人のところへ戻せ!夏木マミのヌードが先だろ!!」
「警部、落ち着いてください。人質が解放されたんです。よかったじゃないですか」
「こんなの約束と違う!俺は絶対に認めん!!」
「世の中の人は警部のことを認めているみたいですよ。急上昇ワードに"村田警部"が載ってます」
「載らなくていいっ!」
不意にスラックスのポケットに入ったスマホが震えた。見ると夏木マミだ。
「もしもし、村田です」
"お疲れ様。人質も無事解放されたみたいだし、私が脱ぐ必要は無さそうね"
「いや!しかし、それでは約束と──」
"テレビでもしきりに貴方のヌード写真を報道してるわ"
「テレビ?抑えてた筈なのに!!不味い、駄目だ!駄目、絶対!!」
"村田警部、決死のヌード写真40枚連続投稿ってN○Kのニュースでも──"
あぁ、視界がチカチカする。どうやら興奮し過ぎたようだ。フッと力が抜けて、頬に地面を感じる。遠くで誰かが俺を呼んでいるが、その声はどんどん小さくなり……やがて聞こえ……。