実践体験への準備
「さ、僕の部屋に到着したよ。」
そう言ってショーンはニコッと微笑んだ。本当に笑顔が多い。
ここは、ショーンの部屋だ。先程の場所から階段を上り二階に位置する。
中はスッキリしており、小さな書斎と、タンスに本棚。それにベッドといった簡素な部屋だった。サジャがキョロキョロしているとショーンは話しかける。
「何もない部屋だけど、僕は気に入っているよ。今は時間がないけれど後でゆっくり遊びに来てよ。」
「はい。それにしても爽やかな香りがしますね。」
ショーンの部屋からは爽やかな香りが漂っている。
「あ………これは、うん。僕な好きな香りでね。柚子の香りだよ。この香りがすると気分が落ち着くんだ。嫌な事があったとしても、気分が落ち着く様にこうやって香水をふりまいてる。もし、サジャの嫌いな臭いだったらごめんね。」
謝るショーンに手を振りながらサジャ。
「とんでもないです!私もこの香りは好きですよ。ただ、なんていうか少し意外で。」
「よく言われるよ。」
と、ショーンはニコニコしながら言う。そんな雑談をしながらも、二人は実践体験の準備をしていった。
「さ、だいたい準備は完了したね。」
ショーンは小さなリュックに詰め込んだ荷物を見ながら言った。近場の森なので、あまり準備は必要ない。
三人分の荷物がひとつにまとまった。
「あれ、三人分ですか?」
サジャとショーン二人だけではないのか。サジャは疑問に思う尋ねる。
「そうだよ。僕と相方の分。そしてサジャの分だよ。」
「相方さん……?」
「そうさ、僕は祓魔師は魔術師系列だからね。単身でどこかに出かけてはいけない決まりなんだ。だから、祓魔師は自分専属の相方を作らないといけないよ。まぁ、今回のサジャは僕がついてるから問題ないけどね!」
サジャはそこまでのシステムは知らなかった。確かに言われてみれば単身で悪魔と対峙するのはなかなか大変そうだ。自分も独り立ちしたら、相方を作らないといけないんだろうなとぼんやり未来を想像した。
「そうだ。サジャ。さっきはゆっくり話が出来なかったけれど、改めまして。僕はショーン。祓魔師さ。君の先輩という事になるから、わからない事があればなんでも聞いてよ。力になるよ!後、気軽にショーンて呼んでね!」
ショーンが改めて挨拶をしてきた。なかなか律儀だなとサジャは思った。
「ショーン先輩。」
「うん。先輩って響き良いね!よろしくね!サジャ。」
「よろしくお願いします。ショーン先輩。」
改めての挨拶にサジャは少し気恥ずかしくなった。祓魔師見習いになれたという気持ちが、改めて湧いてくる。
それにこれからの実践体験…悪魔との対峙。間違いなく危険だと思うが自分にどんな影響を及ぼすだろうかとサジャはふと考えた。幼い頃に、下級悪魔を見た事があるが、その時は近づくのすら怖かった。
あの瞳に睨まれたら……と考えるとゾッとする。
今回は祓魔師のショーンがいるからきっと大丈夫!とサジャは自分に言い聞かせた。
「それじゃ相方棟に行こう!サジャ。」
相方棟……それは祓魔師の相方達がサジャ住んでいる建物だ。
サジャはわくわくしながらショーンの後をついていった。