ヴァラフェンの森
サジャ達はようやくヴァラフェンの森にやってきた。協会長と話して協会を出てから1時間くらい経っていた。
「ようやく着いたね。サジャ。此処からは敵が出るから気をつけて行こうね。」
ショーンが優しく言った。
「敵…ですか?」
「そう。敵。下級悪魔といえど、悪魔が出た森なんだ。影響を受けて、野獣や植物、昆虫などあらゆる生物が襲ってくる可能性があるよ。」
サジャは知らなかった。ここの森ではないが、森には何度か行った事がありもちろん襲われた事などなかった。
サジャがキョトンとしているとショーンは続け様に言う。
「悪魔は周りの心に影響するんだ。下級悪魔だから大丈夫だと思うけれど、上級悪魔以上に出会ったら僕らも気をつけなければいけない。」
「上級悪魔…。ショーン先輩は見たことあるんですか?」
「……あるよ。その時はあまりの恐怖で震えが止まらなかった。封印された上級悪魔だから襲ってはこないのはわかっていたんだけれどね。」
「封印……ですか?」
サジャの言葉を聞き、ショーンはバツの悪そうな顔をした。封印された悪魔。この情報はまだ話すのは早すぎたとショーンは後悔した。
「サジャ。すまない。上級悪魔の封印の事は話すべきじゃなかった。内緒にしていてくれないかい?」
「わ、わかりました。」
正直サジャは良くわからなかったが、ショーンの言うまま秘密にすることにした。
「それだけ上級悪魔は珍しいんだよ。僕ら祓魔師でもそうそう出会う事はない。」
上級悪魔の特徴。サジャは本で読んだことがあった。
上級悪魔は、人間の様な容姿で人間に紛れる事があり、褐色の肌に赤い瞳。尖った耳に鋭い牙。蝙蝠の様な羽根に山羊の様なツノ。容貌は見目麗しく見るものを惑わすと書かれていた。さらに最悪なのが人間に化ける事もあるらしい。人間に化けるとどんな見た目かはわからないが厄介である事には変わりない。悪魔と契約したものは、契約の証、魔痕が身体のどこかに現れるらしいという噂だ。
(見た目のせいで今まで散々な目にあってきた。私は違うってちゃんと証明したい!)
サジャは心の中で、上級悪魔の事を思い出し、再度決心した。サジャは上級悪魔を見た事がないが一度本物を見てみたいと思った。
「やれやれ、もっと気楽にして行こうぜ?悪魔がとか今言っても仕方ないって。来た敵は倒すのみ!ボクらは前に進むのみ!」
そうやって声をかけてきたのはヒカリだ。
2人が緊張した面持ちでいたのを心配している様子だ。
「そうだね。ミランダ達と早く合流しなくちゃいけない。」
ショーンは落ちつきを取り戻し、2人を促した。
「さ、行こう。」
「はい!ショーン先輩。頑張ります!」
「早めに用事終わらせて美味しい飯を喰おう!この森には食用キノコも沢山あるぞー。取りながら行こ!」
「ヒカリ!遊びに来たわけじゃないよ。」
ショーンはヒカリに呆れた視線を向ける。気にしないヒカリ。
「わかってるって!けど、悪魔悪魔って恐怖で怯えてるより、別のことも考えながら行った方が良いって!」
確かに一理あるなとショーンは思った。今回は悪魔と初めて対峙するサジャがいるのだ。
「確かに一理あるね。うーん。それじゃあ食用キノコも見つけたら持って帰って料理しようか。」
「そうこなくっちゃ!!」
ヒカリはご機嫌だ。
「サジャも料理して食べたいだろ?」
「キノコ料理ですか。作るのは苦手ですが、どなたかが料理を?」
「ボクが作ると香草を添えて焼くだけだからなー。うーん。」
チラッとヒカリはショーンを見る。
「僕は悪魔討伐が終わったら纏めなきゃ行けない資料があるから無理だよ。」
ショーンはピシッと言った。
じゃあっという感じでヒカリはサジャを見る。
「私は料理苦手で…!」
「大丈夫だって!みんな謙遜して苦手って言うもんさ。帰ったらサジャ。調理お願い出来ないかい?」
ヒカリが熱心に期待を込めた瞳でサジャを見つめてくる。
「わ、わかりました。頑張ります。」
新人という事もありサジャは了承した。
「そうこなくっちゃ!!ありがとうサジャー!」
サジャに抱きつくヒカリ。
「ヒカリさん、その代わりどんな食事になっても後悔しないでくださいね!」
「もっちろーん!」
ヒカリはご機嫌だ。
「はぁ。」
ショーンはまたかと小さくため息をついた。ヒカリは食べ物に目がない。ま、ヒカリらしくもあるが。早く任務を終わらせようとショーンは思った。